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お礼
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「……メイちゃん、今日、またオムライス作ってーって、言ってみる! ついでにママって呼んでみる!」
「つ、ついでってメイ……」
メイちゃんはグッと握りしめた拳を振り上げ、なにか吹っ切れたようだった。
そんな妹に後押しされるように、兄も「そうだな」と穏やかな表情を浮かべた。
「あー、なんか、ママの話してたらママに会いたくなっちゃった!」
「……僕も。今日はもう帰ろうか」
「うんっ!」
キラキラ笑顔のメイちゃんに、清々しい面持ちの兄。
「ご来店ありがとうございました、元気でね」
傍らから聞こえた贈り言葉に、私は猫宮さんを振り返った。
彼は慈しむように優しく微笑んでいた。
どうしてそんな、お別れみたいな言葉?
子供たちも不思議がっているんじゃないかと、確認のため視線を戻す。
すると、そこにはすでに兄妹の姿はなかった。
――え……なんで?
今しがたまであったはずの姿が消え、思わず首を右往左往させる。
「あの二人、自分たちなりの答えを見つけたようだな」
いつの間にか、猫宮さんの正面の席に陣取った牛坐さんが言った。
テーブルを挟んだ先にいる彼を見て、猫宮さんは憂いを含んだ表情をした。
下瞼にかぶさった長いまつ毛の奥で、綺麗な瞳が揺れていた。
「ここは迷子さんの拠り所。終着点じゃないからね。みんないずれ、あるべき場所に帰っていく」
猫宮さんの言葉は、私に伝えているようでもあり、自分に言い聞かせているようでもあった。
「つ、ついでってメイ……」
メイちゃんはグッと握りしめた拳を振り上げ、なにか吹っ切れたようだった。
そんな妹に後押しされるように、兄も「そうだな」と穏やかな表情を浮かべた。
「あー、なんか、ママの話してたらママに会いたくなっちゃった!」
「……僕も。今日はもう帰ろうか」
「うんっ!」
キラキラ笑顔のメイちゃんに、清々しい面持ちの兄。
「ご来店ありがとうございました、元気でね」
傍らから聞こえた贈り言葉に、私は猫宮さんを振り返った。
彼は慈しむように優しく微笑んでいた。
どうしてそんな、お別れみたいな言葉?
子供たちも不思議がっているんじゃないかと、確認のため視線を戻す。
すると、そこにはすでに兄妹の姿はなかった。
――え……なんで?
今しがたまであったはずの姿が消え、思わず首を右往左往させる。
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いつの間にか、猫宮さんの正面の席に陣取った牛坐さんが言った。
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