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白昼の衝撃

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「ちょっと課長、気をつけてくださいよ!」

 息巻く藤本さんにピクリと片眉を痙攣させる。派遣社員だというのに、態度は社長より大きい。このぶりっ子の本性に気づかない男たちは目が節穴だ。

「それはこっちの台詞よ、ずいぶん急いでたようだけど?」
「医者との合コンが決まったんで、テンション上がってお手洗いで返信しようと思って走ってきたんです」

 ――医者、の一言が私の心に引っかかる。
 普段見て見ぬふりをしているささくれは、ちょっとした刺激で簡単に痛む。
 そもそも医者、という職業は誰かの役に立ちたいとか、命を救うという奉仕精神から目指すものではないか。
 それに付随してくる地位や金メインで考えることがそもそも間違いで、伴侶は誰かに見せびらかすアクセサリーではない。
 と言ってやりたいのは山々だけれど、恋愛経験ゼロの私にこの手の意見は難しかった。
 そもそもぶつかったのは、トートバッグを覗き込んでいた私にも責任がある。
 歩く振動で傾いて中身が崩れていないかなど、スウィーツの安否確認に気を取られていて――。
 そこでようやく現状を理解した私は、焦って起き上がると頭を忙しなく動かした。 
 肩にかけていたはずのトートバッグはすぐそばの床に横たわっていたが、肝心な荷物がどこにもない。
 黒革の内側を探る中、視界の隅を掠めた影を振り返る。
 乳白色の小袋からはみ出たプラスチックの透明容器。悲しいかな、蓋の力は及ばず、中身が全部ぶちまけられていた。
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