93 / 228
第三章、汚れた大人たち
14
しおりを挟む
「……なんかそれ、嬉しいな。あゆらにだけはいつでも見せたるわ」
そう言って志鬼は、一思いにアンダーシャツを脱ぎ払った。
するとそこに現れる、あの日屋上で見て以来の鬼の姿。彫った者と彫られた者、両者の覚悟のような強い思いを感じさせる刺青は、赤の他人に易々と見せられるものではないだろう。それでも自分には躊躇なく披露してくれる志鬼に、あゆらは胸の辺りがじんとした。
「……す、少し近くに行ってもいいかしら?」
「どーぞどーぞ。っていうか、さっきまでくっついてたやん」
待ってますと言わんばかりに、押し入れの前にあぐらをかいて陣取る志鬼に、あゆらは遠慮がちに近づいた。
以前見たのは背中だけだったので、こうして正面から志鬼の上半身を見るのは初めてである。
「……これって、どうやって作られているの?」
志鬼の腕一面、そして肩にまで及んだ桜吹雪をしげしげと見ながらあゆらが聞く。
「刃物で刺したり切ったりしながら墨入れるんやで」
「い、痛くないの? あ、麻酔をするのかしら?」
「する奴もおるけど俺はしてない。基本的にこれだけ痛みに耐えたっていう根性の証明やったりするからな。……まあ、俺の場合はケジメみたいなものやったから、痛みを消したら意味なくなるし」
「そう、なのね……」
“ケジメ”……一体何の?
あゆらは喉まで出かかったそんな質問を飲み込んだ。それを聞くのは、たぶん今ではない気がしたからだ。
そう言って志鬼は、一思いにアンダーシャツを脱ぎ払った。
するとそこに現れる、あの日屋上で見て以来の鬼の姿。彫った者と彫られた者、両者の覚悟のような強い思いを感じさせる刺青は、赤の他人に易々と見せられるものではないだろう。それでも自分には躊躇なく披露してくれる志鬼に、あゆらは胸の辺りがじんとした。
「……す、少し近くに行ってもいいかしら?」
「どーぞどーぞ。っていうか、さっきまでくっついてたやん」
待ってますと言わんばかりに、押し入れの前にあぐらをかいて陣取る志鬼に、あゆらは遠慮がちに近づいた。
以前見たのは背中だけだったので、こうして正面から志鬼の上半身を見るのは初めてである。
「……これって、どうやって作られているの?」
志鬼の腕一面、そして肩にまで及んだ桜吹雪をしげしげと見ながらあゆらが聞く。
「刃物で刺したり切ったりしながら墨入れるんやで」
「い、痛くないの? あ、麻酔をするのかしら?」
「する奴もおるけど俺はしてない。基本的にこれだけ痛みに耐えたっていう根性の証明やったりするからな。……まあ、俺の場合はケジメみたいなものやったから、痛みを消したら意味なくなるし」
「そう、なのね……」
“ケジメ”……一体何の?
あゆらは喉まで出かかったそんな質問を飲み込んだ。それを聞くのは、たぶん今ではない気がしたからだ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
【完結】偽りの告白とオレとキミの十日間リフレイン
カムナ リオ
青春
八神斗哉は、友人との悪ふざけで罰ゲームを実行することになる。内容を決めるカードを二枚引くと、そこには『クラスの女子に告白する』、『キスをする』と書かれており、地味で冴えないクラスメイト・如月心乃香に嘘告白を仕掛けることが決まる。
自分より格下だから彼女には何をしても許されると八神は思っていたが、徐々に距離が縮まり……重なる事のなかった二人の運命と不思議が交差する。不器用で残酷な青春タイムリープラブ。
PictureScroll 昼下がりのガンマン
薔薇美
青春
舞台は日本の温泉地にある西部開拓時代を模したテーマパーク『ウェスタン・タウン』。そこで催されるウェスタン・ショウのパフォーマーとタウンのキャストの群像劇。※人物紹介は飛ばして本編からでも大丈夫です。
拝啓、お姉さまへ
一華
青春
この春再婚したお母さんによって出来た、新しい家族
いつもにこにこのオトウサン
驚くくらいキレイなお姉さんの志奈さん
志奈さんは、突然妹になった私を本当に可愛がってくれるんだけど
私「柚鈴」は、一般的平均的なんです。
そんなに可愛がられるのは、想定外なんですが…?
「再婚」には正直戸惑い気味の私は
寮付きの高校に進学して
家族とは距離を置き、ゆっくり気持ちを整理するつもりだった。
なのに姉になる志奈さんはとっても「姉妹」したがる人で…
入学した高校は、都内屈指の進学校だけど、歴史ある女子校だからか
おかしな風習があった。
それは助言者制度。以前は姉妹制度と呼ばれていたそうで、上級生と下級生が一対一の関係での指導制度。
学園側に認められた助言者が、メンティと呼ばれる相手をペアを組む、柚鈴にとっては馴染みのない話。
そもそも義姉になる志奈さんは、そこの卒業生で
しかもなにやら有名人…?
どうやら想像していた高校生活とは少し違うものになりそうで、先々が思いやられるのだけど…
そんなこんなで、不器用な女の子が、毎日を自分なりに一生懸命過ごすお話しです
11月下旬より、小説家になろう、の方でも更新開始予定です
アルファポリスでの方が先行更新になります
夏と幽霊と裏切りもの
師走こなゆき
青春
生まれ故郷の田舎に帰ってきた女子高生(吉野紗衣)は、空き家に侵入する小学生くらいの少女(大淀日葵)と出会った。少女は「龍神様の花嫁」に会いに行くのだという。龍神様の花嫁に興味を持った吉野紗衣は少女について行くのだが…
※他サイトからの転載です
傷者部
ジャンマル
青春
高校二年生に上がった隈潟照史(くまがた あきと)は中学の時の幼なじみとのいざこざを未だに後悔として抱えていた。その時の後悔からあまり人と関わらなくなった照史だったが、二年に進学して最初の出席の時、三年生の緒方由紀(おがた ゆき)に傷者部という部活に入ることとなるーー
後悔を抱えた少年少女が一歩だけ未来にあゆみ出すための物語。
ネットで出会った最強ゲーマーは人見知りなコミュ障で俺だけに懐いてくる美少女でした
黒足袋
青春
インターネット上で†吸血鬼†を自称する最強ゲーマー・ヴァンピィ。
日向太陽はそんなヴァンピィとネット越しに交流する日々を楽しみながら、いつかリアルで会ってみたいと思っていた。
ある日彼はヴァンピィの正体が引きこもり不登校のクラスメイトの少女・月詠夜宵だと知ることになる。
人気コンシューマーゲームである魔法人形(マドール)の実力者として君臨し、ネットの世界で称賛されていた夜宵だが、リアルでは友達もおらず初対面の相手とまともに喋れない人見知りのコミュ障だった。
そんな夜宵はネット上で仲の良かった太陽にだけは心を開き、外の世界へ一緒に出かけようという彼の誘いを受け、不器用ながら交流を始めていく。
太陽も世間知らずで危なっかしい夜宵を守りながら二人の距離は徐々に近づいていく。
青春インターネットラブコメ! ここに開幕!
※表紙イラストは佐倉ツバメ様(@sakura_tsubame)に描いていただきました。
ロッキン・オン・ガールズライフ -第1章 ひきこもり幼馴染にノットデッドと叫んでやりたい-
たっくす憂斗
青春
真冬の季節。雪と雨が入りまじった荒れた日のこと。
軽音楽部に所属する俺七尾芳人は、部員仲間からお願いされた難題の曲をひたすら耳コピしていた。
すると突然、幼馴染の三次紗彩からメッセージの受信が…。
『今までありがとう。さよなら』
俺は、思わず目を疑った。
部員たちからの激励も受け、俺はすぐに、彼女の下に駆けつけた。
身体中に沢山の傷を負いながらも、紗彩を救いたい一心で、死に物狂いでひたすら駆け続けた。
—————俺は、絶対に助け出す。紗彩の心の闇を洗いざらい取っ払ってやる!
※この小説は他サイト(カクヨム)でも投稿しています。
美術部俺達
緋色刹那
青春
・第7回ライト文芸大賞エントリー中
・完結済み。番外編「First Grade」は過去話。
〈あらすじ〉
自由ノ星(じゆうのほし)高校美術部には三人の男子がいる。
創作レクリエーションマニア、成宮創介(なるみやそうすけ)。
アニメと漫画大好き、大城太志(おおしろたいし)。
マイナーアイドル狂い、音来響(おとぎきょう)。
三人は美術部でありながら絵を描かず、毎日ゆるっと創作レクリエーションに明け暮れていた。
そんな美術部に、廃部の危機が! マネージャーとして新たに加わった女子部員、麻根路屋 乙女(まねじや おとめ)の指導のもと、美術部らしい活動を仕方なくスタート。
が、彼らには自由に創作できない理由(トラウマ)があった。さらに、マネージャーにもある秘密が……。
バカバカしくも苦しみを抱えた、高校生達による青春コメディ。
バカでいいじゃない? 若人だもの。
〈補足〉
ツイッターの「#創作試験問題」の解答をもとに、長編化したものです。元になった解答(ショートショート)はカクヨムにて掲載中(https://kakuyomu.jp/works/1177354054888660025)。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる