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第三章 スタンピード

第十七話

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「で、どうなのよ?」
サラは侑の態度にイライラしている。

「構わないよ?
でも、薬師って戦闘職では無いよね。」
侑はサラを危険な目に合わせたくなかった。

「薬師は戦闘には向かないけど、薬師になるにはヒーラーとレンジャーで実務の経験を積み重ねないといけないのよ。
だから、後方支援と弓による中距離攻撃は得意よ?」
サラは薬師になるのは大変なのよと呟いた。

「母さんが後方支援するから、サラは弓かな。」
侑は周りと相談しながら、フォーメーションを考えていた。

「じゃ、一回家に帰って装備を持ってくるわね。」
「サラの弓はお気に入り?」
「薬師になってからは使ってないから、部屋の片隅で埃が被ってるかも。」
「じゃ、俺が作るよ。
ちょっと試したい事もあるし。」
侑はドラゴの武器を見てから何かを思いついた。

「試したい事?
別にいいけど、ドラゴみたいにあげるものないわよ?
この大鎌は駄目だからね?」
「いや、別に要らないし。
初パーティの記念にみんなに作ろうかなって。」
侑はエリカにも作るよって微笑んだ。

「私はいいですよ、役に立ちませんから。」
エリカはシュンとしてる。

「みんなが出ている間の仔猫の世話は誰がやるの?
帰ってきてから食事作るのは疲れてるからみんな嫌だよ?」
侑は家で待つのも立派な後方支援だと言った。

「分かったわよ、仔猫の世話と帰ってきた時の食事は任せて。」
エリカが微笑んだ。

「じゃ、ギルドに行ってくるよ。」
侑はラピスとルビーを連れて馬に乗った。


ギルドの扉を開けると異常な光景だった。
一体、この人だかりは何なんだ?
こんなに一杯の冒険者は何処から湧いてきた?
人混みを避けながら受付を侑は目指した。
侑の顔を知ってる冒険者は『パーティ入るか?』
『パーティ組んだか?』と声をかけてくる。
やっとの思いで受付についた。

「ロゼ居る?」
侑はリゼに声をかけた。

「侑…
疲れた…
戦闘のほうが楽…
この状況を見て部屋から出てこなくなった…
完璧逃げた…
後でシメる…
通っていいよ。」
リゼは本当に疲れきっている。

「お疲れだな、落ち着いたら労いで何か作ってやるから頑張れ。」
侑はリゼに同情した。

「えっ?
作ってくれるの?
じゃ頑張る。」
リゼはちょっと元気になった。


「ロゼ!
入るぞ?」
侑がドアをノックする。

ドアがあき、ロゼが顔を出した。
「早く入って。」
侑の腕を引っ張り中に引き込むと素早くドアをしめた。

「あのさ、侑。
お願いだから、ギルドの中くらいはギルマスって呼んでくれない?
彼氏になるならいいけどさぁ、やっぱりメンツってもんがあるのよ?」
ロゼは侑を睨んだ。

「彼氏ならいいんだ?
ギルマスって呼ぶの面倒いから彼氏でいいよ。」
侑はソファーに座った。

「マジで言ってる?」
「冗談に決まってるだろ、ギルマス。」
ロゼは髪の色に負けない位、顔を赤くした。

「で、パーティは決まったの?」
「五人で登録する。」
「侑・ドラゴ・バトラ様・メイ様は入るとして、あと一人は?」
ロゼは私はギルマスだから無理よって言った。

「あと一人はサラだよ。」
ロゼは魂の抜けた顔をした。

「はぁ?
あの子が戦うの?
侑…
どんな手を使ったのよ?
あの子はこういう非常事態でも絶対に参加しなかった子よ?
レンジャー時代のあの子と組んでたけど、必要以上に戦わない。
体力が無い訳でも博愛主義でも無く、ただの面倒くさがり屋なのよ。
侑に紹介する時だって、服で釣るの大変だったのよ。」
ロゼは侑に詰め寄り、横に座った。

「別に何も?
母さん含めて四人で良いかって話してたら、入れてくれって言われたよ?
俺は逆に危険な目に合わせたくなかったから、サラには話を振らなかったよ?」
侑は座る位置をずらし、ロゼとの距離を作りながら話した。

「あっそう……
自分から言ったのね。
よっぽど侑の事が気に入ったのかしら?
どちらにしても、あの子の弓の技術は凄いから背中は任せて大丈夫よ。」
ロゼは技術に関しては太鼓判を押した。

「五人パーティで登録しておくわね。
で、従魔なんだけど今回はソードキャットは連れて行かない方がいいと思うわ。
討伐対象にソードキャットが居るから、他の冒険者に狙われる可能性もあるし同種で戦わせるのも可哀想な気がするわ。」
ロゼはオニキスを置いていくことを勧めた。

「その辺はオニキスに聞いてみるよ。
なるべく置いて行くようには心掛けるけど、どうしても行きたいって言ったら連れてくよ。」
侑はオニキスに任せると言った。

「分かったわ、首輪は必ず着けてね。
それと、報酬なんだけど今回は前払いになるわ。
いつもなら、討伐部位を持ち帰るだけでオッケーなんだけど今回は違うの。
魔素を噴き出してる穴が近いから、死体を置いておくとダンジョン化を早める可能性があるし他の魔獣を呼び寄せるかもしれない。
だから、報酬として魔導バッグを一人一袋渡すからその中に死体を入れてきて欲しいの。
勿論、一体に付き銀貨一枚は保証するしレア度が高ければ追加で報酬を出すわ。
渡すバッグには百体入るから問題無いと思うけど、一杯になったら一度ギルドに来て精算する必要があるからね。」
ロゼは魔導バッグは普通に買うと金貨三枚位するから、高額な報酬だと言った。

「分かったよ、明日の朝からスタートか?
それとも、もう少し様子を見るのか?」
「今の所、明日の朝からね。
開始の合図はギルドから狼煙が上がるわ。
今日来てもらったから、開始の時にギルドに来る必要は無いの。」
ロゼは詳細を説明した。

「分かった。
オニキスの首輪の代金はどうする?
今作るか?」
侑は帰り支度を始めた。

「バタバタしてるから、落ち着いてからにするわ。」
「いつでもいいから、デザインを描いておいてくれ。」
侑は紙を二枚渡した。

「一枚でいいよ?」
「もう一枚はリゼの分だ。
あいつも頑張ってるから、労ってやらないとな。」
「分かったわ、ありがとう。
渡しておくよ。」
「じゃ、帰るよ。」
侑は魔導バッグを五枚受け取るとギルドを後にした。


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