25 / 158
求婚ナルシスト
13
しおりを挟む
閻火は椅子に座ったものの、落ち着かない様子で首を右往左往させていた。
どうやら喫茶店は初めてらしく、なにをすればいいかわからないらしい。
閻火と対面する形でテーブルの前に立ち止まると、椅子のカバーと同じワインレッド色のメニューを差し出した。
「これに載ってるのが商品だから、好きなやつを選んでってことですよ。そしたらそれを出しますから」
閻火はテーブルに置かれた長四角の表紙を開くと、ぱらぱらとめくって目を通していく。
しかし顔を顰めて腕を組むだけで、一向に注文は決まらない。
鬼のくせに優柔不断なのだろうか?
疑念が浮かび上がるけれど、それを払拭したのは閻火の次の言葉だった。
「読みにくい、どんな品物かわからん」
「えっ」と心の声を漏らすと、急いで閻火の後ろに回りメニューを覗き込む。
広い肩越しに見えた厚紙に印刷された文字は、確かにやや小さいかもしれない。
「このにょろにょろとふざけた字はなんだ?」
閻火が言っているのは妙に崩れた字体のことだろう。
おばあちゃんの時は丸字やゴシック体が基本で、これでは芸がないかなと思った私が、ラグジュアリーな雰囲気を出そうと変えたのだ。
だけど確かに落ち着いて見てみれば……読みやすい、とは言いにくいような。
「別にふざけてるわけじゃありません、高級感を出してみようかと」
その台詞に閻火はわざとらしく、くくっと笑った。
「この店でか? 盛大に迷走しているようだな」
いちいちカチンとくることを言われるけれど、一考する余地はあった。
この店の主な客層は、年配か小さな子連れ。
SNS映えするおしゃれで豪華なカフェを求める若者は、みんな都心部に行ってしまう。
そろそろ老眼が始まろうかという年代や、ひらがなの読み書きに慣れてきた子供たちには優しくない注文表だ。
昔からの固定客はメニューを見ずに注文する人がほとんどなので、写真の掲載を考えたことがなかった。
初めて来たお客様にはこれまたよろしくない仕様な気がしてきた。
見た目にこだわるよりも、もっとわかりやすさを追求した方がいいかもしれない。
どうやら喫茶店は初めてらしく、なにをすればいいかわからないらしい。
閻火と対面する形でテーブルの前に立ち止まると、椅子のカバーと同じワインレッド色のメニューを差し出した。
「これに載ってるのが商品だから、好きなやつを選んでってことですよ。そしたらそれを出しますから」
閻火はテーブルに置かれた長四角の表紙を開くと、ぱらぱらとめくって目を通していく。
しかし顔を顰めて腕を組むだけで、一向に注文は決まらない。
鬼のくせに優柔不断なのだろうか?
疑念が浮かび上がるけれど、それを払拭したのは閻火の次の言葉だった。
「読みにくい、どんな品物かわからん」
「えっ」と心の声を漏らすと、急いで閻火の後ろに回りメニューを覗き込む。
広い肩越しに見えた厚紙に印刷された文字は、確かにやや小さいかもしれない。
「このにょろにょろとふざけた字はなんだ?」
閻火が言っているのは妙に崩れた字体のことだろう。
おばあちゃんの時は丸字やゴシック体が基本で、これでは芸がないかなと思った私が、ラグジュアリーな雰囲気を出そうと変えたのだ。
だけど確かに落ち着いて見てみれば……読みやすい、とは言いにくいような。
「別にふざけてるわけじゃありません、高級感を出してみようかと」
その台詞に閻火はわざとらしく、くくっと笑った。
「この店でか? 盛大に迷走しているようだな」
いちいちカチンとくることを言われるけれど、一考する余地はあった。
この店の主な客層は、年配か小さな子連れ。
SNS映えするおしゃれで豪華なカフェを求める若者は、みんな都心部に行ってしまう。
そろそろ老眼が始まろうかという年代や、ひらがなの読み書きに慣れてきた子供たちには優しくない注文表だ。
昔からの固定客はメニューを見ずに注文する人がほとんどなので、写真の掲載を考えたことがなかった。
初めて来たお客様にはこれまたよろしくない仕様な気がしてきた。
見た目にこだわるよりも、もっとわかりやすさを追求した方がいいかもしれない。
0
お気に入りに追加
4
あなたにおすすめの小説
連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る
マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。
思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。
だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。
「ああ、抱きたい・・・」
【完結】捨ててください
仲 奈華 (nakanaka)
恋愛
ずっと貴方の側にいた。
でも、あの人と再会してから貴方は私ではなく、あの人を見つめるようになった。
分かっている。
貴方は私の事を愛していない。
私は貴方の側にいるだけで良かったのに。
貴方が、あの人の側へ行きたいと悩んでいる事が私に伝わってくる。
もういいの。
ありがとう貴方。
もう私の事は、、、
捨ててください。
続編投稿しました。
初回完結6月25日
第2回目完結7月18日
妻がエロくて死にそうです
菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。
美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。
こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。
それは……
限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常
お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・
マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」
義姉にそう言われてしまい、困っている。
「義父と寝るだなんて、そんなことは
そんなふうに見つめないで…デッサンのモデルになると義父はハイエナのように吸い付く。全身が熱くなる嫁の私。
マッキーの世界
大衆娯楽
義父の趣味は絵を描くこと。
自然を描いたり、人物像を描くことが好き。
「舞さん。一つ頼みがあるんだがね」と嫁の私に声をかけてきた。
「はい、なんでしょうか?」
「デッサンをしたいんだが、モデルになってくれないか?」
「え?私がですか?」
「ああ、
結婚前の彼の浮気相手がもう身籠っているってどういうこと?
ヘロディア
恋愛
一歳年上の恋人にプロポーズをされた主人公。
いよいよ結婚できる…と思っていたそのとき、彼女の家にお腹の大きくなった女性が現れた。
そして彼女は、彼との間に子どもができたと話し始めて、恋人と別れるように迫る。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる