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棘病
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背後を振り向くと、そこには栗色に近い明るい短髪をした少年が立っていた。穏花よりも十センチほど背の高いみちると同じくらいの身長である。
灰色のブレザーに濃紺のズボン、えんじ色のネクタイを緩めてつけた彼は今風の若者だった。
「はよっ、穏花! 何話してたんだ?」
「あ、お、おはよう、圭太! 別に何も、大したこと話してないよ」
「ふーん? 今日は弁当持って来るの忘れてねえだろうなぁ?」
「そんな毎日忘れないよ! ほら、ちゃんと……あれ?」
急いで学校指定の茶色い鞄内を手で探る穏花だったが、そこには筆記用具と教科書しか入っていなかった。
顔を青くして固まる穏花を見て、察した圭太は白い歯を見せて気持ちいいほどに笑った。
「ほんっと穏花は名前の通りのどかだよなぁ!」
「き、今日は仕方ないの!」
「え?」
「あ! え、ええと……寝不足で、ぼうっとしてて……」
「まあいいじゃん。後でまた俺の分けてやるからさ!」
「う、うん……」
この屈託のない笑顔を見せる山下圭太に、穏花は淡い恋心を抱いていた。
知り合ったのは高校に入ってから、明るい圭太は誰にでも分け隔てなく接し、穏花ともあっという間に仲良くなった。
今では物を忘れがちな穏花に、弁当のおかずまで分けてくれる仲だった。
「……早く付き合えばいいのに、じれったいったらないわ」
「や、やめてよみっちゃん! しーっ!」
ぼそりと呟くみちるに、穏花は慌てて口元に人差し指を立てて制する。
――と、予鈴が鳴る直前、教室に足を踏み入れた人物がいた。
灰色のブレザーに濃紺のズボン、えんじ色のネクタイを緩めてつけた彼は今風の若者だった。
「はよっ、穏花! 何話してたんだ?」
「あ、お、おはよう、圭太! 別に何も、大したこと話してないよ」
「ふーん? 今日は弁当持って来るの忘れてねえだろうなぁ?」
「そんな毎日忘れないよ! ほら、ちゃんと……あれ?」
急いで学校指定の茶色い鞄内を手で探る穏花だったが、そこには筆記用具と教科書しか入っていなかった。
顔を青くして固まる穏花を見て、察した圭太は白い歯を見せて気持ちいいほどに笑った。
「ほんっと穏花は名前の通りのどかだよなぁ!」
「き、今日は仕方ないの!」
「え?」
「あ! え、ええと……寝不足で、ぼうっとしてて……」
「まあいいじゃん。後でまた俺の分けてやるからさ!」
「う、うん……」
この屈託のない笑顔を見せる山下圭太に、穏花は淡い恋心を抱いていた。
知り合ったのは高校に入ってから、明るい圭太は誰にでも分け隔てなく接し、穏花ともあっという間に仲良くなった。
今では物を忘れがちな穏花に、弁当のおかずまで分けてくれる仲だった。
「……早く付き合えばいいのに、じれったいったらないわ」
「や、やめてよみっちゃん! しーっ!」
ぼそりと呟くみちるに、穏花は慌てて口元に人差し指を立てて制する。
――と、予鈴が鳴る直前、教室に足を踏み入れた人物がいた。
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