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6章 足りないのは我慢なのか適性なのか
01
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ついにやってきたハンター講習の初日は買い物から始まった。
ニコルたちとギルドで合流してから採取の依頼を受け、それに必要な道具を揃えた。
購入したのは一見普通のスコップだがツルハシや三本鍬に変形する魔道具。
他に鋸や鉈や鋏、麻の布、袋、紐などを購入して、魔法薬の原料になるドクダミのような植物を採取した。
常設依頼に根は必要ないが、根ごと必要な依頼のときは麻袋に土ごと採取する…など、丁寧に教えてもらった。
二日目は鉱物系の採取と、その近辺でできる畑を荒らす魔獣の討伐。
初日の採取で試してみたが、魔力を放出してソナーのように目視できない物体や生物を捕捉することができた。
自分の頭脳だけでは情報の処理ができないかもしれないので、マップに表示して使ってみると、すごく勝手が良かった。
目的の物体の反応さえ分かれば探し放題だ。
採取は相性が良かったが、問題は魔獣討伐だった。
初めて魔獣を見る俺のために、ニコルたちが気を遣って畑の害魔獣討伐の依頼を見繕ってくれたのだが、コレがダメだった。
畑の害魔獣は猫サイズのモグラとネズミとウサギだったのだ。
はっきり言って可愛くない、強そうなもふもふ?だったが、元の世界の可愛いもふもふを思い出して手が震えた。
今まで散々不審者や変質者を制圧してきたが、自らの手で生き物の命を奪ったことはない。
どうにか剣でネズミを一体仕留めたが、顔色が悪くなってしまい皆を心配させてしまった。
帰り道、こんな調子でやっていけるのか…と、らしくもなく落ち込みかけていると、片方の角が折れた厳つい牛の魔獣と遭遇した。
「手負いのブル系の魔獣は要注意だよ!」とニコルが言えば、アルシェが「でも美味しいよね…。危ないけどできたら狩りたいな~」とヨダレを垂らした。
このアルシェの言葉で何かが嵌まった。
三人に相談してから俺が狩らせてもらったが、依頼中のように具合が悪くなることはなく、ただ命をいただく感謝の気持ちがあった。
刈り取った命に手を合わせていると、口数が少ないラーナが教えてくれた。
依頼で狩ったネズミもウサギもちゃんと食べられる。
モグラはあまり美味しくないので食べる人は少ないが、ネズミやウサギの骨などと一緒に畑の肥料になっている、と。
それを聞いてほっとした。
命を無駄に奪ったわけじゃないと知って、どうにかやって行けそうだと思えたと同時に、無性にメルヴィンとジェイデンに会いたくなった。
狩ってきたブルの解体はギルドでプロにお願いした。
翌日からの予定を確認して、ニコルたちと別れて宿に帰ろうとしたところでメルヴィンがやってきた。
ちょうど仕事が終わったらしく一緒に帰ることになり、手を取られて宿に向かった。
メルヴィンから手を繋いでくれて嬉しく思っていると、俺の様子から何があったのか覚ったようだった。
Sランクになると大口を叩いておきながら情けない…。
メルヴィンもジェイデンもこういったことで俺を責めたりはしないだろうが、悔しかった。
そんな俺にメルヴィンはこう言ってくれた。
「初めて討伐に出たやつは大体そうなる。折り合いをつけられるようになるまではしんどいだろうが、何が大事か忘れなきゃあ大丈夫だ。
それよりもオレは、お前さんが喜々として命を刈り取るような人間じゃなくて嬉しい。命の尊さを知っていれば自分の力に溺れることにはならんだろうしな。」
実感の籠もった重い言葉だったが、優しさと労りが込められた言葉でもあった。
それだけじゃなく、俺を奮い立たせる言葉もくれた。
「依頼によっちゃあ野生の動物と魔獣は追い払うことも選択肢に入る。だが化物は違う。奴らは瘴気に侵されて元の生き物とは別モノになっちまってる。だから狩ってやれ。それが奴らのためでもある。並のハンターには化物と遭遇したら逃げて報告しろと言ってあるが、お前さんならできるだろ?」
メルヴィンを好きになって良かった。
メルヴィンに愛されて幸せだ。
心の底からそう思えた。
こんなに男前で頼りになるのに可愛いひとが俺の伴侶になってくれるのだから。
だが俺の愛するひとはそれだけでは終わらなかった。
夜になるとメルヴィンとジェイデンが揃って俺の客室を訪ねて来て、何も言わず二人の間に俺を挟んで一緒に寝てくれた。
異世界に拉致されてから順調に過ごして来れた分、今回のことが堪えたが二人と一緒なら不安なんて感じない。
俺の心を守ろうとしてくれたのがとても嬉しかった。
愛しさと喜びと雄っぱいに包まれて幸せな朝を迎えて思ったが、歳上の恋人の包容力が凄い。
俺の父親がいつまでも8歳上の母親にベタ惚れなのも首肯ける。
早い時間に目覚めたが、ジェイデンはやることがあると言っておはようのキスをして部屋を出ていった。
メルヴィンは後ろから俺を抱きしめて、たくさんキスをしてくれた。
これだけでも数日留守にする依頼だって頑張れると思えるのに、ジェイデンはハンクさんに頼んで弁当まで準備してくれていた。
バスケットを手渡しながら「フリッターはわたしが作りました。旦那様のお口に合うと良いのですが…」なんて言われたら、ジェイデンが愛しくて堪らない。
しかも先日ねだった手料理をこんなに早く食べられるとは。
メルヴィンとジェイデンを絶対に幸せにする!と決意も新たに待ち合わせ場所に向かった。
ニコルたちとギルドで合流してから採取の依頼を受け、それに必要な道具を揃えた。
購入したのは一見普通のスコップだがツルハシや三本鍬に変形する魔道具。
他に鋸や鉈や鋏、麻の布、袋、紐などを購入して、魔法薬の原料になるドクダミのような植物を採取した。
常設依頼に根は必要ないが、根ごと必要な依頼のときは麻袋に土ごと採取する…など、丁寧に教えてもらった。
二日目は鉱物系の採取と、その近辺でできる畑を荒らす魔獣の討伐。
初日の採取で試してみたが、魔力を放出してソナーのように目視できない物体や生物を捕捉することができた。
自分の頭脳だけでは情報の処理ができないかもしれないので、マップに表示して使ってみると、すごく勝手が良かった。
目的の物体の反応さえ分かれば探し放題だ。
採取は相性が良かったが、問題は魔獣討伐だった。
初めて魔獣を見る俺のために、ニコルたちが気を遣って畑の害魔獣討伐の依頼を見繕ってくれたのだが、コレがダメだった。
畑の害魔獣は猫サイズのモグラとネズミとウサギだったのだ。
はっきり言って可愛くない、強そうなもふもふ?だったが、元の世界の可愛いもふもふを思い出して手が震えた。
今まで散々不審者や変質者を制圧してきたが、自らの手で生き物の命を奪ったことはない。
どうにか剣でネズミを一体仕留めたが、顔色が悪くなってしまい皆を心配させてしまった。
帰り道、こんな調子でやっていけるのか…と、らしくもなく落ち込みかけていると、片方の角が折れた厳つい牛の魔獣と遭遇した。
「手負いのブル系の魔獣は要注意だよ!」とニコルが言えば、アルシェが「でも美味しいよね…。危ないけどできたら狩りたいな~」とヨダレを垂らした。
このアルシェの言葉で何かが嵌まった。
三人に相談してから俺が狩らせてもらったが、依頼中のように具合が悪くなることはなく、ただ命をいただく感謝の気持ちがあった。
刈り取った命に手を合わせていると、口数が少ないラーナが教えてくれた。
依頼で狩ったネズミもウサギもちゃんと食べられる。
モグラはあまり美味しくないので食べる人は少ないが、ネズミやウサギの骨などと一緒に畑の肥料になっている、と。
それを聞いてほっとした。
命を無駄に奪ったわけじゃないと知って、どうにかやって行けそうだと思えたと同時に、無性にメルヴィンとジェイデンに会いたくなった。
狩ってきたブルの解体はギルドでプロにお願いした。
翌日からの予定を確認して、ニコルたちと別れて宿に帰ろうとしたところでメルヴィンがやってきた。
ちょうど仕事が終わったらしく一緒に帰ることになり、手を取られて宿に向かった。
メルヴィンから手を繋いでくれて嬉しく思っていると、俺の様子から何があったのか覚ったようだった。
Sランクになると大口を叩いておきながら情けない…。
メルヴィンもジェイデンもこういったことで俺を責めたりはしないだろうが、悔しかった。
そんな俺にメルヴィンはこう言ってくれた。
「初めて討伐に出たやつは大体そうなる。折り合いをつけられるようになるまではしんどいだろうが、何が大事か忘れなきゃあ大丈夫だ。
それよりもオレは、お前さんが喜々として命を刈り取るような人間じゃなくて嬉しい。命の尊さを知っていれば自分の力に溺れることにはならんだろうしな。」
実感の籠もった重い言葉だったが、優しさと労りが込められた言葉でもあった。
それだけじゃなく、俺を奮い立たせる言葉もくれた。
「依頼によっちゃあ野生の動物と魔獣は追い払うことも選択肢に入る。だが化物は違う。奴らは瘴気に侵されて元の生き物とは別モノになっちまってる。だから狩ってやれ。それが奴らのためでもある。並のハンターには化物と遭遇したら逃げて報告しろと言ってあるが、お前さんならできるだろ?」
メルヴィンを好きになって良かった。
メルヴィンに愛されて幸せだ。
心の底からそう思えた。
こんなに男前で頼りになるのに可愛いひとが俺の伴侶になってくれるのだから。
だが俺の愛するひとはそれだけでは終わらなかった。
夜になるとメルヴィンとジェイデンが揃って俺の客室を訪ねて来て、何も言わず二人の間に俺を挟んで一緒に寝てくれた。
異世界に拉致されてから順調に過ごして来れた分、今回のことが堪えたが二人と一緒なら不安なんて感じない。
俺の心を守ろうとしてくれたのがとても嬉しかった。
愛しさと喜びと雄っぱいに包まれて幸せな朝を迎えて思ったが、歳上の恋人の包容力が凄い。
俺の父親がいつまでも8歳上の母親にベタ惚れなのも首肯ける。
早い時間に目覚めたが、ジェイデンはやることがあると言っておはようのキスをして部屋を出ていった。
メルヴィンは後ろから俺を抱きしめて、たくさんキスをしてくれた。
これだけでも数日留守にする依頼だって頑張れると思えるのに、ジェイデンはハンクさんに頼んで弁当まで準備してくれていた。
バスケットを手渡しながら「フリッターはわたしが作りました。旦那様のお口に合うと良いのですが…」なんて言われたら、ジェイデンが愛しくて堪らない。
しかも先日ねだった手料理をこんなに早く食べられるとは。
メルヴィンとジェイデンを絶対に幸せにする!と決意も新たに待ち合わせ場所に向かった。
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