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奇妙な仲間たち

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 理性を忘れて食らいつきそうになる自分に、もう一人の自分が寸前で待ったをかける。
 本当に今の勢いのまま口にしていいのか。
 少し落ち着いてから、せめて食べ方くらい上品にするべきではないか。
 前回の一気食いを振り返り、それを目の当たりにした猫宮さんの心境を深読みする。
 食べ方の汚い女性だって、不快にさせたんじゃないだろうか。

「どうしたんだ、食べないのか」
「よだれが出てるでちよ」

 視界の左端でにまにま笑う牛とネズミ。
 
「お腹空いてるんでしょう? 今日も一日お疲れさま」

 ハンバーガータワーの傍らに見える、カウンター越しの猫宮さんが、労いという名のごちそうまで与えてくれる。
 キラキラ輝く背景が、蜂蜜色のシャボン玉のように私の感覚をぼやけさせる。
 猫宮さんは片手を伸ばすと、私の肩にそっと添えた。
 そして安心させるように、渾身の笑みを贈った。

「大丈夫だよ、いっぱい食べる君が好き」

 ――あ、食べよ。
 悩む余地を許さない、最強の殺し文句。
 猫宮さんの微笑は美笑だ。美しい笑いと書いて美笑。誤字にあらず。
 脳内で新しい文字を生み出している間も手が止まることはなく、無意識に着席していた私は目の前の食事にかぶりついていた。 
 両足きっちり整えて、背筋を伸ばして、小さな口で、決してこぼさず、音なく食べる。
 それが彼女の教えで、我が家の食卓だった。

『行儀がなってないと人にバカにされる。あんたのために言ってるんだからね』

 お母さん、私は今足も揃えていないし、猫背の大口で身体に悪そうなものを食べています。
 本当に、あなたの娘は最低なダメ人間です。
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