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出会いの夜

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 意外な反応への驚きは、次の光景のさらなる驚きに飲み込まれる。
 猫宮さんの背後……腰の辺りから長い縄状のふわふわした物体が伸び出している。
 激しく瞼を瞬かせ、マスカラが取れそうな勢いで目を擦る。
 ――やっぱりある。見間違いじゃない。
 髪や瞳と同じ、蜂蜜色の尻尾。
 緩やかに弛んだそれは先端が肩まであり、猫宮さんの後ろを浮遊するように揺れていた。

「初対面で猫宮に尻尾を出させるとは、なかなかやりおる」
「でも一本だけでちから、まだまだでちよ」

 後方からの声も鼓膜をすり抜けるだけ。 
 まあ、確かに、猫ならあってもおかしくないのだ。牛やネズミの姿をした者がいるなら、むしろ当然の流れと言えるかもしれない。
 半ば無理やり納得させようする私に、猫宮さんは照れくさそうに人差し指で頬を掻いた。

「ああっ、ごめんなさい、嬉しいとつい出ちゃって……」

 どうやら普段は隠している獣の部分が、心の変化により露見してしまうようだ。

「そんなこと言ってくれる人初めてです……猫の置き物も用意しておきますね、次に会った時に渡せるように」

 ――なにも、大したこと言ってないのに。
 目を細めて歓喜を表明する彼に、申し訳ない気持ちさえ湧いてくる。
 自分の言葉一つで、こんなにも誰かを笑顔にさせたことがない。私は戸惑いを禁じ得なかった。
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