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眠りは世界を救う、のでしょうか?
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八重太と別れ、夢穂と影雪がたどり着いたのは戦国大名の城、というよりも竜宮城に似た御殿だった。
横に幅広い平屋の中央には、突き抜けた一角があり、その下が観音開きの扉になっている。
天辺を飾る鯱はすべて金で、屋根は竜の鱗のような色をし、建物自体は漆で塗り込められたような、見るも鮮やかな紅色だった。
町の中央に「我を見よ」とばかりに堂々と陣取った豪勢な館。
地味で自然の中にひっそりと佇む、癒枕寺神社とはデザインも立地も正反対だ。
その出入り口付近には、獄樹と同じような格好をしたあやかしが数名いたが、影雪の顔を見ると特に咎めることもなく道を開けた。
影雪が紅色の門を押し開くと、その中は金……金、金、金、床も壁も、天井に至るまですべてが金尽くしだった。
天井にぶら下がった照明が反射し、眩しさを感じた夢穂は、目を細め瞬きを繰り返した。
こんなものを作るなんて、ここの主はよほど派手好きなのだろう。
一見しただけで主の性格まで窺えるような、そんなわかりやすい建物だった。
影雪は何度も来たことがあるのだろう、慣れた足取りで廊下を進んでいく。
するとまた、先ほど感じた強い視線と出会った。
獄樹は壁面に背中を預け、腕を組みながら影雪の方をぎろりと睨みつけていた。
「ちっ」
浜辺で聞いた舌打ちが再来すると、夢穂は無性に腹が立ち、黙っていられなくなった。
「ちょっとあなた、さっきからそれ、なんなの? 失礼でしょ」
立ち止まって獄樹に注意する夢穂に、獄樹だけならず影雪も驚き目を見開いた。
「夢穂、やめておけ、別に俺は」
「影雪が何か悪いことしたの? してないでしょ? だったらこんな態度をされるのはおかしいわ」
獄樹の眉間に皺が寄り、目がつり上がる。
「なんだと、この女……」
ずしりと空気が重くなるのを感じる。
町で会ったあやかしたちとは別次元の威圧だ。
これが、上級に値するあやかし。刀に妖力を閉じ込めておかないと、弱いあやかしたちを死なせてしまうという影雪の話も頷けた。
横に幅広い平屋の中央には、突き抜けた一角があり、その下が観音開きの扉になっている。
天辺を飾る鯱はすべて金で、屋根は竜の鱗のような色をし、建物自体は漆で塗り込められたような、見るも鮮やかな紅色だった。
町の中央に「我を見よ」とばかりに堂々と陣取った豪勢な館。
地味で自然の中にひっそりと佇む、癒枕寺神社とはデザインも立地も正反対だ。
その出入り口付近には、獄樹と同じような格好をしたあやかしが数名いたが、影雪の顔を見ると特に咎めることもなく道を開けた。
影雪が紅色の門を押し開くと、その中は金……金、金、金、床も壁も、天井に至るまですべてが金尽くしだった。
天井にぶら下がった照明が反射し、眩しさを感じた夢穂は、目を細め瞬きを繰り返した。
こんなものを作るなんて、ここの主はよほど派手好きなのだろう。
一見しただけで主の性格まで窺えるような、そんなわかりやすい建物だった。
影雪は何度も来たことがあるのだろう、慣れた足取りで廊下を進んでいく。
するとまた、先ほど感じた強い視線と出会った。
獄樹は壁面に背中を預け、腕を組みながら影雪の方をぎろりと睨みつけていた。
「ちっ」
浜辺で聞いた舌打ちが再来すると、夢穂は無性に腹が立ち、黙っていられなくなった。
「ちょっとあなた、さっきからそれ、なんなの? 失礼でしょ」
立ち止まって獄樹に注意する夢穂に、獄樹だけならず影雪も驚き目を見開いた。
「夢穂、やめておけ、別に俺は」
「影雪が何か悪いことしたの? してないでしょ? だったらこんな態度をされるのはおかしいわ」
獄樹の眉間に皺が寄り、目がつり上がる。
「なんだと、この女……」
ずしりと空気が重くなるのを感じる。
町で会ったあやかしたちとは別次元の威圧だ。
これが、上級に値するあやかし。刀に妖力を閉じ込めておかないと、弱いあやかしたちを死なせてしまうという影雪の話も頷けた。
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