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第三章 スタンピード

第十一話

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「分かりました、明日の早朝にでも調査隊を派遣してその後の対応を考えます。」
ギルマスは神妙な面持ちで話を聞いていた。

「じゃ、報告したから帰るよ。」
侑は何かを言われる前に出たかった。

「調査隊の報告次第では呼び出すよ?」
ギルマスは侑がドアを開ける瞬間に声をかけた。

「下着を作れ以外なら応じるよ。」
侑はドアから出ながら、返事した。

家に着くと、ラピス達は『侑さん、おやすみ』と自分の家に入った。
ドアを開けて中に入ると、メイが出迎えてくれた。

「母さん、ただいま」
「おかえり侑、遅かったわね。」
メイは侑の後ろに居る二人に気が付いた。

「可愛い娘を二人も連れて帰ってきたの?
侑、大丈夫?
何かに覚醒めた?
ミチルさんが見たら何というか…」
メイは二人が緊張しているのを見て、冗談を言った。

「何!侑が女の子を連れて帰ってきた?」
メイの声を聞いたバトラがリビングから慌ててきた。

「父さんと母さんだよ。」
侑は二人に紹介したが、メイとバトラを見たサラは空いた口が塞がらない状態になっている。

「お父さんって、バトラ様なの??
それにメイ様まで。」
サラは畏まっている。

「そだよ?知ってるの?」
「知らない人のほうが少ないよ。
知将バトラ様だよ?
4大将軍の一人だよ?
メイ様だって、第二精鋭部隊副将だよ?
何でこんなに凄い二人が親なの?」
サラはビクビクしながら質問した。

「へー、父さんって将軍だったんだ。
母さんの副将も初めて知ったよ。」
「元だ、元。
侑が来る前の事だから気にする事は無い。
今は転生待ちのただの無職だ。」
「私もよ、主人が降りたから私も辞めちゃった。
今はただの主婦よ。」
二人は畏まっているサラと呆気にとられているエリカに笑いかけ、リビングに促した。

ソファーに座ると、メイが温かいお茶を淹れてくれた。
二人はバトラとメイに自己紹介をした。

「薬師さんとエルフさんね。
エリカさんの火傷を治す為に連れてきたと。
必要な物があったら気兼ねなく言ってね。」
メイは優しく迎え入れてくれた。

ソファーの影から二匹の仔猫が恐る恐る様子を見ながらエリカの足元に来た。

「あら、この子達は山に住んでた猫ちゃんじゃない?」
エリカは二匹の仔猫に見覚えがあった。

「親も居るよ、そういえば姿が見えないな。
母さん、オニキスはどうしたの?」
侑はオニキスの姿を探した。

「外に居るわよ。
おっきくなったから、家の中だと狭いんですって。」
メイはオニキスが外に出たがっていたから、出してあげたと言っている。

「そっか、じゃ外に猫小屋作るかな。」
侑はオニキスの家を想像した。
今回は時間が無いから、スキルで作っちゃおう。

侑は外に出た。

天気の良い日は屋根に登りたいだろうから、プレハブみたいな平らな屋根の家をラピス達の家の横に創造し始めた。

ポケットからさざれ石を出して、クリエイトを発動した。
地面に大きな魔法陣が描かれると、侑は出てこいと指を下から上に動かした。

家が出現すると中から見ていたギャラリーが『おおっー』って驚きの声をあげた。
エリカ以外は侑のクリエイトを見ていたが、このサイズの物を作ったのは初めてだった。

「初めてのこのサイズにしては、上出来かな。」
侑は猫小屋の中に入り、壁や天井を確認した。

侑が外に出ると、オニキスがアクビをしながら歩いてきた。

「何事ニャ?
なんか家が出来てるし、屋根の上が気持ち良さそうニャ。
乗っても壊れないかニャ?」
オニキスは狼位の大きさになっていた。

「オニキスの家だよ。
まだ中には何も無いけどね。
とりあえず、ラグとソファーは今入れるよ。」
侑はオニキス用のソファーと下に敷くラグをスキルで作った。

「ありがとニャ。
子供が自由に出入り出来るようなドアをリビング辺りに作って欲しいニャ。
昼間は侑さんの家で、寝る時はコッチで移動できると良いニャー。」
オニキスは子供達と一緒に寝たいみたいだ。

「分かった、作っとくよ。」
侑は皆の居るリビングに戻った。
そしてリビングの壁の一角に、カスタマイズで猫用のドアを作った。

大人数の楽しい食事のあと、リビングで今後の事について三人で話し合いが始まった。
バトラとメイはサラとエリカの部屋を準備しに席を離れた。

「でね、今の火傷の感じはどぉ?」
「はい、いつもの脈打つ感じは大人しいです。
おかげで過ごしやすいです。」

「あれだけ魔素の高い所から離れれば、少しはね。」

「推論で構わないから、少し話してもらっても良いかな?」
侑はサラの推論は多分的を得ていると感じていた。

「うん、私の推論の前に基本的な事を話すね。
まず、種族には属性が有るの。
この属性は変異も居るから全てに当てはまらない事を片隅に入れといてね。
基本的に、人族は無属性。
ドワーフとエルフは地属性、その中でもドワーフは土でエルフは風ね。
獣人族は獣の血によって変わるわ、竜人族は火属性で人魚族は水属性。」
これはモンスターにも当てはまるわとサラは言う。

「本来、火は水に弱く地に強い。
地は火に弱いが水に強い。
これは自然の理と変わらず、火は水で消火する事ができる。
空気の多い所や木の多い所は火が広がりやすい。
木は水を吸って成長し、雨が降ると地面が固まる。
ね、分かり易いでしょ?」
サラは大事な事なので、理解しやすく丁寧に説明した。

「ここからは私の推論よ。
エリカは地属性で火鼠は火属性。
相性は最悪ね、火鼠はモンスターだから血液の中に魔素を多く含んでいた。
エリカはその血液を長い時間に渡って浴びてしまった。
表面の皮膚が灼けて炎症を起こす程度の火傷が、長時間に渡って浴びた事によって骨にまで染み込んでしまったと考えているわ。」
サラは表面を治しても、骨から炎症がまた広がる為治らないと付け加えた。

「それなら辻褄が合うね。
ヒールみたいな外科的な魔法よりも、キュアの様な内科的な魔法のほうが内側から作用するから効果が高いって事かな?」
侑はミチルに言われた事を思い出していた。

「侑君は薬師的な考え方が出来るのね。
ちょっとビックリだわ。
外科や内科の考え方は向こうの世界で見てきただろうけど、魔法の正しい使い方に結び付けるってすごいよ。
誰かに教わったの?」
サラは侑の考え方が医師や薬師の考え方と同じ事に驚いた。

「えっと、今は居ないけど…
俺の相棒のミチルってのが教えてくれたんだ。」
侑はミチルの事を何て説明するか悩んだ。

「えっ??
ミチルさんて、使徒長の?
だとしたら、私の先輩だよ!?」
サラは同姓同名かと思ったが、薬師的な考え方を教えられる人は他に居ないと思った。

「えっ?サラさんはミチルの後輩?」
侑は驚いて、大きな声をあげてしまった。
その声を聞いて、メイが顔を出した。
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