125 / 228
第四章、愛は指先にのせて。
2
しおりを挟む
ふん、ふん、と鼻歌まじりにスキップをせんばかりの軽い足取り。
いつも大人っぽくしとやかと周りに言われてきたあゆらが、ここまで子供のようにはしゃぐのは初めてだった。
「楽しみのあまり早起きしてしまったわ、ほとんど眠れなかったし……」
遠足前夜の小学生並みに興奮して寝つきが悪かったあゆらは、口元に手を添え控えめにあくびをすると、ワンルームほどの広さを誇るウォークインクローゼットのドアを開け放した。
アパレルショップのように美しく整頓された洋服たちはハンガーにかけられズラリ並び、記念すべき今日という日に私を選んでと輝いている。
数えきれない上品で女性らしい衣類の中から、あゆらは目についたものを数点手にし、姿見の前で次々と合わせてゆく。
「これは少し派手すぎるかしら、遊園地だから動きやすくてあまり気取っていない方がいいわよね」
爽やかな寒色がいいか、女の子らしい暖色がいいか、スカートの丈は恥じらいを持って長めにするか、それとも思いきって短めにするか。髪は普段通り下ろして行くか、特別に結って行くか、だとしたら髪飾りはどれがいいか……。
買い物など何事も即決することが多いあゆらが、こればかりは相当悩み、時間をかけていた。
少しでも志鬼に可愛い、綺麗だと、思われたいが故の乙女心である。
いつも大人っぽくしとやかと周りに言われてきたあゆらが、ここまで子供のようにはしゃぐのは初めてだった。
「楽しみのあまり早起きしてしまったわ、ほとんど眠れなかったし……」
遠足前夜の小学生並みに興奮して寝つきが悪かったあゆらは、口元に手を添え控えめにあくびをすると、ワンルームほどの広さを誇るウォークインクローゼットのドアを開け放した。
アパレルショップのように美しく整頓された洋服たちはハンガーにかけられズラリ並び、記念すべき今日という日に私を選んでと輝いている。
数えきれない上品で女性らしい衣類の中から、あゆらは目についたものを数点手にし、姿見の前で次々と合わせてゆく。
「これは少し派手すぎるかしら、遊園地だから動きやすくてあまり気取っていない方がいいわよね」
爽やかな寒色がいいか、女の子らしい暖色がいいか、スカートの丈は恥じらいを持って長めにするか、それとも思いきって短めにするか。髪は普段通り下ろして行くか、特別に結って行くか、だとしたら髪飾りはどれがいいか……。
買い物など何事も即決することが多いあゆらが、こればかりは相当悩み、時間をかけていた。
少しでも志鬼に可愛い、綺麗だと、思われたいが故の乙女心である。
0
お気に入りに追加
0
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる