上 下
88 / 142
あふれる想い

8

しおりを挟む
「う、うわあああ、す、すごいっ……! 本当に美汪ってなんでもできるんだね!?」
「飽きもせずよくそんなリアクションが取れるね」

 美汪はそう言いながら、手にした厚みのある本を穏花に差し出した。

「これは、何?」
「本当の歴史を記した書物だよ。主に僕ら吸血族のことについて書いてある。話好きのコーエンからもういろいろと聞いてはいるだろうけど、興味があるなら読んでみたら。それは日本語で書かれたやつだから……ああ、当然口外禁止の極秘資料だからね、クローゼットの奥にでもしまっておくんだね」
「えっ!? そ、そんな大事なもの私なんかに、いいの?」
「……いらないなら」
「いる! いります! 読まさせていただきます!!」
「まあ……君なら誰にも言わないだろうし」

 気のせいだろうか?
 美汪が少し気まずそうに目を逸らしたのは。
 先ほどの笑顔といい、たった今、大切にしている本を進んで貸してくれたことといい……もしかして美汪は、自分のことを嫌っていない? むしろ友好的に接してくれているのではないか? と、穏花の中で淡い期待が芽吹く。

「……僕の顔に何かついてる?」
「えっ!? あ、うううん!」

 無意識に美汪の横顔を見つめていた穏花は、指摘されると本を抱えたまま慌てふためいた。

「あ、な、なんていうか、美汪ってき、綺麗な顔してるよねぇ!? と思って、あはは!」
「……はあ? 鏡なんか滅多に見ないから知らないけど」
「そ、そうなんだ!? みちるも美人だけど、また系統が違うかなぁなんて、そうそう、圭太とはまったく違うよね!?」

 この気持ちを誤魔化そうと必死に並べた無駄口が、穏花自身を追い詰める墓穴を掘ることとなる。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

勝負に勝ったので委員長におっぱいを見せてもらった

矢木羽研
青春
優等生の委員長と「勝ったほうが言うことを聞く」という賭けをしたので、「おっぱい見せて」と頼んでみたら……青春寸止めストーリー。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...