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3.夢の戯れ
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海斗のまだ未成熟ながらも男性を感じる手に導かれ、海に入る。
ひやりとするほど冷たくはないけれど、火照った肌を休めるにはちょうどいい、そんな温度の海水だった。
朝の波は穏やかで、足を取られるようなことはない。
それでも海斗はエスコートするように、優しく、大事に、手を繋いで足を進めてくれる。
今私は、普通の女の子でいる。
病気だから、腫れ物のように扱われているのではなく、海斗の純粋な好意が嬉しかった。
「ひな、下、見て」
海斗に言われるがまま、視線を下ろす。
するとそこに広がる光景に、目を奪われた。
膝までしか浸からない浅瀬でも、鮮やかな色をした多種多様な魚たちが泳いでいるのがわかる。
とても私の視界には収まりきれない、際限なく広がる水中を自由に遊泳する姿に、今までにない興奮を覚えた。
家にある水槽や、動画や写真で見るのとは違う。
大自然の中にある、本物の水の世界だ。
「す、すごい、綺麗……!」
「触ってみる? こいつらは悪さしねえから大丈夫だぞ」
海斗に誘われ、心拍数を上げながらゆっくりと膝を折り曲げた。
そして海斗と繋いでいない方の手を、やや前傾姿勢でそっと水中に潜らせた。
すると、魚たちは一瞬驚いたように機敏に逃げ惑ったけれど、しばらくすると私の手を餌か植物と間違えているのか、つんつん突いたり寄りつく姿が見られた。
「わ、可愛い……!」
「ひなが嬉しそうでよかった、ここの取り柄なんか海くらいだからな」
喜ぶ私を見て、一緒にしゃがんだ海斗が独り言のように小さく口にした。
「……海斗は、都会に出たいとか、思う?」
「いいや、それは全然。東京とか大阪に行っちまう連中も多いし、人の自由だからいいと思うけど……俺はなんだかんだ、ここが好きだからさ。早いとこ自分の船持って、一人前の漁師になりたい」
大袈裟に語るのではなく、ごく自然に現実的な夢を紡ぐ海斗。
生まれ育った町の暮らしを当然としている彼は、一途な恋心を思わせた。
ひやりとするほど冷たくはないけれど、火照った肌を休めるにはちょうどいい、そんな温度の海水だった。
朝の波は穏やかで、足を取られるようなことはない。
それでも海斗はエスコートするように、優しく、大事に、手を繋いで足を進めてくれる。
今私は、普通の女の子でいる。
病気だから、腫れ物のように扱われているのではなく、海斗の純粋な好意が嬉しかった。
「ひな、下、見て」
海斗に言われるがまま、視線を下ろす。
するとそこに広がる光景に、目を奪われた。
膝までしか浸からない浅瀬でも、鮮やかな色をした多種多様な魚たちが泳いでいるのがわかる。
とても私の視界には収まりきれない、際限なく広がる水中を自由に遊泳する姿に、今までにない興奮を覚えた。
家にある水槽や、動画や写真で見るのとは違う。
大自然の中にある、本物の水の世界だ。
「す、すごい、綺麗……!」
「触ってみる? こいつらは悪さしねえから大丈夫だぞ」
海斗に誘われ、心拍数を上げながらゆっくりと膝を折り曲げた。
そして海斗と繋いでいない方の手を、やや前傾姿勢でそっと水中に潜らせた。
すると、魚たちは一瞬驚いたように機敏に逃げ惑ったけれど、しばらくすると私の手を餌か植物と間違えているのか、つんつん突いたり寄りつく姿が見られた。
「わ、可愛い……!」
「ひなが嬉しそうでよかった、ここの取り柄なんか海くらいだからな」
喜ぶ私を見て、一緒にしゃがんだ海斗が独り言のように小さく口にした。
「……海斗は、都会に出たいとか、思う?」
「いいや、それは全然。東京とか大阪に行っちまう連中も多いし、人の自由だからいいと思うけど……俺はなんだかんだ、ここが好きだからさ。早いとこ自分の船持って、一人前の漁師になりたい」
大袈裟に語るのではなく、ごく自然に現実的な夢を紡ぐ海斗。
生まれ育った町の暮らしを当然としている彼は、一途な恋心を思わせた。
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