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白昼の衝撃

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「ちづちゃん……」

 俯いた私の上にそっと手のひらが伸びてくるのがわかる。
 それは優しく、私の頭を撫で――なかった。
 ドスッと鈍い音がして、ガクンと視界が揺らぐ。
 一瞬なにが起きたのかわからなかった。

「さっきから聞いてたら、なに勝手なことばかり言ってるの?」

 予想外の衝撃と言葉に、痛みよりも強い驚きを抱えながら面を上げる。
 カウンター越しに立ちはだかる猫宮さんは、綺麗に揃えた指先の向こうで不満げな表情をしていた。
 こんなぶすっとした顔は初めて見る。
 大人びた雰囲気が取り払われた彼は、童顔が目立ちいつもより幼く感じた。
 猫宮さんは私のつむじを攻撃した手刀を沈める代わりに、ぐっと身を乗り出して顔を近づけた。

「言っておくけど、ちづちゃんはバカでもなければダメでもないし、肩書きなんかなくても十分魅力的な女性なんだからね」

 目と目を合わせてしかと言うと、ゆっくりと身体を元の位置に戻す。それから腕を組んだ猫宮さんは、ぷりぷりという擬音がしっくりくる風貌を見せた。

「いくらちづちゃん本人でも、僕の大切な人を悪く言うなんて許さないよ」

 しばし、茫然と物申す眼差しを見上げていた。
 静かな時が流れ、私が瞬きをしたあと、不機嫌にツンとつり上がった眉が緩やかなカーブを描く。
 意志の強い魅惑的な猫目が、いつもと変わらない穏やかを示す。
 宥めるように、諭すように、優しく微笑む猫宮さんは、私が小さな頃置き忘れた大事なものを教えてくれる。
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