蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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とこしえの恋路

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「……そりゃあいい話を聞いたな」
「次に二つ目のよい話だが、老化についてである」
「……老化?」
「ああ、私は人になっておる間もほぼ容姿に変化がなかった。故にそなたも同じであろう」
「俺たちは神力が残ってるからだろ? ならいろりは人間だから普通に歳を取るよな?」
「それはそなた次第である。私は毎夜のように華乃を愛しておったが……精神面の話ではないぞ、肉体的な愛のことである」
「わ、わかってるっつうの!!」
「華乃は百近くまで命をまっとうしたが、その美貌は二十辺りから変化がなかった。故によい意味で世間からあやかしのようだと言われておった。恐らく私と情を交わしたことで神力が華乃にも移り、外見の老化を防いだのであろう」
「……それは、つまり」
「そなたがいろりを愛すれば愛するほど、いろりはあの可憐な見目を生涯に渡って保つことが可能ということである」

 蛇珀は衝撃を受けた後、静かに喜んだ。
 例えいろりが深い皺を刻んだ老婆になろうとも愛する自信はあったが、神である自分だけが若く、いろりだけが老ければ彼女がそれを気にするのではと思っていたからだ。

「神も悪いことばかりじゃねえんだな」
「三つ目のよい話は、まさに神でよかったと実感することであるぞ。先ほどの話にちと付随するが、神と人との情交は禁忌とされているだけあり、人間の男とするそれの比ではない。いろりはそなたを知ることでおなごとして至極の悦びを得るであろう」

 狐雲が何を言っているかすぐに理解できず、しばし目を丸くして思考を巡らせていた蛇珀だったが、結論に至ると頭から湯気が出そうであった。
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