蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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とこしえの恋路

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 狐雲が消えた後、蛇珀はいろりの待つ寝室へ向かった。
 柔らかな暖色系の明かりに照らされた栗色の畳の上。蛇珀は胡座をかき、いろりはその後ろで正座をしながら蛇珀の長い髪を櫛でといていた。
 いろりは薄い桃色に白い花弁が散りばめられた模様の浴衣に身を包んでいた。
 広さは八畳ほどであろうか、二人で眠るには十分な広さのその場所には、いろりの身だしなみを整える道具が入った化粧台と、布団だけがあった。狐雲がお節介にも用意しておいた布団は、もちろん二組など野暮なことはしない。大きなものが一組だけである。

「毎日毎日、面倒じゃねえのか?」
「いいえ、まったく」
「……ならいいけどよ」

 蛇珀は照れくさそうにしながらも、いろりにされるがままになっている。
 毎晩お風呂上がりに蛇珀の長い髪をくのがいろりの日課となっていた。
 白銀色の髪は文句なしに美しかったが、黒髪にもまた黒髪にしか出せない艶やかな魅力がある。要するにいろりにとっては蛇珀ならなんでもよいのだ。

「……私もやっぱり、髪を伸ばそうかな」
「どうしてだ? この前切ったばかりだろ?」

 独り言のように呟いたいろりに、蛇珀が不思議そうに尋ねる。
 いろりは蛇珀と再会できるまで髪は切らない、と願掛けをして伸ばしていたのだが、無事に願いが叶ったため前と同じ肩上の長さまで切っていた。
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