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第六章、金色の庭を越えて。
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用意された場所は、老舗の懐石料理店の奥座敷だった。
悪役が捕まえられるには、ずいぶん不似合いな場所だと思いながら、清志郎は待った。
――悪は挫かれ、正義は必ず勝つというところを見せてくれ。
そこにやって来たのが、岸本幸蔵……あゆらの父だった。
さすがの清志郎も、これには驚いた。
この時清志郎は中学生で、まだあゆらと知り合う前だったが、政界の有名人である彼を知らないはずがなかったからだ。
幸蔵は、正座をし身を固くする清志郎の隣に腰を下ろすと、タバコに火をつけた。
そして徐に、こう口を開いた。
「清志郎くん、私と組まないか」
聞き間違いだと思い、大きな瞳を向ける清志郎に、幸蔵はにこやかに続けた。
「清志郎くん、きみは選ばれし人間だ。私たちと同じね」
「選ばれし、人間……?」
「私は国を動かしている、きみの父上は人を助けている。偉大なことをするには多くのストレスが伴う。捌け口が必要だろう? 政治のことも医療のことも何もわからぬ低俗な人間どもは、自ら学びもせず、行動もせずにくだらない非難ばかりをする。私たちが平穏を保つため、甘い蜜は必要なのだよ。そうでなければこんな仕事に就く物好きはいない。多くを救うために少ない犠牲は仕方ないということだ。きみはその若さにしてそれを理解している。素晴らしいことだ。人の価値は平等ではないのだから」
幸蔵はすべて知っていた。
清志郎の素性も調べ上げ、有名外科医である帝家の息子だとわかった上でここに呼んだ。
幸蔵は清志郎を諌めに来たのではない。
自分の縄張りで売春をさせていた清志郎に目をつけ、仲間に引き入れるために声をかけたのだ。
この瞬間、清志郎の光は綺麗さっぱり消え失せた。
「……はい、幸蔵さんの、言う通りに、します」
やはり、正義が勝利するのは作り話の世界だけなのだと悟った。
この世では、どんなに汚い手でも、繁栄を極めた者が正義になるのだと。
悪役が捕まえられるには、ずいぶん不似合いな場所だと思いながら、清志郎は待った。
――悪は挫かれ、正義は必ず勝つというところを見せてくれ。
そこにやって来たのが、岸本幸蔵……あゆらの父だった。
さすがの清志郎も、これには驚いた。
この時清志郎は中学生で、まだあゆらと知り合う前だったが、政界の有名人である彼を知らないはずがなかったからだ。
幸蔵は、正座をし身を固くする清志郎の隣に腰を下ろすと、タバコに火をつけた。
そして徐に、こう口を開いた。
「清志郎くん、私と組まないか」
聞き間違いだと思い、大きな瞳を向ける清志郎に、幸蔵はにこやかに続けた。
「清志郎くん、きみは選ばれし人間だ。私たちと同じね」
「選ばれし、人間……?」
「私は国を動かしている、きみの父上は人を助けている。偉大なことをするには多くのストレスが伴う。捌け口が必要だろう? 政治のことも医療のことも何もわからぬ低俗な人間どもは、自ら学びもせず、行動もせずにくだらない非難ばかりをする。私たちが平穏を保つため、甘い蜜は必要なのだよ。そうでなければこんな仕事に就く物好きはいない。多くを救うために少ない犠牲は仕方ないということだ。きみはその若さにしてそれを理解している。素晴らしいことだ。人の価値は平等ではないのだから」
幸蔵はすべて知っていた。
清志郎の素性も調べ上げ、有名外科医である帝家の息子だとわかった上でここに呼んだ。
幸蔵は清志郎を諌めに来たのではない。
自分の縄張りで売春をさせていた清志郎に目をつけ、仲間に引き入れるために声をかけたのだ。
この瞬間、清志郎の光は綺麗さっぱり消え失せた。
「……はい、幸蔵さんの、言う通りに、します」
やはり、正義が勝利するのは作り話の世界だけなのだと悟った。
この世では、どんなに汚い手でも、繁栄を極めた者が正義になるのだと。
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