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始まりは卒業
しおりを挟む歌なんて歌いながら、イイ女を実践して直線歩きで前進。少し先の角を曲がった時。
「げっ」
軽快だった足取りに急ブレーキをかけた。
「ヤジマ、コジマ……」
そこにいたのは最も会いたくない性悪コンビ。
矢島武司(ヤジマタケシ)に児島謙二(コジマケンジ)。
……いや。矢島謙二に児島武司? ヤジマタケ……コジ……?
どっちだっけ。 眉間に皺を寄せブツブツと呟く私に気づいた二人。
ヤジコジは、意外にも「よぉ」と声なんか掛けてきちゃったよぉ。どうする私、どうしよう。
接近してくる危険物に身体が素直に反応する。
「聖(ヒジリ)じゃん、元気か。 何してんだよ?」
考えてんだよっ、危険物処理方法!
ヘラヘラと。どこぞの高校デビューのバカ男かと(人のことは言えないが自分は許せる)。
それにしてもこいつら二人とも。
「あ、買い物?」
「一人?」
「髪下ろしてんだ」
「……」
何でそんなフレンドリー?
わざわざ数歩前で恥ずかしいヤンキー座りをした矢島が「よっ」と立ち上がり、私に向かって一歩前進。
(……っ!)
思わず後ずさった。足は正直だ。
「なになに、何処で買い物?」
「う、うん? あの」
なぜ笑顔? 恥ずかしい格好で座ったままの児島がハイテンションで、かけなくていい声をかけてくる。……ああ、怖い。
「聖」
呼んだ? 呼び捨てした? 心臓が嫌なリズムで暴れはじめた。
「な、何よ」
児島がのろりと立ち上がり近づいて。 来るな、くるなクルナクルナ……。
来ないでっ――!
なによぉ。まだイジメ足りないっていうのぉ?
さっきまでイイ女に向かっていたはずの私は、一気に暗いイジメられっ子へと巻き戻しされていく。暗くて辛い、あの日々。
「あっれぇ。おまえ、髪ほどいてるとイメージ変わるじゃん」
「……」
にへにへと上から下へ全身に視線を流された。
「きゃっわいい」
はい? きゃわ?
「なぁ矢島。可愛いよなぁ」
コジマがヤジマに言う。
「お、いーね、マジ可愛いんじゃね?」
ヤジマがコジマに答える。
「あの?」
児島がにわとりの様に私を軸にぐるぐる回り「可愛い」を連呼する。
矢島が携帯を取り出し「番号教えて」だの「今ひま? 俺はひま」だの。
かっこ悪いナンパ野郎になっている。
この現象はしばらく続いた。矢島、児島、矢島、児島、やじまこじまヤジマコジマ――……。
勝った方に景品でも出るのかというくらい、にわとりに褒め称えられた。
「まっじ可愛い~」
いやまじ気持ち悪い。
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