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奇妙な仲間たち
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私の会社があるビルよりも縦横一回り大きな建物。首都の一等地に堂々と築かれた、自社ビルという名の城の門をくぐる。
前は担当部署の下っ端の人間……平社員と話をしただけだ。
上層部に回された案が、しばしの時を経て好感触の球となって返ってきた。
このチャンス、逃すものか。
涼しい顔を装いながらも、内心鼻息荒く、気合いを入れて前進する。
一階の扉を抜けると、広々とした空間が出迎えてくれる。
玄関と真っ直ぐ向き合う形で設置されたインフォメーション。
華やかだが品のある生け花に彩られた淡白いフロアは、高級ホテルのロビーのようだ。
大理石のような灰と白が混ざり合ったまだら模様のカウンター。その向こう側には受付嬢と思わしき女性が二人横並びに立っていた。銀行の事務員のような、紺色の制服を着ている。
私はその前に立ち止まると、自分の社名と名前、続いて約束している担当者と時間を述べた。
「かしこまりました、少々お待ちください」
そう返事をしたのは私から見て右側に立つ女性だった。男性受けしそうな小柄で可愛らしい雰囲気の彼女は、すぐに固定電話の受話器を取りボタンを操作し始めた。
まだ予定の時刻まで十分ある。
早すぎず遅すぎず、ちょうどいいだろう。
まず会ったら挨拶を、お礼とともに名刺を、苦手な笑顔も忘れずに。
社会人の嗜みから予習していると、左側から異様な空気を感じた。
そろりと視線を向けると、すぐにその正体がわかる。
前は担当部署の下っ端の人間……平社員と話をしただけだ。
上層部に回された案が、しばしの時を経て好感触の球となって返ってきた。
このチャンス、逃すものか。
涼しい顔を装いながらも、内心鼻息荒く、気合いを入れて前進する。
一階の扉を抜けると、広々とした空間が出迎えてくれる。
玄関と真っ直ぐ向き合う形で設置されたインフォメーション。
華やかだが品のある生け花に彩られた淡白いフロアは、高級ホテルのロビーのようだ。
大理石のような灰と白が混ざり合ったまだら模様のカウンター。その向こう側には受付嬢と思わしき女性が二人横並びに立っていた。銀行の事務員のような、紺色の制服を着ている。
私はその前に立ち止まると、自分の社名と名前、続いて約束している担当者と時間を述べた。
「かしこまりました、少々お待ちください」
そう返事をしたのは私から見て右側に立つ女性だった。男性受けしそうな小柄で可愛らしい雰囲気の彼女は、すぐに固定電話の受話器を取りボタンを操作し始めた。
まだ予定の時刻まで十分ある。
早すぎず遅すぎず、ちょうどいいだろう。
まず会ったら挨拶を、お礼とともに名刺を、苦手な笑顔も忘れずに。
社会人の嗜みから予習していると、左側から異様な空気を感じた。
そろりと視線を向けると、すぐにその正体がわかる。
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