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第三章、夜伽ってなんだろう。

十四

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「わ、わかりません、そういうのは経験がなくて……お二人は、やっぱりありますか? そんなに綺麗でスタイルもよかったら、恋人の一人や二人……」

 あたしから見てもこんなに綺麗なら、きっと男性は放っておかないだろうと思った。
 だけど、あたしの質問に、雹華さんは少し困った顔をしている。

「私たちは恋などできる立場にありませんので。個人の気持ちよりも任務優先なのですよ」
「そーそー、だから私たちが恋愛に没頭できるなんて、夢のまた夢なんですよー」

 腕を胸の高さまで上げ、両手のひらを返す雷華さんは、あきらめと拗ねが混じった様子で言った。
 呉の二人は、皇帝様に仕える血筋だからか、いろんな制約があるみたいだ。
 こんなに綺麗なのに、恋愛禁止だなんて、かわいそうというか、もったいない気がする。
 二人はそれに仕方なく従っているといった感じだ。じゃないと雹華さんみたいに切ない顔はしないだろうし、雷華さんみたいに残念そうな顔はしないと思う。

「あ、じゃあ、好きな人はいるの……?」

 二人の様子から察したことを聞くと、雹華さんも雷華さんも、今までで一番驚いた顔をした。
 ――あ、これはたぶん、聞いちゃいけないやつだった。
 そう思ったあたしは、すぐに謝ることにした。

「ごめんなさい、余計なことを聞いてしまって」

 あたしの謝罪を聞くと、二人は困ったように微笑んだ。
 雹華さんも雷華さんもいい人だ。
 まだ出会ったばかりだけど、少なくとも今まであたしの周りにいた人とは違う。
 二人にこれから、いいことがありますように。

「二人とも、心配してくれてありがとう。とりあえずあたしにできるだけのことをやってみます」

 そう宣言した途端、雷華さんが頬に両手を当ててプルプル震え出す。そしてあたしを思いっきり抱きしめた。
 すると雷華さんの胸にあたしの口元が埋まって、ふわふわして柔らかくて、女同士なのにドキドキしてしまった。花のような、すごくいい匂いがする。

「んもーっ、ピケ様ったら健気すぎー! これから陛下に無体されると思うと我慢ならないわー!」
「む、無体……?」
「コラ、雷華、怖がらせるようなこと言わないの!」

 無体の意味を考える前に、雹華さんの注意が飛んできた。
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