君と命の呼吸

碧野葉菜

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5.ふたりで、ひとつ

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 病気は皆を不幸にすると、どの口が言えたのだろう。
 この親子を見ていると、そんな言葉はあまりに不似合いだった。
 短い間であっても、愛に溢れた時間を共有できた家族が不幸なはずがなかった。

「ありがとう海斗、私、もう怖くなんてない、海斗がいつも一緒だもん、必ず今より元気になって戻って来るから」
「うん……俺、待ってる、ひなのことだけ、待ってるから」
「うん」
「高校卒業したら、お嫁さんになって」

 海斗と出会ってから、何度身に余る幸福に自分の耳を疑っただろう。

 誠実な男らしさにせがむような甘さを残した海斗の瞳に、今までで最も幸せな私が映っていた。

「なる……!」

 絞り出すような答えを聞いた海斗は、みるみるうちに私の大好きな笑顔を溢れさせた。

「やった! ひな大好き!」

 人目も憚らず口づけられれば、海斗と呼吸が重なり合う。
 か細くも煌めく糸のような未来を、この人と一緒にたぐり寄せたい。
 一人でなく、二人なら、必ず明日が訪れると信じられた。
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