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第二章 鍛冶と鉱山の国トトリ

第九話

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「ほぅ、これはまた。」
バトラは目の前の本棚から出され、乱雑に積み重なっている本を見て驚いた。

侑はバトラを書斎に連れてきていた。

「この部屋を片付ければ宜しいのですか?」
バトラは意地悪に聞く。

「いえ、全て読みましたので元に戻さなくて良いです。」

「この部屋の棚側半分の山は、専門書が欲しい山です。」
「壁側の山は、違うジャンルの本と入れ替えて欲しい本の山です。」
侑はバトラに説明し、話を続けた。

「鍛冶と錬金術を学びたいので、専門書をお願いします。」
「あと今朝カニと戦って思ったのですが、やはり自分用の武器が必要だと感じました。」
「なので、武器の専門書とモンスター図鑑の様な本が欲しいです。」

「カニと戦われたのですか?」
「湖畔で朝食後に、脚の長いカニでした。」
「それはロングレッグクラブですね、毒性は低いので焼いても茹でても美味しく頂けます。」
バトラは自分も好物だと喜々と説明した。

「沢山ありますから、後でお土産にお持ち下さい。」
侑はバトラのテンションを落ち着かせたかった。

「もう戦闘を経験されたのですね、でしたらポーション等のレシピ集もご用意した方が宜しいですね。」
バトラは落ち着いたみたいで、冷静に本のジャンルを考えてくれている。

「本の他にも、用意出来るか知りたい物があります。」
侑はバトラをラボに連れて行った。

「色々試したい事があるので、鉄鉱石を使わせてもらいました。」
「鉄鉱石を使ってクリエイトでナイフを作ってみました。」
侑はケースからナイフを取り出し、バトラに渡した。

「良くできてますね。」
バトラは感心している。

「そのナイフを作った時に思ったのですが、鉄等を含まない他の石を使いスキルで作ったら性能に変化が現れるのか知りたくなりました。」
「なので、水晶以外の鉱石が欲しいのですが手に入りますか?」

「この国で採掘される石は、地属性の物が多いです。タイガーアイやガーデンクォーツなどがメインです。」
「それでも宜しかったら、明日にでもお届けしましょう。」
「もし、違う石をお望みでしたら礼拝室からティーターン様の部屋へお向かい下さい。」
バトラは手に入る事を伝えると侑はお願いした。

侑とバトラがリビングに行くと、ミチルが首を長くして待っていた。

「ミチル様、お待たせしました。」
バトラはカバンの中から包みを幾つか出した。

「ご要望の胡椒です、挽く道具もお持ちしました。」
「あと、妻からですが粉末の唐辛子、魚を乾燥させた物。海藻を乾燥させた物をお持ちしました。」
ミチルは思いがけない贈り物に喜びを隠せない。
「ありがとうございます、メイ様にも宜しくお伝え下さい。」
ミチルは浮かれている。

「バトラ様、まだ時間は御座いますか?」
「はい、大丈夫ですよ。それから、様は要りませんバトラとお呼びください。」

「では、バトラさん暫くお待ち下さい。」
侑はキッチンに向かった。

「侑様!今戴いた食材も使ってね!」
ミチルは侑が何をするか気付いたらしい。

キッチンに立った侑は、調理器具と調味料を準備してカバンの中から大量のカニと食材を出した。

まずは時間のかかるカニ飯だな、カニの殻を割り身をほぐしだす。
土鍋に米とほぐした身、カニ味噌が詰まった甲羅を入れ水を入れた。
火にかけると、次の料理にかかる。
カニの天ぷら、唐揚げ、焼きガニ、どんどん作る。
カニの味噌汁が出来た所で、カニ飯が炊き上がった。

それぞれを容器に入れ、リビングに戻る。

リビングには料理の匂いにやられている一人と一羽が雁首揃えて惚けている。

「おすそ分けです。
バトラさん夫婦には色々お世話になってますので、気持ちばかりですがお持ちください。」
侑はバトラに料理の入った容器と生のカニを渡した。

「こんなに戴いて宜しいのですか?」
バトラは浮かれている。

「大丈夫ですよ、まだ沢山ありますし巨大なカニも有りますから遠慮しないで下さい。」
「えっ?巨大なカニですか?」
「もしよかったら、見せて頂いても?」
バトラは料理とカニをカバンの中に仕舞いながら、ちょっと顔を顰めた。

「構いませんよ。」
侑はここでは出せないので庭に移動しましょうと外に出た。

庭に出るとカバンから巨大なカニを出した。

「コイツは凄いな。」
「侑様、このカニはキング種です。」
「ギルドで討伐依頼が出ている筈なので、身を食べたあと爪の殻は取っておいて下さいね。」
「このカニの討伐確認部位は爪ですので、持っていけば褒賞金が出る筈です。」
「時期が来たらお連れしますので、それまでインベントリで保管していて下さい。」
バトラは驚きを隠せないが、冷静を装って侑に説明した。

侑がカニをインベントリに仕舞っていると、バトラが
「これにて失礼致します。
本と石は明日お届けします。」
と侑に挨拶をした。

「ありがとうございます、宜しくお願いします。」
「おやすみなさい。」
侑とミチルはバトラを見送った。

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