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スピンオフ 夕刻跳梁跋扈
呪殺
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夕凪:『もし、もしも
誰にも助けられないとしたら
諦めるしかないのでしょうか
だったら私は、運が良かった
それで片付けて仕舞うしかないのでしょうか』
夕刻跳梁跋扈 呪殺
夕凪:っ……あっ、えっと…
鳳:緊張してるねぇ
夕凪:緊張、じゃないです……
骸:鳳の友達に目は見せないよ
夕凪:それ以上に、怖いんです
骸:あぁ、感覚がね
これでいいかな?
夕凪:あっ、なんともない
鳳:前に話した伝播する力を変える
実際に体験できたみたいだね
夕凪:本当に何者なんですか?
骸:人間だよ
鳳:私と関わりを持つということは
骸とも関わりを持つということになる
これは、仕方がないと思うしかないね
骸:鳳、僕が嫌われているような言い方だね
怒るよ
鳳:私は大好きだ!許してくれ!
夕凪:このやり取りを見てれば平和なんですけど
雰囲気が地獄なんですよ……
骸:丑三の血だとは聞いてるけど
感覚の鋭さが異常だね
以前より増したかな?
夕凪:そう、ですね
霊的なものに関してはですけど
鳳:骸とは一度会ってるはずだけど
あぁ、あの時はあの子がいたからか
骸:それに、僕はあまり夕凪に気を向けてなかったからね
今回は三人だから余計にね
夕凪:それで、今日骸さんがいるのは?
鳳:あぁ、少し厄介な話でね
別に私一人で対処もできるものではあるけど
こういった面白い話は、骸にもお裾分けなんだ
夕凪:樺涅は?
骸:僕たちは常に一緒ではないんだ
樺涅は基本、家から出ないよ
夕凪:そうなんですね
骸:ある程度、話は聞いているけど
なにをするんだい?
鳳:何事も無ければ封印かな
結界を張る必要もないだろうから
それに、手に負えないなら儀式や結界をしても
無意味だろうしね
骸:僕に手伝うことは?
鳳:無い、ね
興味あるかな程度で話しただけ
友達じゃなかったら、話自体持ち込まないよ
骸:その程度のモノなのか
……まぁ、行けば解るかな
夕凪:私が聞いてるのは、儀式関係の話ですけど
鳳:それで合ってるよ
儀式によって呪いを発動させた家が目的地
夕凪:なんの呪いなんですか?
鳳:呪いと言えば、人を殺す為
っていうのが一般的だね
夕凪:一般的……?
骸:種類は様々だけど
基本的には害を為すものだね
鳳:呪いとは、二つの意味を含んでいる
『のろい』と読めば害を意味し
『まじない』と読めば神秘的な力を意味する
どう扱うか、口にするか、手順、方法、道具
それによって変わるモノだけど
今回は『のろい』だからね
夕凪:嫌な方、ですね
骸:嫌な方、か
フフ、面白い言い方だね
夕凪:そういえば、茜も呪いをかけられたんですよね?
骸:そうだね、少し前に友達から
強い呪いじゃなかったみたいだけど
状況が状況なだけに精神的に参ったかもね
夕凪:私だったら……許さない、かな
骸:見殺しにするかい?
夕凪:どう、だろう……
けど、優しくはなれないと思います
鳳:……私は夕凪に怪異について話したことがあったね
夕凪:え?……あぁ、はい
2回目に会った時ですよね?
鳳:私たち……骸もそうだと思うけど
全てを一括りに怪異として扱い、そう呼ぶ
夕凪:元は妖怪で多様化が進んだってやつですよね?
鳳:あの話には続きがあって
全部がそうである、とは言えないってことと
私は少しだけ、考え方が違う
夕凪:考え方、ですか?
鳳:怪異に含まれるものは
妖怪、幽霊、都市伝説、呪い、呪具だったり
怪奇現象に纏わるものが含まれている
骸:鳳の授業は久しぶりだね
僕も少し聞いておこうか
鳳:だけど、私は呪いに関しては
怪異に含みたくはない……
と言うより、含まれないと思っているんだ
夕凪:けど、怪奇現象とか起きたりするんですよね?
鳳:怪異とは人の常識を超えるモノだと
幾ら考えても考え尽くせないモノだと
私は思っていてね?
ただ、呪いに関しては……人なんだ
夕凪:人……?
鳳:霊が呪いをかけることはある
ただ、それは霊障であって
言わば、霊の攻撃手段なんだ
ただ、私たちが相談を受けたり、仕事として扱う時
呪いとは、人が人へ行ったモノが殆どだ
骸:厳密に言えば、霊がやっていることは
呪いとはまた少し違うことがあるからね
……そうだね、呪いとは『人』だ
鳳:怪異として含むのは違う気がしていてね
怖いものは沢山溢れているけど
やっぱり、人間が一番怖いモノかもしれないね
夕凪:少し、分かる気がします
自分の手を汚さないように
そういったものに頼ってしまう弱さも
人の怖いところですね
骸:怪談話には人怖も含まれるからね
フフ、人間も怪異かもしれないよ、鳳
鳳:本当に、不思議だねぇ……
夕凪:……
って!行かなくていいんですか!?
鳳:それじゃあ、出発しようか
【間】
三人は目的地の村に到着する
夕凪:廃村ですか
鳳:廃村なのに依頼があるのが不思議かな?
夕凪:そうですね
誰もいないなら放っておいてもいい気がします
鳳:廃村と言ってもね
この村に人がいないだけで
この地で生まれ、その血が流れている人はいるよ
夕凪:……子孫、というか
村から出ただけってことですか?
骸:物分かりがいいね
じゃあ、呪いや恨み言の話でよく聞くセリフ
解るかな?
夕凪:よく聞くセリフですか?
……呪ってやるとか、許さないとか
骸:もっと強い言葉だよ
夕凪:うーん……死ね?
鳳:私が話したことを合わせて考えるんだよ、夕凪
この場合、骸の問題への答えは
『末代まで呪ってやる』だね
骸:末代まで呪うって言うのは
本来、死んでも呪い続けるという意志の言葉だ
ただ、それくらい強い言葉であるわけだから
呪った相手の血が絶えるまでの意味も含まれる
夕凪:じゃあ、この村にかかった呪いは
例え、村を出ても呪われているってこと?
だったら対処しないと今も呪いに苦しんでる
鳳:だから、依頼が来ているわけだけど
こういう話はよくあるんだよ
骸:ネット怪談にも幾つか同じような話はあるよ
知っているかな?
夕凪:特に調べたことはないですね
鳳:夕凪に教えた呪言も、呪いの一種だよ
ある程度、知っておいて損は無いね
夕凪:まぁ……はい、調べてみます
骸:じゃあ、少し話をしようか
ある男が、同じ村に住んでいる男を恨んだ
その恨みは強く、殺そうと考えた
ただ、その殺す方法が呪いだった
夕凪:自分の手を汚さず、ですね
骸:その呪いには手順があって
儀式を用いる、より強い呪いだった
三枚の鏡を合わせ、対象の家を映す
……っと、あまり話すと駄目だね
鳳:その辺りにしてくれると有り難いね
この村も呪術の影響を受けているから
夕凪:なにか反応するんですか?
鳳:呪いとはどう扱うか、口にするか
手順、方法、道具で変わると言ったね?
手順を説明するだけで何かが反応することもある
これは呪いというより、儀式のことに近いけどね
今は抑え込まれたものでも溢れ出ることがあるんだよ
夕凪:なるほど……
骸:手順は省いて、続き
呪いの儀式は完成し、無事呪殺できたわけだ
しかし、強すぎる呪いは跳ね返りがあった
次は自分の家族が次々と死に、最後に自分も死んだ
夕凪:人を呪わば穴二つってことですか?
骸:そういうこと
そうして、強すぎる呪いだけが残り
村にいた寺の人が、代々呪いを抑えていたんだけど
その抑えていたものを村に訪れた主人公が
解き放ったっていうのがネット怪談
夕凪:よくある展開ですね……
骸:そう、よくある話なんだよ
だから、これは作り話でもあれば
本当の話でもある
鳳:今回も同じようなものだね
呪いが強すぎて代々抑えていたけど
それが出来ない代になってしまった
つまり、あまり霊的に力のない跡取りが
困ってるってことなんだよ
夕凪:自分がその立場なら依頼しますね
跡取りは仕方ないけど
まさかそんなことしてるとか分かんないだろうし
鳳:この手の依頼はそういうことだよ
昔はよかったんですけど
が、ビジネス枕詞だね
夕凪:何度か聞きましたね、それ
鳳:そうだ、あと夕凪にはこれを持ってもらうよ
夕凪:なんですか?これ
鳳:特別な水、だよ
夕凪:……本当に?
鳳:酷いなぁ!本当だよ!
骸:それで、この村の呪いは解ってるのかい?
鳳:モノを見ないと何とも
ただ、呪殺域は村全体なわけだから
相当強いとは思っているよ?
骸:何人、死んだんだい?
鳳:さぁ……音信不通になった人もいるらしいから
何処かで死んでいる可能性もあるからね
依頼者は、次は自分の番だって言ってたよ
夕凪:それって……もういないんじゃ?
鳳:どうして?
夕凪:代々守ってきたくらいには
ある程度、力のある家系ですよね?
その人が次は自分って、もう他の人は……
骸:この地を離れれば影響を受けない場合もあるから
全員血が絶えたとは考えずらいけど
……確かに、次は自分の番と言ったのか
鳳:力が強い家系のせいで見えてるのかもね
祓ったり、抑える力がないだけで
骸:その線が妥当かな
本当に全滅する呪いなら
危険すぎるね、フフ……いや、これは
蒐集すべき話かもしれないね
夕凪:茜が言ってたの、これか……
骸:何かな?
夕凪:骸さんは怖ければ怖いほど喜ぶって
骸:ははっ、茜ちゃんらしい言い方だね
鳳:目的の家まではもう少し、かな
夕凪:っ…行きましょう……
【間】
鳳:……
骸:村、という割には広いね
夕凪:結構な人が住んでいたんですかね
骸:かもしれないね
だとしたら、やっぱり血が絶えたのは考えずらいね
夕凪:そうですね
……鳳さん?
鳳:『神隠し』
夕凪:えっ!?
骸:……
その瞬間、三人は鳳の墓地へ移動する
骸:鳳
夕凪:なんで……ここって、鳳さんの
鳳:悪いね、早めに対処させてもらったよ
骸:僕より先に気付くなんてね
鳳:違うよ、骸
あの村に入った時から、私しか見ていなかった
骸:だから、だと?
鳳:そうだよ
骸:僕は呪いに対しては特に何も無いんだけど?
あの場にいても大丈夫だっただろう?
鳳:それは、君個人の話だ
夕凪がいるから
私は、友達を守るよ
夕凪:鳳さん……
骸:僕だって友達じゃないか
鳳:君のことは大好きだ、とても大切だよ
だけど、私の友達であり、助手でもある夕凪の方が
優先順位は上なんだ、解ってくれないか?
骸:まぁ、今回は君たちに対しての依頼だから
やる事に文句はないよ
じゃあ、見せてもらおうかな、鳳
鳳:夕凪
夕凪:はい
鳳:来るよ
夕凪:えっ!?ここに呼んだんですか!?
鳳:まさかヒトガタだとは思わなくてね?
ここで対処した方が早そうだから
夕凪も頼むよ
夕凪:……やってみます
黒い人型のナニカが近づいてくる
夕凪:ウッ……何あれ……怖い…
鳳:呪いそのものって感じだね
アレに取り憑かれたら死ぬパターン
だけど、それが村にいるかな?
夕凪:この地を離れた人も影響があったんですよね?
鳳:そう
だから、転移するタイプ
ただ、陣はあの村ってことだろうね
呪いの溜まり場だから、そこで力を溜められる
骸:犯人は現場に戻るって言うからね
夕凪:それ、呪いにも当て嵌まるんですか!?
骸:あはは、だって実際いるからね
夕凪:『不動』!
骸:へぇ、やるね
だけど……
黒いナニカは夕凪の呪言に反応はしなかった
夕凪:効かない!?
鳳:駄目か
呪いだからね、もう少し訓練が必要だね?
夕凪:……ムカつく
骸:……理解した
あとは儀式を見たいね
あれに興味はもう無いよ
鳳:早いね、見た事あったかい?
骸:力の強いヒトガタ呪いだね
対象の近くに棲みついて精神を蝕む
直接的に死に至らせることもできるね
あとはアレ次第って感じかな
ただ、あの村であれば増やせそう
鳳:増やせる?あの話と同じかな?
骸:だね、多分核は……呪いを発動した本人
そのせいでヒトガタに成った
あの村に入れば精神を蝕んで
呪いの材料になるか、ヒトガタに成るよう
狂わされて殺されるね
鳳:厄介だね
夕凪:呪いが呪いを増やすんですか?
鳳:数や、やる事が多いと一人じゃ大変なことは
人間も同じだからね
夕凪:……早く祓いましょう
鳳:私たちの異常性に気付いて近寄らないね
知能があるのもそのせいか
その時、夕凪の持っていた水の瓶が割れる
夕凪:ウッ……
ヤマナ、ハヤ、カワ、イ、イシダ……
ぐっ……あっ…
骸:呪殺、か
鳳:『陣血結界』
夕凪:ゼェ……ゼェ……
鳳:何本割れたか解る?
夕凪:……三本……うぅ…
鳳:……三人分ってことでいいのかな
それとも一度の呪殺で三本分?
となると、この呪殺域はかなり侵されているね
あの距離で夕凪に取り憑いたのか
村でもないのにこの力
骸:僕たちが思ってるより強力な呪いだね
興味は失せたけど、呪いの強さは目を見張るものがあるよ
鳳:夕凪、残りの水を飲んで
その結界内なら正気に戻るから
夕凪:これ……は?
鳳:気にしない方がいいよ
お酒だから
夕凪:…………
目を瞑り、一本飲み干す夕凪
骸:信用されてないね、鳳
鳳:私の商売道具を見てるからね
夕凪:ウッ……オェッ…
嘔吐する夕凪
鳳:……うん、出たね
骸:黒よりの灰……これは
鳳:まさかだよ
とりあえず、あの呪いは消すよ
骸:あぁ、答え合わせは後で、だね
夕凪:はぁ…はぁ…何これ……
鳳:呪いや呪具は私の得意とするモノ
悪いけど、構ってる暇は無さそうなんだ
『陰蠃怗決』
黒いナニカは渦を巻き、小さく飴玉くらいに圧縮される
骸:それ、貰える?
鳳:この封印は解けないわけだけど?
骸:ただの蒐集品だよ
凄いね、ずっと渦を巻いているよ
鳳:外は破れない結界だからね
永遠にそのままだよ
夕凪:あっ……スッキリした……
骸:呪いを封印したからだろうね
鳳:さて、と
鳳は手を叩く
すると、一瞬で村まで戻っていた
夕凪:え!?戻れるの!?
鳳:マーキングは大事だからね
戻れる様にしてるよ、ちゃんとね
骸:じゃあ、答え合わせの時間だね
【間】
呪いの儀式を行った家に入る
夕凪:あ!これって!
骸:当たりだね
僕が話したネット怪談と同じ
夕凪:三枚の合わせ鏡……
うわっ!何これ!?
鳳:夕凪が吐いたモノと同じだよ
夕凪:なんなんですか、これ
骸:呪いだよ
夕凪:呪い?
骸:それが身体を蝕み、最期に呪いに成る
呪いの素といえば解りやすいかな?
夕凪:もしかして、増やすってこれですか?
鳳:そうだね
今は核が封印されたから、ただの残りカスだけど
触らない方がいいよ、穢れるから
夕凪:は、はい……
鳳:ネット怪談では、主人公と友人も吐いたが
別の友人は一瞬で呪いに取り憑かれた
これは、条件があるんだけれど
夕凪:条件ですか?
鳳:その地に住んでいる者は侵食が早い
その呪いを発動した者と関わりがある、または
感性が近いと侵食が早い、とかね
骸:ネット怪談の中には本物も混じってはいるけど
これは、あの話の場所ではなさそうだから
偶々、同じ呪いを使ったみたいだね
鳳:実際、見て解るけど
かなり強力な呪術だね
書かれてない内容のモノが幾つかある
夕凪:え?……ヒッ!?
骸:頭蓋骨……これは動物か
だけど、その隣のは人だね
鳳:誰も処理しなかっただろうから
近づきたくもないだろうし
別の部屋にもあるだろうね
確か、呪いの大元の家族は全滅だったから
骸:呪いも強まるわけだね
本当、末代まで呪うとはこの事だ
鳳:死して尚、呪い続け
この地に入った者も呪う
……探そうか
【間】
家の中を捜索し、呪術に使ったであろう道具
そして、犠牲になったであろうモノを集めた三人
夕凪:こうなる前に……助けられなかったのかな
鳳:……以前、自分を穢した
あの子の時にも言ったけど
私たちは神でも仏でもないからね
全部は無理なんだよ
それに、全部を背負う事もない
夕凪:子どももいたのに、何でこんな事……
骸:人を殺したいと願う時は
常識なんてものは存在しないから
それが踏み止まる要因の時もあれば
全てを失ってでも遂行する決意にもなる
夕凪:私は……鳳さんに助けてもらいました
じゃあ、私はただ運が良かっただけ?
鳳:怪異とは、人の生き死にだ、と
私が言うくらいには、ね
夕凪:それで終わらせたくない
運で生き死にが決まるなんて思いたくない
骸:別に怪異に限らず、不慮の事故もそうだけどね
夕凪:それは……
骸:ただ、怪異は何か原因があることが殆どだけど
夕凪:だったら、怪異だけでも
どうにかできないのかな……
鳳:夕刻跳梁跋扈、続けるんでしょ?
夕凪:はい
鳳:だったら、手の届く範囲だけ助けるべきだよ
全部なんて強欲は駄目だよ
まずは、できることから
夕凪:……はい
骸:キミも茜ちゃんも正義感が強いね
誰かを、何かを助けたい……
悪いとは思わないけど、怪異と関わるなら
その想いは枷にもなるから
夕凪:それは分かってるつもり、ですけど
それでもって思っちゃうんです
鳳:……さ、手を合わせたら終わらせよう
夕凪:はい
【間】
鳳:またこの地に訪れた人が
偶々呪いを発動しない様に
破壊して封印した方がいいね
結界内でやれば大丈夫だから
夕凪:これ、全部……
鳳:呪われているからね、全部
還すことはできない
呪いを使った代償だと思うしかないね
骸:知らなければ平気で使う呪術
最期は人の扱いをされずに終わる
だから、呪いなんだよね
鳳:丑の刻参りとかも駄目だからね
夕凪:しませんよ……絶対
鳳:見たくないなら外に出てていいよ
夕凪:……いや、最後までやります
鳳:そう
じゃあ、壊すよ
『陣血結界』
【間】
骸:じゃ、僕はこれで帰るよ
鳳:さよならだ
夕凪:ありがとうございました
……こういう話はよくあるんですか?
鳳:呪いだけじゃないし
大体こんな話だよ?
夕凪:そう、ですよね
鳳:だけど、私は慣れたくはないかな
夕凪:え?
鳳:慣れてる様に見えるかな?
確かに、身体も心も慣れている
けど、私の魂は慣れない様にしている
ははっ、これはそう思っているってだけの
私の意識の問題だ
夕凪:私もそうします
例え身体も心も慣れなきゃいけなくても
魂だけはこの気持ちを忘れない様に
鳳:それができれば夕凪も強くなれるよ
夕凪:助けられる様に、ですね
鳳:そうだね、今はそれで良いんだよ
夕凪:『もし、もしも
誰にも助けられないとしたら
諦めるしかないのでしょうか
だったら私は、この手が届く誰かだけでも
助けたいと、手を伸ばすしかないのだろう』
夕刻跳梁跋扈 呪殺 終
誰にも助けられないとしたら
諦めるしかないのでしょうか
だったら私は、運が良かった
それで片付けて仕舞うしかないのでしょうか』
夕刻跳梁跋扈 呪殺
夕凪:っ……あっ、えっと…
鳳:緊張してるねぇ
夕凪:緊張、じゃないです……
骸:鳳の友達に目は見せないよ
夕凪:それ以上に、怖いんです
骸:あぁ、感覚がね
これでいいかな?
夕凪:あっ、なんともない
鳳:前に話した伝播する力を変える
実際に体験できたみたいだね
夕凪:本当に何者なんですか?
骸:人間だよ
鳳:私と関わりを持つということは
骸とも関わりを持つということになる
これは、仕方がないと思うしかないね
骸:鳳、僕が嫌われているような言い方だね
怒るよ
鳳:私は大好きだ!許してくれ!
夕凪:このやり取りを見てれば平和なんですけど
雰囲気が地獄なんですよ……
骸:丑三の血だとは聞いてるけど
感覚の鋭さが異常だね
以前より増したかな?
夕凪:そう、ですね
霊的なものに関してはですけど
鳳:骸とは一度会ってるはずだけど
あぁ、あの時はあの子がいたからか
骸:それに、僕はあまり夕凪に気を向けてなかったからね
今回は三人だから余計にね
夕凪:それで、今日骸さんがいるのは?
鳳:あぁ、少し厄介な話でね
別に私一人で対処もできるものではあるけど
こういった面白い話は、骸にもお裾分けなんだ
夕凪:樺涅は?
骸:僕たちは常に一緒ではないんだ
樺涅は基本、家から出ないよ
夕凪:そうなんですね
骸:ある程度、話は聞いているけど
なにをするんだい?
鳳:何事も無ければ封印かな
結界を張る必要もないだろうから
それに、手に負えないなら儀式や結界をしても
無意味だろうしね
骸:僕に手伝うことは?
鳳:無い、ね
興味あるかな程度で話しただけ
友達じゃなかったら、話自体持ち込まないよ
骸:その程度のモノなのか
……まぁ、行けば解るかな
夕凪:私が聞いてるのは、儀式関係の話ですけど
鳳:それで合ってるよ
儀式によって呪いを発動させた家が目的地
夕凪:なんの呪いなんですか?
鳳:呪いと言えば、人を殺す為
っていうのが一般的だね
夕凪:一般的……?
骸:種類は様々だけど
基本的には害を為すものだね
鳳:呪いとは、二つの意味を含んでいる
『のろい』と読めば害を意味し
『まじない』と読めば神秘的な力を意味する
どう扱うか、口にするか、手順、方法、道具
それによって変わるモノだけど
今回は『のろい』だからね
夕凪:嫌な方、ですね
骸:嫌な方、か
フフ、面白い言い方だね
夕凪:そういえば、茜も呪いをかけられたんですよね?
骸:そうだね、少し前に友達から
強い呪いじゃなかったみたいだけど
状況が状況なだけに精神的に参ったかもね
夕凪:私だったら……許さない、かな
骸:見殺しにするかい?
夕凪:どう、だろう……
けど、優しくはなれないと思います
鳳:……私は夕凪に怪異について話したことがあったね
夕凪:え?……あぁ、はい
2回目に会った時ですよね?
鳳:私たち……骸もそうだと思うけど
全てを一括りに怪異として扱い、そう呼ぶ
夕凪:元は妖怪で多様化が進んだってやつですよね?
鳳:あの話には続きがあって
全部がそうである、とは言えないってことと
私は少しだけ、考え方が違う
夕凪:考え方、ですか?
鳳:怪異に含まれるものは
妖怪、幽霊、都市伝説、呪い、呪具だったり
怪奇現象に纏わるものが含まれている
骸:鳳の授業は久しぶりだね
僕も少し聞いておこうか
鳳:だけど、私は呪いに関しては
怪異に含みたくはない……
と言うより、含まれないと思っているんだ
夕凪:けど、怪奇現象とか起きたりするんですよね?
鳳:怪異とは人の常識を超えるモノだと
幾ら考えても考え尽くせないモノだと
私は思っていてね?
ただ、呪いに関しては……人なんだ
夕凪:人……?
鳳:霊が呪いをかけることはある
ただ、それは霊障であって
言わば、霊の攻撃手段なんだ
ただ、私たちが相談を受けたり、仕事として扱う時
呪いとは、人が人へ行ったモノが殆どだ
骸:厳密に言えば、霊がやっていることは
呪いとはまた少し違うことがあるからね
……そうだね、呪いとは『人』だ
鳳:怪異として含むのは違う気がしていてね
怖いものは沢山溢れているけど
やっぱり、人間が一番怖いモノかもしれないね
夕凪:少し、分かる気がします
自分の手を汚さないように
そういったものに頼ってしまう弱さも
人の怖いところですね
骸:怪談話には人怖も含まれるからね
フフ、人間も怪異かもしれないよ、鳳
鳳:本当に、不思議だねぇ……
夕凪:……
って!行かなくていいんですか!?
鳳:それじゃあ、出発しようか
【間】
三人は目的地の村に到着する
夕凪:廃村ですか
鳳:廃村なのに依頼があるのが不思議かな?
夕凪:そうですね
誰もいないなら放っておいてもいい気がします
鳳:廃村と言ってもね
この村に人がいないだけで
この地で生まれ、その血が流れている人はいるよ
夕凪:……子孫、というか
村から出ただけってことですか?
骸:物分かりがいいね
じゃあ、呪いや恨み言の話でよく聞くセリフ
解るかな?
夕凪:よく聞くセリフですか?
……呪ってやるとか、許さないとか
骸:もっと強い言葉だよ
夕凪:うーん……死ね?
鳳:私が話したことを合わせて考えるんだよ、夕凪
この場合、骸の問題への答えは
『末代まで呪ってやる』だね
骸:末代まで呪うって言うのは
本来、死んでも呪い続けるという意志の言葉だ
ただ、それくらい強い言葉であるわけだから
呪った相手の血が絶えるまでの意味も含まれる
夕凪:じゃあ、この村にかかった呪いは
例え、村を出ても呪われているってこと?
だったら対処しないと今も呪いに苦しんでる
鳳:だから、依頼が来ているわけだけど
こういう話はよくあるんだよ
骸:ネット怪談にも幾つか同じような話はあるよ
知っているかな?
夕凪:特に調べたことはないですね
鳳:夕凪に教えた呪言も、呪いの一種だよ
ある程度、知っておいて損は無いね
夕凪:まぁ……はい、調べてみます
骸:じゃあ、少し話をしようか
ある男が、同じ村に住んでいる男を恨んだ
その恨みは強く、殺そうと考えた
ただ、その殺す方法が呪いだった
夕凪:自分の手を汚さず、ですね
骸:その呪いには手順があって
儀式を用いる、より強い呪いだった
三枚の鏡を合わせ、対象の家を映す
……っと、あまり話すと駄目だね
鳳:その辺りにしてくれると有り難いね
この村も呪術の影響を受けているから
夕凪:なにか反応するんですか?
鳳:呪いとはどう扱うか、口にするか
手順、方法、道具で変わると言ったね?
手順を説明するだけで何かが反応することもある
これは呪いというより、儀式のことに近いけどね
今は抑え込まれたものでも溢れ出ることがあるんだよ
夕凪:なるほど……
骸:手順は省いて、続き
呪いの儀式は完成し、無事呪殺できたわけだ
しかし、強すぎる呪いは跳ね返りがあった
次は自分の家族が次々と死に、最後に自分も死んだ
夕凪:人を呪わば穴二つってことですか?
骸:そういうこと
そうして、強すぎる呪いだけが残り
村にいた寺の人が、代々呪いを抑えていたんだけど
その抑えていたものを村に訪れた主人公が
解き放ったっていうのがネット怪談
夕凪:よくある展開ですね……
骸:そう、よくある話なんだよ
だから、これは作り話でもあれば
本当の話でもある
鳳:今回も同じようなものだね
呪いが強すぎて代々抑えていたけど
それが出来ない代になってしまった
つまり、あまり霊的に力のない跡取りが
困ってるってことなんだよ
夕凪:自分がその立場なら依頼しますね
跡取りは仕方ないけど
まさかそんなことしてるとか分かんないだろうし
鳳:この手の依頼はそういうことだよ
昔はよかったんですけど
が、ビジネス枕詞だね
夕凪:何度か聞きましたね、それ
鳳:そうだ、あと夕凪にはこれを持ってもらうよ
夕凪:なんですか?これ
鳳:特別な水、だよ
夕凪:……本当に?
鳳:酷いなぁ!本当だよ!
骸:それで、この村の呪いは解ってるのかい?
鳳:モノを見ないと何とも
ただ、呪殺域は村全体なわけだから
相当強いとは思っているよ?
骸:何人、死んだんだい?
鳳:さぁ……音信不通になった人もいるらしいから
何処かで死んでいる可能性もあるからね
依頼者は、次は自分の番だって言ってたよ
夕凪:それって……もういないんじゃ?
鳳:どうして?
夕凪:代々守ってきたくらいには
ある程度、力のある家系ですよね?
その人が次は自分って、もう他の人は……
骸:この地を離れれば影響を受けない場合もあるから
全員血が絶えたとは考えずらいけど
……確かに、次は自分の番と言ったのか
鳳:力が強い家系のせいで見えてるのかもね
祓ったり、抑える力がないだけで
骸:その線が妥当かな
本当に全滅する呪いなら
危険すぎるね、フフ……いや、これは
蒐集すべき話かもしれないね
夕凪:茜が言ってたの、これか……
骸:何かな?
夕凪:骸さんは怖ければ怖いほど喜ぶって
骸:ははっ、茜ちゃんらしい言い方だね
鳳:目的の家まではもう少し、かな
夕凪:っ…行きましょう……
【間】
鳳:……
骸:村、という割には広いね
夕凪:結構な人が住んでいたんですかね
骸:かもしれないね
だとしたら、やっぱり血が絶えたのは考えずらいね
夕凪:そうですね
……鳳さん?
鳳:『神隠し』
夕凪:えっ!?
骸:……
その瞬間、三人は鳳の墓地へ移動する
骸:鳳
夕凪:なんで……ここって、鳳さんの
鳳:悪いね、早めに対処させてもらったよ
骸:僕より先に気付くなんてね
鳳:違うよ、骸
あの村に入った時から、私しか見ていなかった
骸:だから、だと?
鳳:そうだよ
骸:僕は呪いに対しては特に何も無いんだけど?
あの場にいても大丈夫だっただろう?
鳳:それは、君個人の話だ
夕凪がいるから
私は、友達を守るよ
夕凪:鳳さん……
骸:僕だって友達じゃないか
鳳:君のことは大好きだ、とても大切だよ
だけど、私の友達であり、助手でもある夕凪の方が
優先順位は上なんだ、解ってくれないか?
骸:まぁ、今回は君たちに対しての依頼だから
やる事に文句はないよ
じゃあ、見せてもらおうかな、鳳
鳳:夕凪
夕凪:はい
鳳:来るよ
夕凪:えっ!?ここに呼んだんですか!?
鳳:まさかヒトガタだとは思わなくてね?
ここで対処した方が早そうだから
夕凪も頼むよ
夕凪:……やってみます
黒い人型のナニカが近づいてくる
夕凪:ウッ……何あれ……怖い…
鳳:呪いそのものって感じだね
アレに取り憑かれたら死ぬパターン
だけど、それが村にいるかな?
夕凪:この地を離れた人も影響があったんですよね?
鳳:そう
だから、転移するタイプ
ただ、陣はあの村ってことだろうね
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骸:犯人は現場に戻るって言うからね
夕凪:それ、呪いにも当て嵌まるんですか!?
骸:あはは、だって実際いるからね
夕凪:『不動』!
骸:へぇ、やるね
だけど……
黒いナニカは夕凪の呪言に反応はしなかった
夕凪:効かない!?
鳳:駄目か
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鳳:早いね、見た事あったかい?
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鳳:『陣血結界』
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鳳:夕凪、残りの水を飲んで
その結界内なら正気に戻るから
夕凪:これ……は?
鳳:気にしない方がいいよ
お酒だから
夕凪:…………
目を瞑り、一本飲み干す夕凪
骸:信用されてないね、鳳
鳳:私の商売道具を見てるからね
夕凪:ウッ……オェッ…
嘔吐する夕凪
鳳:……うん、出たね
骸:黒よりの灰……これは
鳳:まさかだよ
とりあえず、あの呪いは消すよ
骸:あぁ、答え合わせは後で、だね
夕凪:はぁ…はぁ…何これ……
鳳:呪いや呪具は私の得意とするモノ
悪いけど、構ってる暇は無さそうなんだ
『陰蠃怗決』
黒いナニカは渦を巻き、小さく飴玉くらいに圧縮される
骸:それ、貰える?
鳳:この封印は解けないわけだけど?
骸:ただの蒐集品だよ
凄いね、ずっと渦を巻いているよ
鳳:外は破れない結界だからね
永遠にそのままだよ
夕凪:あっ……スッキリした……
骸:呪いを封印したからだろうね
鳳:さて、と
鳳は手を叩く
すると、一瞬で村まで戻っていた
夕凪:え!?戻れるの!?
鳳:マーキングは大事だからね
戻れる様にしてるよ、ちゃんとね
骸:じゃあ、答え合わせの時間だね
【間】
呪いの儀式を行った家に入る
夕凪:あ!これって!
骸:当たりだね
僕が話したネット怪談と同じ
夕凪:三枚の合わせ鏡……
うわっ!何これ!?
鳳:夕凪が吐いたモノと同じだよ
夕凪:なんなんですか、これ
骸:呪いだよ
夕凪:呪い?
骸:それが身体を蝕み、最期に呪いに成る
呪いの素といえば解りやすいかな?
夕凪:もしかして、増やすってこれですか?
鳳:そうだね
今は核が封印されたから、ただの残りカスだけど
触らない方がいいよ、穢れるから
夕凪:は、はい……
鳳:ネット怪談では、主人公と友人も吐いたが
別の友人は一瞬で呪いに取り憑かれた
これは、条件があるんだけれど
夕凪:条件ですか?
鳳:その地に住んでいる者は侵食が早い
その呪いを発動した者と関わりがある、または
感性が近いと侵食が早い、とかね
骸:ネット怪談の中には本物も混じってはいるけど
これは、あの話の場所ではなさそうだから
偶々、同じ呪いを使ったみたいだね
鳳:実際、見て解るけど
かなり強力な呪術だね
書かれてない内容のモノが幾つかある
夕凪:え?……ヒッ!?
骸:頭蓋骨……これは動物か
だけど、その隣のは人だね
鳳:誰も処理しなかっただろうから
近づきたくもないだろうし
別の部屋にもあるだろうね
確か、呪いの大元の家族は全滅だったから
骸:呪いも強まるわけだね
本当、末代まで呪うとはこの事だ
鳳:死して尚、呪い続け
この地に入った者も呪う
……探そうか
【間】
家の中を捜索し、呪術に使ったであろう道具
そして、犠牲になったであろうモノを集めた三人
夕凪:こうなる前に……助けられなかったのかな
鳳:……以前、自分を穢した
あの子の時にも言ったけど
私たちは神でも仏でもないからね
全部は無理なんだよ
それに、全部を背負う事もない
夕凪:子どももいたのに、何でこんな事……
骸:人を殺したいと願う時は
常識なんてものは存在しないから
それが踏み止まる要因の時もあれば
全てを失ってでも遂行する決意にもなる
夕凪:私は……鳳さんに助けてもらいました
じゃあ、私はただ運が良かっただけ?
鳳:怪異とは、人の生き死にだ、と
私が言うくらいには、ね
夕凪:それで終わらせたくない
運で生き死にが決まるなんて思いたくない
骸:別に怪異に限らず、不慮の事故もそうだけどね
夕凪:それは……
骸:ただ、怪異は何か原因があることが殆どだけど
夕凪:だったら、怪異だけでも
どうにかできないのかな……
鳳:夕刻跳梁跋扈、続けるんでしょ?
夕凪:はい
鳳:だったら、手の届く範囲だけ助けるべきだよ
全部なんて強欲は駄目だよ
まずは、できることから
夕凪:……はい
骸:キミも茜ちゃんも正義感が強いね
誰かを、何かを助けたい……
悪いとは思わないけど、怪異と関わるなら
その想いは枷にもなるから
夕凪:それは分かってるつもり、ですけど
それでもって思っちゃうんです
鳳:……さ、手を合わせたら終わらせよう
夕凪:はい
【間】
鳳:またこの地に訪れた人が
偶々呪いを発動しない様に
破壊して封印した方がいいね
結界内でやれば大丈夫だから
夕凪:これ、全部……
鳳:呪われているからね、全部
還すことはできない
呪いを使った代償だと思うしかないね
骸:知らなければ平気で使う呪術
最期は人の扱いをされずに終わる
だから、呪いなんだよね
鳳:丑の刻参りとかも駄目だからね
夕凪:しませんよ……絶対
鳳:見たくないなら外に出てていいよ
夕凪:……いや、最後までやります
鳳:そう
じゃあ、壊すよ
『陣血結界』
【間】
骸:じゃ、僕はこれで帰るよ
鳳:さよならだ
夕凪:ありがとうございました
……こういう話はよくあるんですか?
鳳:呪いだけじゃないし
大体こんな話だよ?
夕凪:そう、ですよね
鳳:だけど、私は慣れたくはないかな
夕凪:え?
鳳:慣れてる様に見えるかな?
確かに、身体も心も慣れている
けど、私の魂は慣れない様にしている
ははっ、これはそう思っているってだけの
私の意識の問題だ
夕凪:私もそうします
例え身体も心も慣れなきゃいけなくても
魂だけはこの気持ちを忘れない様に
鳳:それができれば夕凪も強くなれるよ
夕凪:助けられる様に、ですね
鳳:そうだね、今はそれで良いんだよ
夕凪:『もし、もしも
誰にも助けられないとしたら
諦めるしかないのでしょうか
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夕刻跳梁跋扈 呪殺 終
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