上 下
47 / 170
3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて

25

しおりを挟む
「…………っは。」

「大丈夫か?深呼吸して、ジェイデン。」

俺とメルヴィンのやり取りの途中から、彼の呼吸は止まっていたからな。

「……心臓が…停止するかと思いました。」

「そりゃ、おれのセリフだ、ジェイデン!お前が要らんこと言うからオレはエライ目にあったんだぞっ!こんなに恥ずかしい思いなんか、したことねえよ!」

真っ赤な顔で随分な言い方じゃないか。
憎まれ口を叩いても、それじゃあ可愛いだけだぞ。

「嫌だったか?」と聞けば「イヤじゃねえけど!」と返ってきた。
本当にもう。

「メルヴィンは可愛いな。」

ぼんっ、と音を立てそうな勢いでまた赤くなってしまうなんて。
ジェイデンまで頬を染めているし、両方食べてしまおうか。

「思ったコト、口から出てるぞ!確かにオレもお前も他人事じゃねえ。お前の言った通りだ。だからこそジェイデン!お前も明日は我が身だからな!そうだろ、シオン!」

「今日でも良いぞ。今すぐでもな。」

「ほら見ろ!お前も思い知れ!」

「わたしはもうある程度思い知らされてるから、これ以上はここでは遠慮します。」

「じゃあ場所を変えて、だ。首洗って待ってろ!」

ネコ同士のじゃれ合いが可愛いくて萌えるって、こういう気持ちなんだろうか。
見ていると和む。

「しかし仲の良い兄弟だな。」

「ふふっ。自慢の兄だからね。いろいろと世話になってますし、敬愛しているよ。」

「可愛い弟だからな。家を出てから支え合ってきた大事な相棒でもある。」

やっぱり二人はニコイチだな。
両方俺のだ。

しかし、俺はこんなに独占欲が強かったか?
愛に生きる男の息子だし、父の性質を受け継いだのかもな。
そうだとしたら、俺の愛も重たいだろう。
受け取る側には申し訳ない。

二人とも、出会ってまだ数時間だ。
顔を会わせたときは「俺より大きいし、筋肉凄いな、羨ましい」くらいの印象だった。
それなのに今は確かに愛しさを感じている。
可愛くて仕方ない。

二人ともにこんな感情を抱く俺は多情だったのか?
なんだか悩ましい。
この世界でならハーレムも、一夫多妻も、一妻多夫も、文化として根付いているから問題ないが、俺の甲斐性が問われるな。

元だがSランクの二人を、言葉は悪いが、俺のモノにして囲うには最低でもSランクに登る事が必要だろう。

さらに厄介なのは、メルヴィンがギルドマスターを任される程の人物だってことだ。
しかも王都のギルマス。
つまりはこの国のハンターギルドを統括してるってことだ。
そんな傑物を手に入れるには、並のSランクじゃ駄目だろう。
役不足と言われかねない。
だったら俺がさらなる付加価値を、この身に付けるしかない。

俺が囲われるなら話は簡単なんだけどな。
彼らは多分、俺に囲われたいと願っている。
どんな過去があってそう望んでいるのかは、まだ知らない。
だが俺は、彼らの願いを叶えてやりたい。
メルヴィンは俺じゃなきゃ駄目だと言った。
俺が叶えられなければ、きっと彼らの願いは叶わないんだ。
彼らに望まれていることが誇らしい。

何から手を付けて良いか全くわからないが、できる事からやっていこう。
だから諦めずに待っていてくれ、俺のメルヴィン、ジェイデン。
その時が来たら、二人とも俺だけのものだ。





「…オン、……ているかい?」

思考に没入している間に、ジェイデンに呼ばれていたらしい。

「お前さん、笑いながら考え込んでたぞ。」

「何を考えていたのかな?」

「ジェイデン!そんなの聞くな!墓穴掘る事になるぞ!」

なんて迂闊なジェイデン。
あなたも可愛いよ。
俺に機会を与えてくれて、感謝する。

「二人のことに決まってる。早急にジェイデンの雄っぱいも、俺だけのモノにするにはどうしたら良いだろうか、とかな。」

「ふえっ!」とか言って胸に手を当ててオロオロしてるけど、嘘じゃないぞ。
俺だけのものにしたいのは、雄っぱいだけじゃないだけだ。

「ほら見ろ、言わんこっちゃねえ!」

「メルヴィン、あんたの雄尻もな。」

「こっちにも飛び火したじゃねえか!責任取ってどうにかしろ!それに、だ!オレのケツはオレのモンだ!」

今のところはな。

「えぇっ!?…………あの、シオン?メルヴィンの、あの、…おっ、雄っぱいの方が、わたしのよりも立派で、ボリュームもあって、ええと、迫力もあるから、わたしのは要らないのでは?」

雄っぱいって言うのを恥ずかしがりながらも、メルヴィンを生贄に差し出すとは。
これに関しては小細工など粉砕してやろう。

「確かにあなたの言う通り、メルヴィンの雄っぱいは素晴らしい。だが、系統が違うだけで、あなたの雄っぱいもメルヴィンに劣らず素晴らしいことを知らないのか?」

二人揃って震えているけど、アレナド兄弟初心過ぎないか?
育ちも良さそうだし、心配だ。

「それに、誰の胸でも触りたい訳じゃ無い。ジェイデンとメルヴィンの雄っぱいだから俺だけのものにしたいんだ。そこは勘違いしないでくれ。」

先に再起動したメルヴィンが、隣で赤くなっているジェイデンの背中に手を添えて「もう諦めろ。何言ってもムダだ。あいつにゃ敵わねえよ」とか言っている。

「……っ分かりました、わたしの、おっ…、雄っぱいもシオンだけのものです。でも!でも、触りたくなったら必ずわたしに言ってからにすると、約束してください。じゃなきゃ君にはあげません。」

兄の失敗から学んでいるな…。
その上、不意打ちまで阻止してくるとは。

あげません、とか可愛い過ぎるから許してあげよう。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界に召喚されて失明したけど幸せです。

るて
BL
僕はシノ。 なんでか異世界に召喚されたみたいです! でも、声は聴こえるのに目の前が真っ暗なんだろう あ、失明したらしいっす うん。まー、別にいーや。 なんかチヤホヤしてもらえて嬉しい! あと、めっちゃ耳が良くなってたよ( ˘꒳˘) 目が見えなくても僕は戦えます(`✧ω✧´)

推しの悪役令息に転生しましたが、このかわいい妖精は絶対に死なせません!!

もものみ
BL
【異世界の総受けもの創作BL小説です】 地雷の方はご注意ください。 以下、ネタバレを含む内容紹介です。 鈴木 楓(すずき かえで)、25歳。植物とかわいいものが大好きな花屋の店主。最近妹に薦められたBLゲーム『Baby's breath』の絵の綺麗さに、腐男子でもないのにドはまりしてしまった。中でもあるキャラを推しはじめてから、毎日がより楽しく、幸せに過ごしていた。そんなただの一般人だった楓は、ある日、店で火災に巻き込まれて命を落としてしまい――――― ぱちりと目を開けると見知らぬ天井が広がっていた。驚きながらも辺りを確認するとそばに鏡が。それを覗きこんでみるとそこには―――――どこか見覚えのある、というか見覚えしかない、銀髪に透き通った青い瞳の、妖精のように可憐な、超美少年がいた。 「えええええ?!?!」 死んだはずが、楓は前世で大好きだったBLゲーム『Baby's breath』の最推し、セオドア・フォーサイスに転生していたのだ。 が、たとえセオドアがどんなに妖精みたいに可愛くても、彼には逃れられない運命がある。―――断罪されて死刑、不慮の事故、不慮の事故、断罪されて死刑、不慮の事故、不慮の事故、不慮の事故…etc. そう、セオドアは最推しではあるが、必ずデッドエンドにたどり着く、ご都合悪役キャラなのだ!このままではいけない。というかこんなに可愛い妖精を、若くして死なせる???ぜっったいにだめだ!!!そう決意した楓は最推しの悪役令息をどうにかハッピーエンドに導こうとする、のだが…セオドアに必ず訪れる死には何か秘密があるようで―――――?情報を得るためにいろいろな人に近づくも、原作ではセオドアを毛嫌いしていた攻略対象たちになぜか気に入られて取り合いが始まったり、原作にはいない謎のイケメンに口説かれたり、さらには原作とはちょっと雰囲気の違うヒロインにまで好かれたり……ちょっと待って、これどうなってるの!? デッドエンド不可避の推しに転生してしまった推しを愛するオタクは、推しをハッピーエンドに導けるのか?また、可愛い可愛い思っているわりにこの世界では好かれないと思って無自覚に可愛さを撒き散らすセオドアに陥落していった男達の恋の行く先とは? ーーーーーーーーーー 悪役令息ものです。死亡エンドしかない最推し悪役令息に転生してしまった主人公が、推しを救おうと奮闘するお話。話の軸はセオドアの死の真相についてを探っていく感じですが、ラブコメっぽく仕上げられたらいいなあと思います。 ちなみに、名前にも植物や花言葉などいろんな要素が絡まっています! 楓『調和、美しい変化、大切な思い出』 セオドア・フォーサイス (神の贈り物)(妖精の草地)

俺は成人してるんだが!?~長命種たちが赤子扱いしてくるが本当に勘弁してほしい~

アイミノ
BL
ブラック企業に務める社畜である鹿野は、ある日突然異世界転移してしまう。転移した先は森のなか、食べる物もなく空腹で途方に暮れているところをエルフの青年に助けられる。 これは長命種ばかりの異世界で、主人公が行く先々「まだ赤子じゃないか!」と言われるのがお決まりになる、少し変わった異世界物語です。 ※BLですがR指定のエッチなシーンはありません、ただ主人公が過剰なくらい可愛がられ、尚且つ主人公や他の登場人物にもカップリングが含まれるため、念の為R15としました。 初投稿ですので至らぬ点が多かったら申し訳ないです。 投稿頻度は亀並です。

買われた悪役令息は攻略対象に異常なくらい愛でられてます

瑳来
BL
元は純日本人の俺は不慮な事故にあい死んでしまった。そんな俺の第2の人生は死ぬ前に姉がやっていた乙女ゲームの悪役令息だった。悪役令息の役割を全うしていた俺はついに天罰がくらい捕らえられて人身売買のオークションに出品されていた。 そこで俺を落札したのは俺を破滅へと追い込んだ王家の第1王子でありゲームの攻略対象だった。 そんな落ちぶれた俺と俺を買った何考えてるかわかんない王子との生活がはじまった。

愛されなかった俺の転生先は激重執着ヤンデレ兄達のもと

糖 溺病
BL
目が覚めると、そこは異世界。 前世で何度も夢に見た異世界生活、今度こそエンジョイしてみせる!ってあれ?なんか俺、転生早々監禁されてね!? 「俺は異世界でエンジョイライフを送るんだぁー!」 激重執着ヤンデレ兄達にトロトロのベタベタに溺愛されるファンタジー物語。 注※微エロ、エロエロ ・初めはそんなエロくないです。 ・初心者注意 ・ちょいちょい細かな訂正入ります。

大好きな乙女ゲームの世界に転生したぞ!……ってあれ?俺、モブキャラなのに随分シナリオに絡んでませんか!?

あるのーる
BL
普通のサラリーマンである俺、宮内嘉音はある日事件に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 しかし次に目を開けた時、広がっていたのは中世ファンタジー風の風景だった。前世とは似ても似つかない風貌の10歳の侯爵令息、カノン・アルベントとして生活していく中、俺はあることに気が付いてしまう。どうやら俺は「きっと未来は素晴らしく煌めく」、通称「きみすき」という好きだった乙女ゲームの世界に転生しているようだった。 ……となれば、俺のやりたいことはただ一つ。シナリオの途中で死んでしまう運命である俺の推しキャラ(モブ)をなんとしてでも生存させたい。 学園に入学するため勉強をしたり、熱心に魔法の訓練をしたり。我が家に降りかかる災いを避けたり辺境伯令息と婚約したり、と慌ただしく日々を過ごした俺は、15になりようやくゲームの舞台である王立学園に入学することができた。 ……って、俺の推しモブがいないんだが? それに、なんでか主人公と一緒にイベントに巻き込まれてるんだが!? 由緒正しきモブである俺の運命、どうなっちゃうんだ!? ・・・・・ 乙女ゲームに転生した男が攻略対象及びその周辺とわちゃわちゃしながら学園生活を送る話です。主人公が攻めで、学園卒業まではキスまでです。 始めに死ネタ、ちょくちょく虐待などの描写は入るものの相手が出てきた後は基本ゆるい愛され系みたいな感じになるはずです。

やめて抱っこしないで!過保護なメンズに囲まれる!?〜異世界転生した俺は死にそうな最弱プリンスだけど最強冒険者〜

ゆきぶた
BL
異世界転生したからハーレムだ!と、思ったら男のハーレムが出来上がるBLです。主人公総受ですがエロなしのギャグ寄りです。 短編用に登場人物紹介を追加します。 ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ あらすじ 前世を思い出した第5王子のイルレイン(通称イル)はある日、謎の呪いで倒れてしまう。 20歳までに死ぬと言われたイルは禁呪に手を出し、呪いを解く素材を集めるため、セイと名乗り冒険者になる。 そして気がつけば、最強の冒険者の一人になっていた。 普段は病弱ながらも執事(スライム)に甘やかされ、冒険者として仲間達に甘やかされ、たまに兄達にも甘やかされる。 そして思ったハーレムとは違うハーレムを作りつつも、最強冒険者なのにいつも抱っこされてしまうイルは、自分の呪いを解くことが出来るのか?? ✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎✳︎ お相手は人外(人型スライム)、冒険者(鍛冶屋)、錬金術師、兄王子達など。なにより皆、過保護です。 前半はギャグ多め、後半は恋愛思考が始まりラストはシリアスになります。 文章能力が低いので読みにくかったらすみません。 ※一瞬でもhotランキング10位まで行けたのは皆様のおかげでございます。お気に入り1000嬉しいです。ありがとうございました! 本編は完結しましたが、暫く不定期ですがオマケを更新します!

同室の奴が俺好みだったので喰おうと思ったら逆に俺が喰われた…泣

彩ノ華
BL
高校から寮生活をすることになった主人公(チャラ男)が同室の子(めちゃ美人)を喰べようとしたら逆に喰われた話。 主人公は見た目チャラ男で中身陰キャ童貞。 とにかくはやく童貞卒業したい ゲイではないけどこいつなら余裕で抱ける♡…ってなって手を出そうとします。 美人攻め×偽チャラ男受け *←エロいのにはこれをつけます

処理中です...