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2章 間違った使い方をされた麻袋と中の人

02

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そんな俺が、だ。

今日はなんの因果か召喚という名の拉致をされ、強姦(未遂)現場に居て犯すなんて宣言をされた。

最悪だ…腹の底から気分が悪い。

クズ共に向かって歩きながら命じる。

「《マントを寄越せ》」

盛っていない方のクズからマントを調達してボロボロにされた中の人を包む。

「クズ野郎のマントだけど、我慢してくれ。」

身体が痛むのだろう、彼はぎこち無く俺の言葉に頷いた。

「《そこに並べ》」

クズ共に命じる。

「《お前たちは雇用主からの依頼を果たした》」

「《この通りを抜けたら俺の事は全て忘れて普段通りに行動しろ》」

だが盛ってたゲス、コイツはタダでは帰さない。
きっと他にも被害者が居るだろう。

「強姦魔。《お前のペニスは二度と勃たない》《後孔でも達せない》」

中の人の視線を感じる。
《もげろ》の方が良かったのか?

視覚的にわかりやすい絶望より、付いてのるに使えない絶望を味わわせてやりたかったんだけど。
あとはイケないだけだと勃つから、被害者増えるかもしれないし。

これからは前でも後ろでもイケないけど、乳首が残ってるな…。
まあ、難易度高いし大丈夫だろ。

むしろ乳首でしかイケないとか、嫌がらせとしてイイ感じだ。
その筋の人には人気出るかもしれないが。
そうなったら駄犬として飼われるがいいさ。

「《行け》」

そういえばベルト外して前を仕舞わないまま行かせたな。
まあいいか、捕まっても強姦魔だし。
それこそお愉しみの後に見えるだろ。
奴らが去ったのを目視とマップで確認してから中の人に向き合う。

彼が何か言おうと口を開くがそっと指を添えて止めた。
頬に殴られた痕がある。
間違いなく口の中も切れていて、喋るのは大変だろう。

かなり痛そうな音が貴族の屋敷の裏口から聞こえていたが、やはり身体中に暴行を受けて酷い状態になっている。

「口、喋ると痛いだろ?」

傷を治すそれっぽい言葉を考える。
念の為、自分たちを魔法で隠してから唱えてみる。

「《ヒール》」

中の人に翳した手から光が傷に向かって行く。
光が収まると、腫れが引いて彼の容貌が良くわかる。
傷の治療に成功したようだ。
彼は優しそうな顔立ちの、ほっそりした青年だった。

慌てて立ち上がろうとして倒れそうになった彼を支えて、そっと座らせ隣に膝を付く。
傷は治ったように見えるが、まだ自力では立てないようだ。
かなりの恐怖とストレスだっただろうし無理もない。

「あっ…あのっ……ケホっ…はぁ」

「水とか持ってないんだ、悪いな。」

まだ上手く喋れない彼の背中を擦って落ち着かせる。
暫くして、改めて彼が口を開いた。

「あのっ、た、助けていただいて、ありがとうございます!それに治療まで……。貴重な能力なのに僕なんかに使っていただいて…本当にどうやってお礼をしていいか……。でもありがとうございます。本当に………。っく、うえぇぇっ。」

落ち着いたら安心して気持ちが緩んだのか泣き出してしまった。
俺も子どもの頃、こんな事あったな…。
抱きしめてもらって寝落ちしたのを覚えてる。

「俺に触られるのは、嫌じゃない?」

頷いてくれたのを確認してから、そっと抱きしめて頭や背中を撫でながら彼が泣き止むのを待つ。

まだしゃくりあげてるけど、涙が収まったところで聞いてみる。

「このままここに居るわけにはいかないし、あなたの家があるなら送っていく。道を教えてくれるか?」

コクコク頭を振って返事をしてくれた。

「その前に、少し待ってくれ。」

カラコンとウィッグを外して空間収納に入れて、いつもの色に戻る。

「驚いた?」

「はっ、はい!」

「じゃあ行こうか。落ちないように掴まって。」

そう言って横抱きにした彼の手が所在無さげにしていたので、ちょっとイタズラを仕掛けてみる。

「わっ!」

ワザと彼を抱く力を緩めて少し落下させ、俺の服を掴ませた。

だがその指が欠けていた。
貴族の屋敷の裏口でも「指はダメ」って叫んでいたな。
気付いていないフリをして、努めて明るく話しかける。

「そうやってちゃんと掴んでて。落とすつもりはないけどね?」

ふざけた感じでウィンクもオマケしてみる。
彼は真っ赤になって、またコクコク頭を振った。

こういうときは、俺の顔が役に立つ。
しゃくりあげてたのも止まったしな。

そういえば、と1つ聞いてみる。

「あなたの名前を教えてもらえるか?俺のことはシオンと呼んでほしい。」

「あっ!すみません!!助けていただいたのに名乗らないなんて…。僕はフェイトっていいます。」

彼、フェイトは更に真っ赤になってあわあわしている。
小動物に通じる可愛さがあって見ていて和む。

「ではフェイト、今度こそ行こうか。」

「はい。…あの、お願いします。」

横抱きで往来を歩くのが恥ずかしいのか、フェイトの顔の赤みは一向に引かない。
声も小さくなってしまった。

「この格好が恥ずかしい?でも大丈夫、他の人は気付いてないから。」

そう告げると、フェイトがきょろきょろしてから驚きの表情を浮かべる。

「スゴイですね!魔法ですか?魔道具ですか?魔道具だったら少しで良いので見せていただけないでしょうか?」

急に元気になったフェイトに驚くが、泣いているよりずっと良い。

「残念、魔法なんだ。魔道具が好き?」

「えっと、あの、僕、魔道具師なんです。なので、気になってしまって…。あと、魔道具、好きなので…他の魔道具師さんの作品も見るの好きで……。もう続けられないかも、ですが。」

うーん、また赤くなったな。
媚びた表情じゃないから純粋に可愛い。

でも陰が射してしまった。
続けられないかも…か。
やっぱり指かな…後で聞いてみよう。
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