上 下
8 / 93
第一章 神殿

第八話

しおりを挟む
白い回廊を歩き出すと、Tが待っていた。

「おかえり、お兄ちゃん」
Tは嬉しそうだ。

「ただいま、これありがとう。すごく助かったよ。」
俺は借りていたカバンをTに返した。

カバンを受け取ると、Tは名残惜しそうにチャクラブレスを俺に返してくれた。

「この扉の向こうで、ティーターン様が待ってるよ。」
Tはもう少し話したかったが、我慢した。

…Tが指差した方に扉がある、さっきは無かったと思うんだけど…

「じゃ、ティーターン様に会ってくるね。」
俺は手を振りながら、扉を開けた。

部屋の中に入ると、テーブルと椅子。
さっきまでと同じ風景。
違うのは、花瓶が有るか無いか。

待っていたのは、大きな男の人だった。

「侑と申したな、よく来た。儂が地の神ティーターンと申す。」
「それと、Tが世話になった。」
ティーターンは礼を述べた。

「侑と申します、Tには此方がお世話になりました。青い鳥はミチルと申します。」
侑はミチルを紹介した。

「青いフェニックスとは、珍しい物を召喚してきたな。
あと、聞いたがお主はブラフマーのユニークスキルを貰ったそうだな。」
「あやつはお主の事を相当気に入ったと見える。」
ティーターンは興味津々だ。

「ティーターン様には、ミチルがフェニックスだと分かるのですか?」
侑は不思議そうに訊ねた。

「儂は地の神だから、地場や空気の揺らぎ等に敏感なのだよ。
先程、地場がかなり揺らいだ。なので、ブラフマーに問うた。」
侑は納得し、椅子に腰掛けた。

「お主の持ってきた大切な物をテーブルの上に出してみよ。」
ティーターンは標本を出すように指示した。

侑は標本をカバンから出しテーブルに置いた。

ティーターンは標本から一つ石を取り、口の中に入れた。

「何をするのですか!」
侑は声を荒らげ、ティーターンを睨んだ。

「お主が怒っているのは、父親のプレゼントを食べられたからか?」
「それとも、自分の持ち物を勝手に食べられたからか?」
ティーターンは侑の目を凝視する。

「違います!」
「父親から貰った思い出は食べられても無くなりません。」
「勝手に食べられたからと怒るのであれば、俺は色々な食べ物から怒られるでしょう。」

「この石達はいつも俺を慰めてくれたり、話し相手になってくれた大切な物です。
この石ひとつひとつが宝物だから、声を荒らげたんです。」
侑は気持ちを抑えながら、ティーターンに説明した。

「うむ、石自体が宝物だと言うのだな。
では、返そう。試して悪かったな。」
…思った通りの人間だな、ブラフマーが気にいるのも分かる…

ティーターンは手を開き、口に入れたはずの石を侑に返した。

「では、本題に入る。」

「本来なら、儂からもスキルを3つお主に渡す筈だったがお主の貰ったスキルがあれば、儂からのスキルは不要であろう。」

「なので、儂からはミチルにスキルを一つとお主に魔導具を一つ渡そうと思っているのだが如何か?」
…ブラフマーはやり過ぎだ、儂の立場というものを分かっていない…
文句を言いながら、侑に提案した。

侑はティーターンからの提案を喜んで受けた。

「ミチルには毎朝ランダムに一つずつ石が産めるスキル(ガチャ)
お主にはこの砂時計を渡すとしよう。
この砂時計は自分以外の時間を遅らせるスキルを発動する事が出来る魔導具である。」
スキルと魔導具を説明すると
「お主はラーニングを持っているな?ガチャは覚えられんぞ、オスだからな」
と笑った。

「お主はこの後、儂の治める国で生活してもらう。
あくまでもスタート地点と考えて、他の国に移動してもらっても構わぬ。
ブラフマーから言われておるだろうが、お主は好きに生きれば良い。」
侑には自由に旅をして欲しかったので、わざと突き放した言い方をした。

「ただ、旅立つ前に試験をひとつ受けてもらうぞ。」
ティーターンは侑に課題を出した。






しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

余りモノ異世界人の自由生活~勇者じゃないので勝手にやらせてもらいます~

藤森フクロウ
ファンタジー
 相良真一(サガラシンイチ)は社畜ブラックの企業戦士だった。  悪夢のような連勤を乗り越え、漸く帰れるとバスに乗り込んだらまさかの異世界転移。  そこには土下座する幼女女神がいた。 『ごめんなさあああい!!!』  最初っからギャン泣きクライマックス。  社畜が呼び出した国からサクッと逃げ出し、自由を求めて旅立ちます。  真一からシンに名前を改め、別の国に移り住みスローライフ……と思ったら馬鹿王子の世話をする羽目になったり、狩りや採取に精を出したり、馬鹿王子に暴言を吐いたり、冒険者ランクを上げたり、女神の愚痴を聞いたり、馬鹿王子を躾けたり、社会貢献したり……  そんなまったり異世界生活がはじまる――かも?    ブックマーク30000件突破ありがとうございます!!   第13回ファンタジー小説大賞にて、特別賞を頂き書籍化しております。  ♦お知らせ♦  余りモノ異世界人の自由生活、コミックス3巻が発売しました!  漫画は村松麻由先生が担当してくださっています。  よかったらお手に取っていただければ幸いです。    書籍のイラストは万冬しま先生が担当してくださっています。  7巻は6月17日に発送です。地域によって異なりますが、早ければ当日夕方、遅くても2~3日後に書店にお届けになるかと思います。  今回は夏休み帰郷編、ちょっとバトル入りです。  コミカライズの連載は毎月第二水曜に更新となります。  漫画は村松麻由先生が担当してくださいます。  ※基本予約投稿が多いです。  たまに失敗してトチ狂ったことになっています。  原稿作業中は、不規則になったり更新が遅れる可能性があります。  現在原稿作業と、私生活のいろいろで感想にはお返事しておりません。  

森に捨てられた俺、転生特典【重力】で世界最強~森を出て自由に世界を旅しよう! 貴族とか王族とか絡んでくるけど暴力、脅しで解決です!~

WING/空埼 裕@書籍発売中
ファンタジー
 事故で死んで異世界に転生した。 十年後に親によって俺、テオは奴隷商に売られた。  三年後、奴隷商で売れ残った俺は廃棄処分と称されて魔物がひしめく『魔の森』に捨てられてしまう。  強力な魔物が日夜縄張り争いをする中、俺も生き抜くために神様から貰った転生特典の【重力】を使って魔物を倒してレベルを上げる日々。  そして五年後、ラスボスらしき美女、エイシアスを仲間にして、レベルがカンスト俺たちは森を出ることに。  色々と不幸に遇った主人公が、自由気ままに世界を旅して貴族とか王族とか絡んでくるが暴力と脅しで解決してしまう! 「自由ってのは、力で手に入れるものだろ? だから俺は遠慮しない」  運命に裏切られた少年が、暴力と脅迫で世界をねじ伏せる! 不遇から始まる、最強無双の異世界冒険譚! ◇9/23 HOTランキング(男性向け)2位 ◇9/24 ファンタジー6位

お父さんがゆく異世界旅物語

はなまる
ファンタジー
 この小説は、常識も良識もある普通のお父さんが、転移という不思議現象と、獣の耳と尻尾を持つ人たちの世界で、真っ向勝負で戦うお話です。  武器は誠実さと、家族への愛情。  それが、取るに足りない、つまらないものだと思うなら、ぜひ、このお話を読んでもらいたい。  戦う相手がモンスターでなくとも、武器が聖剣でなくても、世界を救う戦いでなくても。  地球という舞台で、今日も色々なものと戦うお父さんと同じように、主人公は戦います。  全てのお父さんとお母さん、そして君に、この物語を贈ります。 2019年、3月7日完結しました。  本作は「小説家になろう」にて連載中の「おとうさんと一緒〜子連れ異世界旅日記〜」を大幅に改稿・加筆したものです。同じものを「小説家になろう」にも投稿しています。

もふもふ大好き家族が聖女召喚に巻き込まれる~時空神様からの気まぐれギフト スキル『ルーム』で家族と愛犬守ります~

鐘ケ江 しのぶ
ファンタジー
 第15回ファンタジー大賞、奨励賞頂きました。  投票していただいた皆さん、ありがとうございます。  励みになりましたので、感想欄は受け付けのままにします。基本的には返信しませんので、ご了承ください。 「あんたいいかげんにせんねっ」  異世界にある大国ディレナスの王子が聖女召喚を行った。呼ばれたのは聖女の称号をもつ華憐と、派手な母親と、華憐の弟と妹。テンプレートのように巻き込まれたのは、聖女華憐に散々迷惑をかけられてきた、水澤一家。  ディレナスの大臣の1人が申し訳ないからと、世話をしてくれるが、絶対にあの華憐が何かやらかすに決まっている。一番の被害者である水澤家長女優衣には、新種のスキルが異世界転移特典のようにあった。『ルーム』だ。  一緒に巻き込まれた両親と弟にもそれぞれスキルがあるが、優衣のスキルだけ異質に思えた。だが、当人はこれでどうにかして、家族と溺愛している愛犬花を守れないかと思う。  まずは、聖女となった華憐から逃げることだ。  聖女召喚に巻き込まれた4人家族+愛犬の、のんびりで、もふもふな生活のつもりが……………    ゆるっと設定、方言がちらほら出ますので、読みにくい解釈しにくい箇所があるかと思いますが、ご了承頂けたら幸いです。

転生したら神だった。どうすんの?

埼玉ポテチ
ファンタジー
転生した先は何と神様、しかも他の神にお前は神じゃ無いと天界から追放されてしまった。僕はこれからどうすれば良いの? 人間界に落とされた神が天界に戻るのかはたまた、地上でスローライフを送るのか?ちょっと変わった異世界ファンタジーです。

最強の聖女は恋を知らない

三ツ矢
ファンタジー
救世主として異世界に召喚されたので、チートに頼らずコツコツとステ上げをしてきたマヤ。しかし、国を救うためには運命の相手候補との愛を育まなければならないとか聞いてません!運命の相手候補たちは四人の美少年。腹黒王子に冷徹眼鏡、卑屈な獣人と狡猾な後輩。性格も好感度も最低状態。残された期限は一年!?四人のイケメンたちに愛されながらも、マヤは国を、世界を、大切な人を守るため異世界を奔走する。 この物語は、いずれ最強の聖女となる倉木真弥が本当の恋に落ちるまでの物語である。 小説家になろうにの作品を改稿しております

剣豪エルフは弟子がほしい!

水母すい
ファンタジー
 ──拝啓、追放されました。  「剣士は二人もいらない」と、理不尽すぎる理由で冒険者パーティを追放された三流剣士の俺。受け入れてくれるパーティも働き口もなく果てにはギャンブルに手を染めていた俺だったが、あるときエルフの少女(?)に窮地を救われる。  そして、俺を助けた見返りとして彼女はこう言った。 「君、私の弟子になってくれない?」    行く宛てがない元剣士の俺と、ハイスペックで自由人すぎるエルフの彼女。そんな俺たちの奇妙すぎる二人旅は、彼女の暇つぶしから始まった⋯⋯。 *予告無しのタイトル変更あり *毎日更新がんばります

魔女の落とし子

月暈シボ
ファンタジー
あらすじ  神々が二つに別れて争った大戦から幾千年、人間達は様々な脅威に抗いながら世界に広がり繁栄していた。 主人公グリフはそんな時代に、自らの剣の腕を頼りに冒険者として生きることを選んだ若者である。 軍の任務を帯びたグリフは古来より禁断の地と知られる〝魔女の森〟で仲間を逃がすために奮闘し、瀕死の重傷を負う。 やがて、意識を取り戻したグリフは謎の館で銀髪の美少年に出会う。 カーシルと名乗った少年は自身が魔女の子であることをグリフに告げるのだった・・・。 戦闘シーンの描写に力を入れた本格的ファンタジー作品を心掛けています。 だいたい毎日更新。感想や意見は大歓迎です。どうぞよろしく!

処理中です...