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3章 天使と仔猫と風呂と俺、マスコットを添えて

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『ビシっ』と音がしそうな程に固まったジェイデンに意地悪く言ってやる。

「俺に関しては他人事だと思わない方が良いんだろ?忘れてたのか?」

「もうっ!もうっ!意地が悪いよ、シオン!」

「知ってただろう?」

「そうだけど!君はその、…色々と大変な思いをしてきたみたいなのに、何で色っぽい話題が平気なの?」

「それは俺が悲観してないからだ。俺と父は外見がそっくりなんだ。その父は母と出会ったとき、行き倒れの少年だったらしい。自分の名前しか分からない中で大分年上の母に一目惚れして、何年もかけて口説いて、誘拐されたりもしたけど、今は幸せに暮らしてる。そんな人を見ていたから、俺は酷い目にあっても乗り越えて来たし、相手にもよるがこういう話を嫌悪してないんだ。この外見でも幸せになれるって知っているからな。もちろん、誘拐と強姦は大嫌いだ。」

「シオン…。」

そんな顔するな、ジェイデン。

「まぁ、外見が似てるだけで中身が別物だし、俺にも相思相愛の相手ができるかは自分次第だと分かっている。それに俺だって男だ。可愛いと思う相手がいれば、いろいろしたくなっても仕方ないだろ。」

「………だからってこの下着はどうなんだい?」

「男のロマンじゃないか。」

良い話が台無しだよ、みたいな顔しないでくれ。
何がいけないのか。

「男のロマンを穿かせる相手がオレってどうなんだよ……。」

二人してどうなんだって言わないでくれよ。

「可愛いと思う相手にロマンを求めるのは至極当然だ。そもそも身に着ける物を贈るのなんて、脱がすために決まっている。だからメルヴィン、そんな事言ってないで、そのパンツを穿いて俺を誘惑してくれて構わないからな?もちろんジェイデンも。あなたの飾られた爪はどんなに強くたてても剥がれないし割れないから、愛し合うときも安心だな。」

「っ!確かにそうだけど!全然安心できないよ!」

失礼な。
俺の背中なら傷だらけにしてくれても構わないのに。

「ジェイデン!なんてヤツ連れて来たんだ!オレの手にゃ負えねえぞ!どうすんだ!?」

「そんな事言われても困ります!わたしは一緒に来ただけで、連れて来た訳じゃありませんっ!」

「落ち着け、メルヴィン。そもそも、その下着を穿くことを強制した訳じゃないだろ?なのに穿いてくれたんだから、期待するなという方がおかしい。違うか?」

「ぐっ!…確かに。」

こんなに簡単に丸め込まれて大丈夫なのか?
口は悪いが、きっと育ちは良いのだろう。

「それにまだ終わりじゃないんだ。メルヴィン、あんたの腕のアームレットに魔力を流してみてくれ。」

「ふ、服が消えるとかじゃないだろうな!」

「大丈夫だ。そっちの方が良かったか?期待に答えて今からでも細工しようか?」

「いらねえ!」と叫ばれたが、いつかやってみたいな。
憐れみの視線を送っているジェイデン、あなたにもな。
他人事じゃないって忘れるなよ。

幻影が付与してあるだけだと教え、「それなら大丈夫だね」というジェイデンの言葉を聞いてから、やっとメルヴィンが魔力を流した。

「ジェイデンのブレスレットは幻影ではないが、同じ素材でデザイン違いなんだ。幻影なら邪魔にならないだろ?」

彼の弟に贈った物と同じく、華奢な金のチェーンとパールの、スレーブブレスレットが浮かび上がる。
ちなみにスレーブブレスレットを選んだ理由は、アケミさんに影響を受けた俺の趣味だ。

「どうだ?気に入ったなら使ってくれ。あと、あんたの髪に触るぞ。」

そう言ってから彼の後ろに立ち、こげ茶色の髪を手櫛で梳いて、緩いハーフアップにしてやる。
額にかかる髪が色っぽい。

ジェイデンにどう思うか聞けば、「今までの放ったらかしの髪より、ずっと良いです」と返された。

「鍛練中は俺もハーフアップにすることが多いから、そうなったらお揃いだな。それに、あんたの髪色、好きだよ。」

俺の国を思い出させる色だ。
もう既に懐かしい。

「……おう。ありがとよ。だが顔が見えるようになれば、お前さんと並んだときシワが目立つだろう。恥ずかしいな。」

それでも俺と一緒に居たいと言われているようで嬉しい。

「あんたのコレは笑い皺だろ?恥ずかしがることは無いし、可愛いよ。俺にもたくさん笑ってくれ。」

そっと目元に触れ、そう告げてからソファに戻った。

「はー、しかし人生何が起こるかわからんモンだな。こんな若えのに翻弄される日が来るとは……。」

そんなにしみじみ言わなくても良いだろ。

「それはわたしも思いました。でも長年の夢も叶えて貰ったし、今、凄く幸せなんです。」

メルヴィンの表情が変わったから、彼には分かったのだろう。
しかし思い当たる事がないので「俺が何かしたか?」と尋ねたが、「君にはナイショだよ」と微笑まれてしまった。
これは教えてもらえそうにない。

「それにメルヴィンの夢も叶いそうじゃないですか。違いますか?」

イタズラっぽく言われた言葉にメルヴィンが真っ赤になって慌て出す。

「おまっ、それっ!覚えてたのか!?」

「忘れるわけありません。」と答えたジェイデンに「どんな事なんだ?」と聞いてみる。

「その夢を叶えてもらうには、メルヴィンが強くなり過ぎてしまったのだけれど、君なら大丈夫。あとは彼次第だから、ね?」

これも教えて貰えないやつだ。

「わかった。どうしても知りたくなったら、本人に聞くよ。」

「是非ともそうして」と、珍しくニヤニヤしているジェイデンの隣で項垂れている男にな。
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