164 / 182
とこしえの恋路
22
しおりを挟む
「……そりゃあいい話を聞いたな」
「次に二つ目のよい話だが、老化についてである」
「……老化?」
「ああ、私は人になっておる間もほぼ容姿に変化がなかった。故にそなたも同じであろう」
「俺たちは神力が残ってるからだろ? ならいろりは人間だから普通に歳を取るよな?」
「それはそなた次第である。私は毎夜のように華乃を愛しておったが……精神面の話ではないぞ、肉体的な愛のことである」
「わ、わかってるっつうの!!」
「華乃は百近くまで命をまっとうしたが、その美貌は二十辺りから変化がなかった。故によい意味で世間からあやかしのようだと言われておった。恐らく私と情を交わしたことで神力が華乃にも移り、外見の老化を防いだのであろう」
「……それは、つまり」
「そなたがいろりを愛すれば愛するほど、いろりはあの可憐な見目を生涯に渡って保つことが可能ということである」
蛇珀は衝撃を受けた後、静かに喜んだ。
例えいろりが深い皺を刻んだ老婆になろうとも愛する自信はあったが、神である自分だけが若く、いろりだけが老ければ彼女がそれを気にするのではと思っていたからだ。
「神も悪いことばかりじゃねえんだな」
「三つ目のよい話は、まさに神でよかったと実感することであるぞ。先ほどの話にちと付随するが、神と人との情交は禁忌とされているだけあり、人間の男とするそれの比ではない。いろりはそなたを知ることでおなごとして至極の悦びを得るであろう」
狐雲が何を言っているかすぐに理解できず、しばし目を丸くして思考を巡らせていた蛇珀だったが、結論に至ると頭から湯気が出そうであった。
「次に二つ目のよい話だが、老化についてである」
「……老化?」
「ああ、私は人になっておる間もほぼ容姿に変化がなかった。故にそなたも同じであろう」
「俺たちは神力が残ってるからだろ? ならいろりは人間だから普通に歳を取るよな?」
「それはそなた次第である。私は毎夜のように華乃を愛しておったが……精神面の話ではないぞ、肉体的な愛のことである」
「わ、わかってるっつうの!!」
「華乃は百近くまで命をまっとうしたが、その美貌は二十辺りから変化がなかった。故によい意味で世間からあやかしのようだと言われておった。恐らく私と情を交わしたことで神力が華乃にも移り、外見の老化を防いだのであろう」
「……それは、つまり」
「そなたがいろりを愛すれば愛するほど、いろりはあの可憐な見目を生涯に渡って保つことが可能ということである」
蛇珀は衝撃を受けた後、静かに喜んだ。
例えいろりが深い皺を刻んだ老婆になろうとも愛する自信はあったが、神である自分だけが若く、いろりだけが老ければ彼女がそれを気にするのではと思っていたからだ。
「神も悪いことばかりじゃねえんだな」
「三つ目のよい話は、まさに神でよかったと実感することであるぞ。先ほどの話にちと付随するが、神と人との情交は禁忌とされているだけあり、人間の男とするそれの比ではない。いろりはそなたを知ることでおなごとして至極の悦びを得るであろう」
狐雲が何を言っているかすぐに理解できず、しばし目を丸くして思考を巡らせていた蛇珀だったが、結論に至ると頭から湯気が出そうであった。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
あまりさんののっぴきならない事情
菱沼あゆ
キャラ文芸
強引に見合い結婚させられそうになって家出し、憧れのカフェでバイトを始めた、あまり。
充実した日々を送っていた彼女の前に、驚くような美形の客、犬塚海里《いぬづか かいり》が現れた。
「何故、こんなところに居る? 南条あまり」
「……嫌な人と結婚させられそうになって、家を出たからです」
「それ、俺だろ」
そーですね……。
カフェ店員となったお嬢様、あまりと常連客となった元見合い相手、海里の日常。
前略、旦那様……幼馴染と幸せにお過ごし下さい【完結】
迷い人
恋愛
私、シア・エムリスは英知の塔で知識を蓄えた、賢者。
ある日、賢者の天敵に襲われたところを、人獣族のランディに救われ一目惚れ。
自らの有能さを盾に婚姻をしたのだけど……夫であるはずのランディは、私よりも幼馴染が大切らしい。
「だから、王様!! この婚姻無効にしてください!!」
「My天使の願いなら仕方ないなぁ~(*´ω`*)」
※表現には実際と違う場合があります。
そうして、私は婚姻が完全に成立する前に、離婚を成立させたのだったのだけど……。
私を可愛がる国王夫婦は、私を妻に迎えた者に国を譲ると言い出すのだった。
※AIイラスト、キャラ紹介、裏設定を『作品のオマケ』で掲載しています。
※私の我儘で、イチャイチャどまりのR18→R15への変更になりました。 ごめんなさい。
あやかし雑草カフェ社員寮 ~社長、離婚してくださいっ!~
菱沼あゆ
キャラ文芸
令和のはじめ。
めでたいはずの10連休を目前に仕事をクビになった、のどか。
同期と呑んだくれていたのだが、目を覚ますと、そこは見知らぬ会社のロビーで。
酔った弾みで、イケメンだが、ちょっと苦手な取引先の社長、成瀬貴弘とうっかり婚姻届を出してしまっていた。
休み明けまでは正式に受理されないと聞いたのどかは、10連休中になんとか婚姻届を撤回してもらおうと頑張る。
職だけでなく、住む場所も失っていたのどかに、貴弘は住まいを提供してくれるが、そこは草ぼうぼうの庭がある一軒家で。
おまけにイケメンのあやかしまで住んでいた。
庭にあふれる雑草を使い、雑草カフェをやろうと思うのどかだったが――。
名古屋錦町のあやかし料亭〜元あの世の獄卒猫の○○ごはん~
櫛田こころ
キャラ文芸
名古屋は錦町。
歓楽街で賑わうその街中には、裏通りが数多くある。その通りを越えれば、妖怪変幻や神々の行き交う世界───通称・『界隈』と呼ばれる特別な空間へと足を運べてしまう。
だがそこは、飲食店や風俗店などが賑わうのは『あやかし』達も変わらず。そして、それらが雑居するとあるビルの一階にその店はあった。数名のカウンター席に、一組ほどの広さしかない座敷席のみの小料理屋。そこには、ちょっとした秘密がある。
店主が望んだ魂の片鱗とも言える『心の欠片』を引き出す客には、店主の本当の姿──猫の顔が見えてしまうのだ。
これは元地獄の補佐官だった猫が経営する、名古屋の小料理屋さんのお話。地獄出身だからって、人間は食べませんよ?
白の甘美な恩返し 〜妖花は偏に、お憑かれ少女を護りたい。〜
魚澄 住
キャラ文芸
それは、持て余すほどに甘く、切ない恩返し——。
憑依体質に侵されている齢十七の岬は、たった一つの居場所であった母を失い、あの世へ逝くことを望んでいた。
「(私はもう……生きる理由なんてないんだよ)」
「阿呆、勝手に逝くな」
しかし、突如現れた怪しげな男はそれを許さない。見目麗しいその男は、母と育てていた鈴蘭の化身・厘。“妖花“ という名のあやかしだった。
厘の使命は、憑依によって削られていく精気を「キス」で注ぎ、岬の命をつなぎとめること。
「もう、失いたくない」
そして、ぶっきら棒で庇護欲溢れるあやかしと暮らすうち、岬は生きる意味を取り戻していく。しかし、憑依に係るトラブルは次第に厄介なものへと変化していき——。
生きる意味を失った少女と、"恩返し"に勤しむあやかし。憑依の謎に迫りながら繰り広げる、絆と愛の物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる