蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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とこしえの恋路

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「そ、そうね! あの神社の神主さんは見たことがなかったわ、あなたがしていたなんて。私もよく参拝に行っていたのよ」
「え、お母さんが?」
「ええ、仕事帰りにね、いろりが生まれてからほとんど毎日よ。あなたの……目がよくなるようにと、いい人に出逢えますように、ってね、ふふ」
「……そうだったんだ。知らなかった」
「でも、まさか本当にこんなことが起きるなんて、ご利益があったのかしらねぇ」

 普通ならどこで知り合ったのか、本当にうちの娘を幸せにできるのか、などまだまだ質問が有るだろうが、さゆりは問い正すようなことはしなかった。

「二人の結婚を認めます」

 さゆりは二人に天真爛漫な笑みを向けながら、当然のようにそう言った。
 あまりの快諾に蛇珀といろりは口を開け顔を見合わせた。

「ほ、本当に、いいの?」
「だって、蛇珀君といるあなた、とっても楽しそうなんだもの。早い結婚はよくないと言う人もいるけれど、私は年齢は関係ないと思うわ。運命の人に出逢った、その時がタイミングだと思うもの」

 そして穏やかな笑みの後、さゆりは少しだけ神妙な面持ちを蛇珀に向けた。

「蛇珀君、一つだけお願いしたいの。いろりはね、ついこの間まで目が見えなかったわ。だから、これからは今までできなかったことをさせてあげたいの。私が言うのもなんだけど、いろりは頭もいいから大学にだって行かせてあげたいし、やりたい仕事があるならそれに就いてもらいたい。お嫁さんとしてだけじゃなく、一人の人間として、いろりの人格を尊重してあげてほしいわ」
「お母さん……」

 それは大切に育てて来た娘が幸せになるための母の願いだった。
 蛇珀はそれをしかと聞き届けた。
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