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罪なき日々の終着
小さな星たちの戯れ 二つ星の瞬き
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校庭で昼休み、流磨と柳は丸太に跨って会話をしていた。
流磨は柳に興味津々で尋ねる。
「シノって、将来の夢とかある? ……いや、当てるぜ…………ネオトラバース選手か!」
柳は少し頷きながら答えた。
「うん。今は小学生だからスターライトチェイスだけど、中学校に上がったら優れた選手からネオトラバースに出られるんだ」
隣に腰掛ける柳は、シンプルな白いポロシャツとネイビーのチノパンを履きこなしている。10歳とは思えない落ち着きが、彼にその服装が似合う理由なのだろうと感じた。
流磨は自分がそんな格好をしたら一時間でドロドロにしてしまうだろうと思いつつ、すでにサッカーをしている途中ですりむいた膝を叩いた。ベージュの半ズボンは泥汚れが目立たない。
柳が洗って消毒するようにと言うが、今話していることの方が自分には重大事項で、後でやると返せば観念したのか、そのまま彼は膝から流磨の顔に目線を移動させた。
やはり、柳は心地いい。無理に他人のことに立ち入ろうとはしないその性質を、流磨は好ましく思う。多分、オトナなのだ。
流磨は柳の目を見て、できるだけ力強く応援の言葉を送る。
「ぜってーできるよ! シノなら。だってお前すげーじゃん。サッカーとか野球とかやってみても、あっという間にできるようになって。あとプログラミングも。俺あれをチマチマするのがヤだ。きらいだ」
柳は少し考え込むようにして、言葉を返した。
「そうかな……」
流磨は自分自身の将来について考え始めていた。
「やっぱ、夢があるから頑張れるのかな? 俺もなんか、決めておくべき?」
柳は穏やかに助言してくれる。
「……まだ小学生だし、これから決まるまで、見つけた眼の前の好きなことを頑張るっていうのが自然だと思う。僕みたいに道をすでに決めている小学生も中にはいるけど、きっと少数派だ」
流磨は少し思案しながら、何が自分に合っているのかを探ろうとした。
「そっかぁ……何がいいかな?」
柳は流磨の特性を褒めつつ、助言を続ける。
「流磨は……人を励ましたり、一緒に頑張ったりする時に、適切な言葉を選べる。それは才能だと思う」
流磨は少し驚いて、反応した。
「そんな大したことか?」
柳は深くうなずき、もっと説明を加えた。
「こういうのは、自分が大したことないと思っていることこそが特殊な技能なんだよ。できて当然と思っていることも、他人には真似できないっていうことはある」
流磨はそれを聞いて考え込む。
「うーん?」
「メンタルを鍛えるために、体を鍛えるっていうアプローチも有効じゃない?」
流磨はそれに感心して応じた。 跨った丸太の上で、柳にじりじりと近寄っていく。
「なるほど。アスリートだって、体も心も両方鍛えるべきだって言ってるもんな」
「そうだね」
「じゃあ、今度一緒にトレーニングについて調べようぜ。そんで、一緒に鍛えるんだ」
柳は少し驚いて問い返す。
「え、僕も?」
流磨はにっこりと微笑んだ。
「シノはもう先生に教わって、いろんなトレーニングしてるんだろ? それとも、俺が一緒だと……邪魔か?」
柳は急いで首を振り、安堵の表情を浮かべる。
「……う、ううん。凄く心強いよ」
流磨の心が明るくなり、二人の間に新たな約束が生まれたことを確認し合えたと感じた。
「決まりだ。今度、そういうのが載ってるアーカイブとか集めようぜ」
校庭の丸太に腰掛けたまま昼休みの残り時間を使って、これからのトレーニング計画について熱心に話した。
柳がネオトラバースの選手として成功するために技術を磨くこと、流磨が人間関係の才能を生かしてどう成長していくか、そうした彼らの目標が交錯しながらも、友情という絆でしっかりと支えられていることを感じさせるひととき。
これが彼らの強い絆を紡ぐ物語の始まりであり、新たな挑戦へのスタートラインだった。
流磨は柳に興味津々で尋ねる。
「シノって、将来の夢とかある? ……いや、当てるぜ…………ネオトラバース選手か!」
柳は少し頷きながら答えた。
「うん。今は小学生だからスターライトチェイスだけど、中学校に上がったら優れた選手からネオトラバースに出られるんだ」
隣に腰掛ける柳は、シンプルな白いポロシャツとネイビーのチノパンを履きこなしている。10歳とは思えない落ち着きが、彼にその服装が似合う理由なのだろうと感じた。
流磨は自分がそんな格好をしたら一時間でドロドロにしてしまうだろうと思いつつ、すでにサッカーをしている途中ですりむいた膝を叩いた。ベージュの半ズボンは泥汚れが目立たない。
柳が洗って消毒するようにと言うが、今話していることの方が自分には重大事項で、後でやると返せば観念したのか、そのまま彼は膝から流磨の顔に目線を移動させた。
やはり、柳は心地いい。無理に他人のことに立ち入ろうとはしないその性質を、流磨は好ましく思う。多分、オトナなのだ。
流磨は柳の目を見て、できるだけ力強く応援の言葉を送る。
「ぜってーできるよ! シノなら。だってお前すげーじゃん。サッカーとか野球とかやってみても、あっという間にできるようになって。あとプログラミングも。俺あれをチマチマするのがヤだ。きらいだ」
柳は少し考え込むようにして、言葉を返した。
「そうかな……」
流磨は自分自身の将来について考え始めていた。
「やっぱ、夢があるから頑張れるのかな? 俺もなんか、決めておくべき?」
柳は穏やかに助言してくれる。
「……まだ小学生だし、これから決まるまで、見つけた眼の前の好きなことを頑張るっていうのが自然だと思う。僕みたいに道をすでに決めている小学生も中にはいるけど、きっと少数派だ」
流磨は少し思案しながら、何が自分に合っているのかを探ろうとした。
「そっかぁ……何がいいかな?」
柳は流磨の特性を褒めつつ、助言を続ける。
「流磨は……人を励ましたり、一緒に頑張ったりする時に、適切な言葉を選べる。それは才能だと思う」
流磨は少し驚いて、反応した。
「そんな大したことか?」
柳は深くうなずき、もっと説明を加えた。
「こういうのは、自分が大したことないと思っていることこそが特殊な技能なんだよ。できて当然と思っていることも、他人には真似できないっていうことはある」
流磨はそれを聞いて考え込む。
「うーん?」
「メンタルを鍛えるために、体を鍛えるっていうアプローチも有効じゃない?」
流磨はそれに感心して応じた。 跨った丸太の上で、柳にじりじりと近寄っていく。
「なるほど。アスリートだって、体も心も両方鍛えるべきだって言ってるもんな」
「そうだね」
「じゃあ、今度一緒にトレーニングについて調べようぜ。そんで、一緒に鍛えるんだ」
柳は少し驚いて問い返す。
「え、僕も?」
流磨はにっこりと微笑んだ。
「シノはもう先生に教わって、いろんなトレーニングしてるんだろ? それとも、俺が一緒だと……邪魔か?」
柳は急いで首を振り、安堵の表情を浮かべる。
「……う、ううん。凄く心強いよ」
流磨の心が明るくなり、二人の間に新たな約束が生まれたことを確認し合えたと感じた。
「決まりだ。今度、そういうのが載ってるアーカイブとか集めようぜ」
校庭の丸太に腰掛けたまま昼休みの残り時間を使って、これからのトレーニング計画について熱心に話した。
柳がネオトラバースの選手として成功するために技術を磨くこと、流磨が人間関係の才能を生かしてどう成長していくか、そうした彼らの目標が交錯しながらも、友情という絆でしっかりと支えられていることを感じさせるひととき。
これが彼らの強い絆を紡ぐ物語の始まりであり、新たな挑戦へのスタートラインだった。
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