上 下
7 / 22

7

しおりを挟む
「それで何TBのハードディスクを買うんだ?
今度のバージョンアップ用だろ?」
「ゲーム本体とNPCのパッチを合わせると15TB位は欲しいな。」
「ビデオカードとか、グラフィックボードはどうするんだ?」
「俺のPCはゲーミングPCだから、そのままで行けるんじゃね?」

はぁ、同じ人種だから雑把で伝わるから楽だ(笑)
結局、30TBを買っちまった。
値段はそんなに変わらないし、余裕があった方が良いと店員に押し付けられた。
普段なら、断わるんだが店員から知らない情報を貰っちまったからな。

どんな情報かって?
NPCのパッチはVRに対応する為の物だが、購入者にはNPCの声を作るソフトが同梱されるらしいんだ。
今までは声優の声だったが、今度のバージョンアップからはオリジナルの声でプレー出来る予定だと。

この情報はネットで公表されていないから、知らなかったし金を積んでも欲しい情報だ。
大袈裟じゃない、何故ならザッキーもハードディスクを買ってたからな。

さて、メイド喫茶はいつも通りの展開になったのでスルーするぞ。

会社に戻って課長に報告。

うちが食い込めるかは試作品が出来ないと分からないと、話を有耶無耶に。

今日は定時で帰ろう、うんそうしよう。
仕事帰りに買おうと思っていたハードディスクも買ったし、真っ直ぐ帰るかな。

…そろそろマジで片付けしないと居場所が無くなりそうだしな。

「じゃ、お先に。」
俺は逃げる様に部屋から出ようとしたんだが。

「高城君、ご飯はいつ連れてってくれるの?」
「おぅ、有休明けな。」
この会話がまずかった。

「高城、有休取るのか?
有休までに溜まってる領収書の申請出せよ。」

「高城、見積もり今週中に頼むな。」

「リク、飯奢って。」
おいおい、帰さない気かよ。
最後のはいつもの事だから、スルー確定だが。

「今週中に片付けるから、今日は帰してくれ。
引っ越しの片付けしないとヤバイんだよ。」
俺は捨て台詞を吐いて、部屋を出た。

さあ、コンビニ寄って帰ろ。
澪にチャットして、いつもの弁当を買って。

〈おかえり〉
出迎えてくれる澪のこの声も、あと少しでお別れかな。
折角だから、オリジナルにしたいしな。

〈〈ピッ、ピッ、ピッ〉〉

「ただいま。」
やべーっ、感慨に耽っていたらセキュリティー解除するの忘れてたよ。

弁当食って片付けするかな。

「やっとどうにかなったな。
あとはコイツ木箱だけだな。
大体、木箱って何ゴミだよ。」
とりあえず縛っておくか。
冷蔵庫を開けてビールを出した。

テーブルに置くとスマホが着信を教えてる。
「ったく誰だよ。」
俺はスマホを手に取った。
今のスマホはすげーな。
持つと指紋で勝手に認証してくれるんだから。
こいつの前はドットをなぞって解除だったから、間違えるし忘れるしでメンドーだったな。

画面を上からスワイプしてお知らせ一覧を見る。
着信じゃねーし。
TSSOからのメールかよ。
メールを開くと毎度の〈アップグレードまであと4日ご予約受付中〉
…とっくにしたっつーの。
下からスワイプして新しい情報公開を探す。

「まじか!」
パソコンショップの店員よりも貴重な情報が公開されてるし。
〈アップグレード後はVR化に伴い、プライベートルーム機能を実装します。
NPCには最先端AI人工知能に加えて、AC人工意識を実装します。
ACによりルーム内ではNPCとのボイスチャットが可能になります。
NPCは話す事で学習し、性格を作り出しますので自分好みの性格にする事が可能です。〉

「おいおい、TSSOはどこに向かってんだ?
アクションゲームだろ?」
俺は嬉しいけどね。

いやー、1週間の有休を取っておいて正解だったな。
いや、1週間で足りるか?

ま、足りなきゃ病気にでもなるか(笑)


で、ビール片手に一通り読んだが声がオリジナルになるくだりが一切無い。
やっべ、騙されたかな…
それとも出し惜しみか?
今の声も気に入ってるからいいけどね。

それより気になる事が出てきたぞ。
VR化した後のNPCのカスタマイズはどうなるんだ?
平面から立体に変わるという事はだな、ペッタンコからボインボインに変わるって事だ。
今の仕様は若干の陰影で立体っぽく見せてるが、今度はチョー立体だ。
果たしてスマホのアプリは対応出来るのか?

…いや、無理だろう。

タブレットも怪しいな。

パソコンのみとなると、仕事に行く以外は引き篭もり確定って事だな。
それはやばいぞ、一応彼女(リアルのな)も欲しいし…

…まぁ、新しい情報公開まで様子見だな。

しおりを挟む

処理中です...