108 / 170
5章 風呂とかき氷と甘々の目撃者たち
05
しおりを挟む
「さすがアンジェラさんの宿だ。大銅貨2枚のランチセットにもちゃんと生野菜のサラダが付いてるんだからな。ボリュームもあるし言うことないぜ。」
日本円で2千円くらいか。
エンゲル係数とか考えるのが恐ろしい。
ランチセットにしては高額だが食物が高いこの国の基準だとかなり良心的な値段みたいだな。
しかも俺とフェイトは宿泊客だから、さらに2割引きだ。
それに加えて料理長から「冷蔵庫と冷凍庫の礼だ」と言ってサイコロステーキを頂いてしまった。
俺の宿代だから断ろうかと思ったが、ありがたく受け取った。
後でちゃんとジェイデンにも知らせよう。
「生野菜は高いですからセットで食べられるとうれしいですよね。」
フェイトもほくほく顔だ。
「だな!で、今更だがシオンの話って俺も聞いてて大丈夫なのか?」
「まあ、ラースなら大丈夫だろ。」
外の音は聞こえるけど、中の音は漏れない防音壁をこっそりと展開しておく。
「水を生み出す魔道具のことなんだけどな。なんで効率が悪いのか教えてもらえないか?」
「えっと一言で表せば、水というものを分かっていないから、というのが通説ですね。」
「なんだ、そりゃ。水は水だろ?」
ラースの言う通りだ。
どういう事だろう。
「うーん…。例えばですけど、火を熾すのに必要な物ってわかりますよね?」
「火種と燃やすものと空気だろ?」
「そうですね。それを知っているから火は魔法や魔道具で再現できるんです。風を送れば火を強くできることも知っていますよね。経験して無意識で分かってるからできるんです。
水の場合は湧き出る様を見た事があっても再現するのに膨大な魔力が必要になります。という事は僕らは水の本質を分かっていないんです。水の流れや温度や形を変える事はできるんですけどね。」
理解している現象は効率良く再現できるけど、理解していない現象を再現しようとすると魔力でゴリ押しすることになるから非効率的になるってことか。
これは…異世界あるあるの科学が発展していなくてできないパターンかな。
「そうなのか…。ちなみに他の国や地域に水を生み出す魔道具は無いのか?」
「少量の水を生み出すものなら。あとは大昔の召喚者が魔法で大洪水を起こしたっていうお話は残っています。」
「ああ、公国の向こうの国の話か。それなら有名だよな。」
「ええ、魔道国の建国神話です。敵の土地を大洪水で洗い流した…っていう。魔道国と公国の間の大きな湖はその時にできたと伝えられています。だからおかしいんですよ。」
おかしい……?
ああ、そういうことか。
「何がだ?」
「水魔法が広まってないことが…だろ?」
「そうです。大前提として、召喚者がやったことは多少脚色されていても事実です。
それなのに水魔法を使える人が限られているってことは、意図的に広まらないように統制されてるんだと思います。これは少し考えれば分かることですから、ある程度の経験や腕があれば誰でも気付けます。
それに魔道具の多くは魔法を基に作られますから、こちらも広まりません。」
「そうなのか…。だったら水を生み出す魔道具を作りたくないか、フェイト。参考までに言うがさっきまで入ってたジャグジーの湯は俺が魔法で出したんだが、どうだ。」
「………っ是非!僕に作らせてください!お願いします!!」
勢い良く俺の手を握りしめて懇願してくる。
やはり魔道具への情熱はすごいな。
「こちらこそよろしく頼む。だが物が物だけに生命の危険があると思う。フェイトの安全を確保してからじゃないと危ない。だからもし魔道具が完成しても世に出すタイミングは俺に任せてほしい。材料なんかは俺がハンターをしながら集めて来るよ。だからしばらくは理論の構築をしていてもらいたい。」
「それは構いませんが、僕には理論の構築どころか水の事が分かりません。」
「うん。だから俺の知識を教えるよ。あと解析用に水魔法を付与したウォータージャグとかも渡そうか。……ただそうしたら後戻りはできないけど、本当に良いのか?」
「…はい。よろしくお願いします。」
「じゃあちょっと失礼する。」
フェイトと額を合わせて水に関わる科学知識を魔法で譲渡する。
「どうだ、フェイト。水がどういう物か分かったか?」
「ごめんなさい!シオンさんの美貌のアップにみとれてました!!」
「………………。」
これには俺が絶句だ。
フェイトもブレないな。
今までの緊迫した空気が霧散したぞ。
「あっ!何か分かって来ました!えいちつーおーっていうんですね!凄く不思議な感覚ですけど、頑張ってみますね。」
「……そっか。じゃあ頼む。倍加とか乗算を組み合わせたら効率上がるんじゃないかな。」
「そうですね!いろいろ試してみます!」
フェイトとの話が纏まったところで不安そうな声がかかった。
「なあ、コレ本当に俺が聞いても良い話だったのか?結構凄いことだろ?」
「ん?ラースなら大丈夫だろ。魔道具が完成したらそれを使った施設の建設を依頼することになるだろうし。」
「あー、じゃあ俺は将来何を建てることになるんだ?」
ふふふ、よくぞ聞いてくれた。
「風呂だ。今日みたいな間に合わせの風呂じゃない、ちゃんとした風呂を頼みたい。あとは条件が整えば農業用の施設だな。まあ、資金を貯めるところからのスタートだからいつになるかは分からないけど。その時はよろしくな。」
「おう、仕事ならキチッとやるから安心してくれ。しかし風呂の良さを知ったら俺も家に欲しくなってきた。」
「だろ?だから銅貨5枚くらいで一般人が入れる風呂屋を作りたいんだ。」
夢はスーパー銭湯とレジャープールだ。
日本では行けなかったが、オーナーが俺なら入り放題だ。
絶対にウォータースライダーも作ってやる!
メルヴィンとジェイデンと一緒にくっついて滑るんだ。
日本円で2千円くらいか。
エンゲル係数とか考えるのが恐ろしい。
ランチセットにしては高額だが食物が高いこの国の基準だとかなり良心的な値段みたいだな。
しかも俺とフェイトは宿泊客だから、さらに2割引きだ。
それに加えて料理長から「冷蔵庫と冷凍庫の礼だ」と言ってサイコロステーキを頂いてしまった。
俺の宿代だから断ろうかと思ったが、ありがたく受け取った。
後でちゃんとジェイデンにも知らせよう。
「生野菜は高いですからセットで食べられるとうれしいですよね。」
フェイトもほくほく顔だ。
「だな!で、今更だがシオンの話って俺も聞いてて大丈夫なのか?」
「まあ、ラースなら大丈夫だろ。」
外の音は聞こえるけど、中の音は漏れない防音壁をこっそりと展開しておく。
「水を生み出す魔道具のことなんだけどな。なんで効率が悪いのか教えてもらえないか?」
「えっと一言で表せば、水というものを分かっていないから、というのが通説ですね。」
「なんだ、そりゃ。水は水だろ?」
ラースの言う通りだ。
どういう事だろう。
「うーん…。例えばですけど、火を熾すのに必要な物ってわかりますよね?」
「火種と燃やすものと空気だろ?」
「そうですね。それを知っているから火は魔法や魔道具で再現できるんです。風を送れば火を強くできることも知っていますよね。経験して無意識で分かってるからできるんです。
水の場合は湧き出る様を見た事があっても再現するのに膨大な魔力が必要になります。という事は僕らは水の本質を分かっていないんです。水の流れや温度や形を変える事はできるんですけどね。」
理解している現象は効率良く再現できるけど、理解していない現象を再現しようとすると魔力でゴリ押しすることになるから非効率的になるってことか。
これは…異世界あるあるの科学が発展していなくてできないパターンかな。
「そうなのか…。ちなみに他の国や地域に水を生み出す魔道具は無いのか?」
「少量の水を生み出すものなら。あとは大昔の召喚者が魔法で大洪水を起こしたっていうお話は残っています。」
「ああ、公国の向こうの国の話か。それなら有名だよな。」
「ええ、魔道国の建国神話です。敵の土地を大洪水で洗い流した…っていう。魔道国と公国の間の大きな湖はその時にできたと伝えられています。だからおかしいんですよ。」
おかしい……?
ああ、そういうことか。
「何がだ?」
「水魔法が広まってないことが…だろ?」
「そうです。大前提として、召喚者がやったことは多少脚色されていても事実です。
それなのに水魔法を使える人が限られているってことは、意図的に広まらないように統制されてるんだと思います。これは少し考えれば分かることですから、ある程度の経験や腕があれば誰でも気付けます。
それに魔道具の多くは魔法を基に作られますから、こちらも広まりません。」
「そうなのか…。だったら水を生み出す魔道具を作りたくないか、フェイト。参考までに言うがさっきまで入ってたジャグジーの湯は俺が魔法で出したんだが、どうだ。」
「………っ是非!僕に作らせてください!お願いします!!」
勢い良く俺の手を握りしめて懇願してくる。
やはり魔道具への情熱はすごいな。
「こちらこそよろしく頼む。だが物が物だけに生命の危険があると思う。フェイトの安全を確保してからじゃないと危ない。だからもし魔道具が完成しても世に出すタイミングは俺に任せてほしい。材料なんかは俺がハンターをしながら集めて来るよ。だからしばらくは理論の構築をしていてもらいたい。」
「それは構いませんが、僕には理論の構築どころか水の事が分かりません。」
「うん。だから俺の知識を教えるよ。あと解析用に水魔法を付与したウォータージャグとかも渡そうか。……ただそうしたら後戻りはできないけど、本当に良いのか?」
「…はい。よろしくお願いします。」
「じゃあちょっと失礼する。」
フェイトと額を合わせて水に関わる科学知識を魔法で譲渡する。
「どうだ、フェイト。水がどういう物か分かったか?」
「ごめんなさい!シオンさんの美貌のアップにみとれてました!!」
「………………。」
これには俺が絶句だ。
フェイトもブレないな。
今までの緊迫した空気が霧散したぞ。
「あっ!何か分かって来ました!えいちつーおーっていうんですね!凄く不思議な感覚ですけど、頑張ってみますね。」
「……そっか。じゃあ頼む。倍加とか乗算を組み合わせたら効率上がるんじゃないかな。」
「そうですね!いろいろ試してみます!」
フェイトとの話が纏まったところで不安そうな声がかかった。
「なあ、コレ本当に俺が聞いても良い話だったのか?結構凄いことだろ?」
「ん?ラースなら大丈夫だろ。魔道具が完成したらそれを使った施設の建設を依頼することになるだろうし。」
「あー、じゃあ俺は将来何を建てることになるんだ?」
ふふふ、よくぞ聞いてくれた。
「風呂だ。今日みたいな間に合わせの風呂じゃない、ちゃんとした風呂を頼みたい。あとは条件が整えば農業用の施設だな。まあ、資金を貯めるところからのスタートだからいつになるかは分からないけど。その時はよろしくな。」
「おう、仕事ならキチッとやるから安心してくれ。しかし風呂の良さを知ったら俺も家に欲しくなってきた。」
「だろ?だから銅貨5枚くらいで一般人が入れる風呂屋を作りたいんだ。」
夢はスーパー銭湯とレジャープールだ。
日本では行けなかったが、オーナーが俺なら入り放題だ。
絶対にウォータースライダーも作ってやる!
メルヴィンとジェイデンと一緒にくっついて滑るんだ。
10
お気に入りに追加
538
あなたにおすすめの小説
【R18】俺の楽しい異世界性活
屋台の店員
BL
これは、俺が異世界へ行き、とにかくエロへ突っ走り、様々な男たちをあの手この手で落としていく話である。
※主人公はクズです。
※予告なくエロが入ります。
※一部、無理やり描写が入ります。
※主人公総攻めです。
【BL:R18】旦那さまに愛育調教されるオトコ妻
時枝蓮夜
BL
この世界には完全な男性1:完全な女性0.4:不完全男性0.5の割合で生まれてくる。
ぼくは不完全な男、12歳から15歳で肉体的な成長が止まり、生殖能力もない不完全男性として生まれた。
不完全男性は数の足りない女性の代用として、完全な男性の内縁のオトコ妻になる事ができる。
○
ぼくは14歳になる直前に旦那さまに見初められた。
そして15歳の春、スクールの卒業と同時に旦那さまに娶られ、オトコ妻となりました。
○
旦那さまに娶られ、オトコ妻となりましたので旦那さま好みのオトコ妻となるべく愛育調教が始まりました。
○
旦那さまのお気に召すまま、ぼくを旦那さま好みに調教して下さいませ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる