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5章 風呂とかき氷と甘々の目撃者たち

どんな男もデキた直後はこんなもん 〜ギルド料理人

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数日前、ギルドにとんでもない新人が現れた。
どこがとんでもないか分かるか?

まずは見た目だ。
とんでもなく美形…いや美麗?とにかくキレイだ。
あの兄さんが娼夫なら女性体・男性体区別なく、抱きたい、抱かれたいと長蛇の列ができるだろう。
それくらいの美形。
あそこまでいくともう人外だね。

それだけじゃなくとんでもない手練れらしい。
ここからは聞いた話だが、アンジェラさんと剣で模擬戦して軽く捻り、ギルマスにいたってはアノ巨体が宙を舞ったそうだ。
いくら身体強化ナシでも信じられん。

その翌日、非公開で身体強化アリの模擬戦をしたようだが、三人とも無傷だった。
アレナド兄弟が無傷なのは分かる。
あの二人は大陸でも十指に入るくらいの強者だ。

じゃあそんな二人を相手にして無傷で戻ってきた兄さんは?
俺は考えるのを止めた…はは。
訓練場の壁に穴開けたとか聞こえないから!

もっととんでもないのはアレナド兄弟を落した事だ。
これにはおったまげた。
それに加えて二人を一人で相手にしてるってんだからな…。

アンジェラさんの方は聞いた事はないが、ギルマスの若い頃は凄かった。
一時期は来る者拒まずで、一晩で何人も抱き潰したって噂があったくらいだからな。

それなのにあの兄さんはギルマスから搾り取ってヘロヘロにしたっていうじゃねぇか!
あの人、絶対に人間のフリした淫魔だろ…。

あとはギルマスのとんでもない服装を止めさせて、ズボン穿かせてくれたな!
ギルマスが生脚パンプスになったときから、みんな筆舌に尽くしがたい思いをしてきた。
憧れを打ち砕かれた者、尻に恐怖を感じた者、現実逃避した者、ズボンを穿かせようとした者等々……。
そんな奴らからしたらあの兄さんは救世主だ。

だが、ズボンを穿いても以前のギルマスは帰って来なかった。
人目も憚らず行ってきますのキスって何だ!
あんたそんな事するガラじゃなかっただろうがっ!
誰に対しても執着なんかしたことなかったのに、人間てのは変われば変わるモンなんだなぁ…。

何で俺がこんな事を考えているかといえば、目の前のカウンターに当事者の二人が仲良く座って昼飯食ってるからだ。
兄さんの表情がぐぬぬってなってるけど。

「何か悩み事か?…ここのメシが美味くなかったとか?」

ギルマス、あんたヒデェよ…。
味と量を両立させるためにみんな頑張ってんのに。

「いや、量もあって美味いよ。ただちょっと考えが纏まらなくてな…。」

即座に否定してくれてありがとうよ、兄さん。
今度オマケしてやるからな!

「じゃあどんな事だ。オレにゃあ言えねえか?」

何だその情けない顔!
あんたのそんな表情見た事ねえぞ。

「そんな事ない。何て言ったら良いか……あー、相談できる段階に無い…かな?もう少し形になってから相談したい。その時は話を聞いてくれるか?」

「おう、待ってる……ちゅう。」

うわぁ…キスしたよ。
ギルマスってこんなに甘い表情できたんだな。

「はぁ…メルヴィンから人前でキスしてくれるなんて珍しいな。コレで俺の口を割らせようっていうんじゃないだろうし、どうした?」

あ、兄さん…俺もソレ気になるわ。

「なんていうかなあ……嬉しくなった。お前さんが相談してくれるって言うから、オレにもお前さんにしてやれる事があるんだ、って。」

ヒェッ!
あんた本当にあのギルマスか?メルヴィン・アレナドか?
メロメロ?デレデレ?いや、ドロドロ?
とにかく信じられねえ。
あんた誰にでもドライだったじゃん!

こんなギルマス見ちゃおれんと顔を背けたが、ザワつく空気を感じて視線を向けたらどエロいモンを見ちまった。
兄さん!向かい合ってギルマスのぶっとい太腿に跨るの止めてくれ!
もうヤッてるようにしか見えねえから!
着衣エロだから!

「メルヴィンが俺の事好きになってくれてうれしい。メルヴィンからキスしてくれたからもっとうれしい。それなのにいじらしい事まで言われて、あんたは俺をどうしたいんだ?」

いやいや!
いじらしいの兄さんだから!!
美人なのに強くて、しかも中身は可愛いの?
そりゃあアレナド兄弟だってコロッと行くわ…。
あっ!ギルマスにスリスリした!
いちいち可愛いな、オイ!

「どうしたいって言われてもなあ………。まあでもずっとオレに惚れてて欲しいかな。それこそジイさんになっても。」

いやいやいやいや!
あんたも何言ってんの!
恋は盲目ってよく言ったモンだよ、その通りだよ!
目の前に居る俺の事見えてねえし。

「そんなの当たり前だ。今夜も空っぽになるまで搾り取ってやるから覚悟して。」

ほぉ~…兄さん襲い受けってヤツかぁ。
その細い腰と締りの良さそうなケツでよくギルマスとデキるよな。
裂けねえの?
でも上で腰振ってくれたらスゲェ良さそう…。
いや、ギルマスに下から突き上げられてヒイヒイ泣かされんのも想像すると堪らんな。

「お、おう、だがオレのトシを忘れてくれるなよ?お前さんと違ってもう若くねえんだし。」

は!?兄さんみたいな若い恋人に言うセリフがソレかよ。
あんた身体強化の達人なんだから肉体年齢はまだまだ若いだろ……。

「心配ない、あんたがそのへんの若い奴らに負ける要素なんて皆無だ。相性もイイし、歳の差なんて気にするな。」

兄さんは年上のオトコが喜ぶコメントを分かってるな…。
見習えよギルマス。

「いや、オレが気にして欲しいのはトシの差じゃなくて、オレのトシだからな!」

「あんなにすっごいのに?………善処する、多分。」

やっぱり今もスゴいんじゃねえか。
だったら打ち止めまで付き合ってやれよな。

「えらく消極的な返事だが…まあいいだろう。それよりもそろそろ色気垂れ流すの止めてやれ。前屈みの奴らをこれ以上増やしてくれるな。」

あー、それな。
今日に限って客はヤロウばっかだし、兄さんの色気にヤられてツラそうだ。

「分かった」「いい子だ」とか言ってキスしてるけど、それがエロいのになぁ。

「メルヴィン、あんたキスしておけば俺が大人しくなると思ってないか?」

「違うのか?」

「違わないけど、それじゃ足りないからもっとシて。」

膨れる兄さんは可愛いが、そのエロさは凶悪すぎる。
目の前で見てる俺もキツい。

「だからソレを止めろって言ってんのに…ちゅっ……ちゅぅ。」

そんな事言うならあんたもチュッチュすんな!
ズボン穿いてりゃあんただって相当エロ格好良いんだから、一緒になって煽ってどうする。

「ん……ありがと、続きはベッドでちょうだい。ちゅう。」

ああもう!客のがはち切れそうじゃねぇか。
この後間違いなく娼館行きだな。

「そんときゃあ、ちゅっ…いくらでも……ちゅ。これからロバートんトコ行くんだろ?…ん、ちゅうぅ…はっ、暗くなる前に帰って来いよ…ちゅ。」

何だ、本当はキスしていたいのは兄さんじゃなくてギルマスの方なのか。
年の離れた恋人が可愛くて仕方ないってか。
しかし子どもじゃねえのに過保護だな……って、それくらい溺愛してんのか。

「分かった、ちゅっ…その代わり夕飯は一緒に食べよう。行ってきます……ちゅう。」

「おう、…ちゅ……気を付けてな、ちゅう。」

はーっ、やっと終わった!
いつおっ始めるかとヒヤヒヤしたぜ。
それにしてもこの空気どうすんだ?

「あー、見せつけるみたいになって悪かったな。昼飯はオレが奢るから好きなモン頼んでいいぞ。終わったら飯代を回収しに来てくれ。」

前半は客、後半は俺に言われた。
普通ならこれで十分だけど今回はどうだろう?

「ギルマス!俺らこれから娼館の世話になるから、昼飯だけじゃワリに合わねえよ!」

まあそうなるわな。

「……じゃあアンジェラの宿の晩飯と酒も付けよう。希望者は紙に名前書いて纏めて持って来い。」

「ギルマス、太っ腹だな!」
「タダ酒飲めるぞ!」

お前ら浮かれてるけど、分かってるのか?
ギルマスと兄さんが一緒に夕飯食べる約束してただろ。
それがアンジェラさんの宿のレストランだったらどうすんだ。
また見せつけられるんじゃねえのか?
いや、アンジェラさんもいちゃいちゃしてくるかもしれん。

これ以上は考えるの止めよう。
どっちにしても俺の手には負えない事だ。

はぁ…俺も久しぶりにハンクのメシが食いてえな。
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