蛇に祈りを捧げたら。

碧野葉菜

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仙界

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「神が消えるには三つ理由がある。一つは願い聞きを怠って寿命が尽きる。二つは神の領域を侵す。三つは、自分よりも優秀な後継が生まれる」
「こう、けい……?」
「自分が司る域の新しい神のことだ。つまり俺は地を司る神だから、俺より優秀な地の神が生まれたら、って話だ。人間でいう世代交代みたいなもんだろ」
「そう……なんですか」

 ただでさえ小さな身体を丸め縮こめるいろりの肩を、蛇珀は優しく抱き寄せた。

「安心しろ。俺より優秀な神なんか生まれるわけねえからな」

 甘やかすような柔らかな声。
 無駄のない逞しい胸板に頬を寄せながら聞いた心音は、確かに人のそれと変わりないと感じられるのに。

 なぜ蛇珀は神で、自身は無力なただの人なのだろう、と……いろりは思わずにはいられなかった。

「拳豪は二つ目の理由で消えたに違いねえ」
「結ばれなかった……ということですよね?」
「だろうな。何かやっちゃいけねえことをやったんだ。……だが狐雲の奴は生きてる。こいつらの違いが何かわかんねえが、必ずうまくいく方法があるはずだ」

 蛇珀は必死にいろりと結ばれる方法を模索していた。
 その姿にいろりが心打たれぬはずがない。
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