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棘病

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 昼食を早々と済ませると、穏花とみちるは体育館の裏手に茂った緑葉の木の根元に隠れるように身を寄せ腰を下ろしていた。

「どうしたの、話って……?」
「う、うん、あのね……」

 穏花はスカートのポケットに入れてきた“あれ”を取り出すと、一度深呼吸をし気持ちを落ち着かせてからみちるの前に提示した。
 
 白のクリップで留められた透明のビニール袋に入っている小さな花弁のようなそれを目にしたみちるは、当然何事かわからないといった表情で首を傾げた。

「……何これ、花弁?」
「……今日の朝ね……私の、口から出てきたの」

 穏花の言葉に、みちるは理解が及ばず一瞬怪訝とも言える顔をした。
 ――が、少し頭を捻らせれば、過去の記憶に思い当たる節があり、みちるはハッと目を見開くと穏花を見つめた。

「この、薔薇みたいな花弁を、吐いたってこと……?」

 穏花は無言で小さく頷いた。

「……ずいぶん前に、小学生の頃だったかな? 確かテレビで、奇病の話をやってた時に、見たような……」
「うん……私も、それが思い浮かんで……」
「ネットで調べたりした?」
「調べた……んだけど、怖くなって、途中でやめちゃった」
「……気持ちはわかるけど、事細かに調べなきゃ……」

 一気に重苦しい空気が二人を包んだ。
 みちるはスマートフォンを手にすると、気になるキーワードを入れ検索を始めた。
 すると、それほど数はないものの、ヒットする結果がいくつか現れた。

 みちるは怖がって詳細を見ようとしない穏花に代わり、関係がありそうな記事に素早く目を通していった。
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