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スピンオフ 怪異蒐集譚
業
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人気の無い森の中ーー。
竜二:な、何なんだ!!てめぇらは!!
骸:怪異を蒐め、怪異を識る者…
だよね?カバネ
樺涅:なんで私に聞くの?解らないよ、先生
骸:先生じゃないよ
樺涅:じゃあ、師匠?
骸:それも違うなァ
竜二:なに言ってやがんだ!!ふざけるな!!
話が違うだろ!?お前らは俺を助けるために…
骸:(遮り)助ける?何時?誰が?誰を?
助けるなんて僕は言ってないよ
樺涅:私も言ってない
竜二:……は?
なめてんのか?なぁ!?おい!!!!
骸:五月蠅いよ
竜二:ウッ…また…そ…れか…
じゃあ…てめぇが……死ね
男の怒号に似た銃声が響き渡る――――。
【間】
時は遡り、ある昔の話ーー。
骸:……動けるかい?
樺涅:…………
骸:死んでいるのかい?
樺涅:……
骸:それは、おかしい
僕は視えるんだ
樺涅:アッ…ダ…
骸:うん、ゆっくりでいいよ
樺涅:ダ…レ…?
ナニカに陰惨な姿にされた少女が横たわっていた。
それは、死んでいてもおかしくない状態であった。
しかし、少女の身体はゆっくりと元のカタチを取り戻そうとしていた。
骸:僕は、骸
これは偽名だったり、ハンドルネームだったり、通り名だったり
…まぁ、そんなとこだよ
君は…誰だい?
樺涅:ワタ…シ…は、誰?
骸:名を与えてもいいのかい?
樺涅:解からない…けど、私が解らないの……
名が無いと…私は……
骸:樺涅
樺涅:……え?
骸:キミの名前だよ
樺涅:か……ばね……?
骸:あぁ、今日からそう名乗るといいよ
おいで、とりあえず僕の家に
【間】
現在ーー。
樺涅:お客さん来たよ、先生
骸:先生じゃないよ
骸で良いって言ってるでしょ?
樺涅:あんまり、その名前、呼びたくない
骸:……入って良いよ
竜二:あぁん?なんだ此処ァ…陰気臭ぇな
骸:珍しい人種が来たね
ははっ、興味深いよ
竜二:あ?なんだその言い方は?
骸:常に喧嘩腰じゃないと言葉を使えないのかな?
竜二:テメェ、喧嘩売ってんのか!
樺涅:??
ねぇ、この人は馬鹿なの?
骸:うーん……
カバネ、キミもそう言うこと言うんじゃ無いよ
竜二:お…お前ら……ッッ!!!
もう我慢ならねぇ!コラァ!表出ろや!
骸:ほら、こうなるから
樺涅:……ころす?私を……ころす?
竜二:死ぬほうがいいくらい、ぶん殴ってやるよガキが!
樺涅:あっは…あはは
あははははははは
竜二:な、何笑ってやがんだ……
骸:君みたいな人、別に嫌いじゃないんだけどさ
自己紹介を兼ねて…ね?
竜二:あぁ!?何だって……えっ、アッ…
骸:僕の名前は骸
これはあだ名であり、ハンドルネームであり、二つ名だったり、通り名だったり、異名と
まぁ、そんなもんだよ
竜二:な…んだ、お前の……目ぇ…は…ッッ
骸:凄いね、胆力というか何と言うか
違うか、そういうの根性があるって言うんだっけ?
竜二:グッ……あっ…やめ…ろ!
骸:はい、おしまい
竜二:ゼェ…ゼェ……
樺涅:目を視せたの?
骸:挨拶、みたいなものだよ
竜二:……いい、確信した
お前らなら、預けられる
樺涅:上から目線、依頼したのはそっち
竜二:クソガキが……
いや、筋を通してねぇのは俺か…
骸:立ち話もなんだから、座ろうか
あぁ、棚には触らないでくれ
危険なモノも有るからね
【間】
竜二:俺は、島根 竜二だ
オヤジから話があって
ある組の事務所にタマを取りに行ったんだ
骸:今は聞かない話だけど、何年前の話だい?
竜二:いや、昔って訳じゃねぇ
確かに暴対法が出来ちゃいるが、無い話でもねぇんだ
樺涅:難しい話、わたし解らない
骸:カバネは聞いてるだけでいいよ
竜二:それで、言われたとこ行ったんだが
ただ、その頭が居なくてな
見られた組員3人を殺した
骸:人殺しの相談なら警察をお薦めするよ
竜二:ちげぇ!この後だ
俺は鉄砲玉だと自分のことを思ってたが、オヤジからしたら使えると判断したんだろうな
下っ端の奴を代わりにムショに入れた
俺ァ、自分がムショに行っても、別によかったんだが
……その下っ端の奴がムショに入ってから、おかしなことが起こり始めた
樺涅:おかしなこと?
竜二:あぁ、身体が重く感じたのが最初だ
殺しをした後だったし、疲れかと思った
ただ、逆に……これは冗談とかじゃねーから
喧嘩売ってくんなよ?
樺涅:最初から喧嘩なんて売ってない
あなたがそう感じてるだけ
竜二:…続けるぞ
逆に、絶好調になることがあるんだ
マジで冗談じゃなくて俺、最強だと
そう思うくれぇ、強くなれた気分になるんだ
骸:それは、精神科の受診をお薦めするけど?
竜二:だから!そんなんじゃねぇんだよ!
骸:……カバネ、視えてる?
樺涅:全然、何も
竜二:な、なぁ!お前ら知ってるんだろ?
そういうやつのこと
骸:知ってる
ただ、この場所は結界みたいなもので
幽霊なんかは入ってこれないんだけど……
正直に言うのと、遠回しに言うの
どっちがいい?
竜二:そりゃ、正直に話せよ
樺涅:あなたから全く、霊の感じがしない
それは先生も一緒だと思う
視えないし、匂いもない
骸:骸だよ、カバネ
けど、同意見
確かに霊は入ってこれないけど
君に取り憑いた形跡すら無いんだよ
だから、取り憑かれすらしてない
竜二:じゃあ!俺のこれは精神病だと言いてぇのか!?
骸:普通は
そうだね……ちょっと待ってて
そういうと、どこかに電話をかける骸
骸:あ、織紙?
最近、誰かに売ったかい?
例えば…裏側の方に…うん、そう
いや、少し厄介な件でね
うん、また
樺涅:どう?ダメだった?
骸:霊でも呪いでもないなら、妖怪…かな
樺涅:妖怪……
骸:あぁ、カバネは無理しなくてもいいよ
樺涅:大丈夫
竜二:なぁ!何か分かったのか!?
骸:少し調べたいから、普通に生活しててくれる?
命の危険は無いからさ
竜二:何で言い切れる?
骸:そういうものだよ
僕を頼るなら、僕のやり方に文句は言わないで信頼してくれると助かるんだけど
竜二:分かった……
テメェらを信じる
樺涅:またこちらから連絡する
その言葉に不満を覚えつつ、竜二は退店するーー。
骸:視えるかい?
樺涅:ううん、やっぱり視えない
骸:ハハッ、ちょっと面白そうな話だね
【間】
暫くしてーー
竜二:あー、クソ
事務所来んなってオヤジも何考えてんだ
今動かねぇと、俺がした意味ねぇだろうが
……ヒヒッ、ヒヒヒ
あー……何でも出来そうだなァ……
竜二の様子を遠くから観察している二人
樺涅:あ、雰囲気変わった
骸:あれが俺最強モードかな?
樺涅:一瞬だった
けど取り憑かれてないよ
骸:近くに気配もないね
僕の目に視えないはずはないし
樺涅:近くにいない?
別の場所から何かしてる?
骸:……あぁ、そっか
その手があるか
樺涅:何か解ったの?
骸:ま、見方を変えれば分かる話、か
カバネ、このまま観察続けてて
僕は準備してくるよ
【間】
竜二:よぉ、遅ぇんじゃねぇか?
樺涅:何か変わったことは?
竜二:あぁ、特になかったが
言ってた…あれ、だ…あれ
二回くらいか?
樺涅:そう
竜二:んだよ、聞いといてその反応
樺涅:別に
竜二:それより、アイツは?
あの白髪の……骸、だったか?
骸:覚えててくれて、ありがとう
さ、準備は終わったよ
竜二:なんだ、居たのかよ
骸:ここでは無理そうだ
少し人気の無いところに行こうか
【間】
ある森の中を三人は歩く
竜二:……
樺涅:何も言わないの?
竜二:……あ?その言葉が出るってことは
テメェらは此処が何処か知ってんのか?
骸:どういうこと、かな?
竜二:俺はテメェらを信じるって決めた
だから、やることに一々文句はねぇ
だから黙ってた
樺涅:それが筋を通すってこと?
竜二:あぁ、そうだ
だがな、冗談とかふざけてやってんなら、俺はお前らを殺す
骸:殺す……ね
僕たちを殺してどうするの?
また別の、僕たちみたいなのに頼むの?
竜二:いや、もう頼らねぇ
どうせお前らみたいに、全員頭が逝ってんだろ?
樺涅:あはは、頭が逝ってるのはどっちかな?
竜二:吐け
隠し持っていた拳銃を取り出す竜二
竜二:なんで俺を此処に連れてきた
骸:……此処は君達が、よく隠し場所にする山みたいだね
竜二:なんでそれを知ってる?
骸:仕事柄、かな
竜二:とぼけんな!!
組員じゃねぇお前がなんで分かるんだ!
骸:調べたからだよ
キミたちは結構過激派だね
竜二:ハッ!今までに殺った奴から聞いたとかぬかすか?
幽霊とか見えるもんなお前らは
骸:あながち間違いじゃ無いよ
樺涅:殺された人が全員、霊として残るわけじゃ無い
だけど、残る霊もいるよ
ソレと対話できるのは特別な人だけ
竜二:ふざけんな!だとしても、何で此処だ!
樺涅:そんなモノ持ってるからでしょ?
人気のある場所でも出すの?ソレ
竜二:ッッ
骸:ハハハ!殺した後、処理し易くていいでしょ?
竜二:何言ってやがんだ
死ぬ気か?
骸:いや、全く
そうだね、君に取り憑いているモノのせいかな
竜二:あ?俺には何も取り憑いてないって
テメェが言ったんだろ?
骸:あぁ、霊や呪いをかけられてるわけでもない
妖怪の仕業ってわけでもなさそうだ
竜二:じゃあ、何でこんな場所に
骸:(遮って)懺悔だよ、島根 竜二
此処はオマエの懺悔室だ
凄く面白い話だ
霊でも呪いでも妖怪でも無い
何に懺悔するのか解るかい?
樺涅:どうせ気づかない、気づけない
気づこうともしない
だから、アナタは解らない
骸:時間は無いよ
気づけるかい?キミを狂わせている原因が何か
樺涅:答えてみてよ、ねぇ、ほら
竜二:な、何なんだ!!てめぇらは!!
骸:怪異を蒐め、怪異を識る者…
骸:だよね?カバネ
樺涅:なんで私に聞くの?解らないよ、先生
骸:先生じゃないよ
樺涅:じゃあ、師匠?
骸:それも違うなァ
竜二:なに言ってやがんだ!!ふざけるな!!
話が違うだろ!?お前らは俺を助けるために…
骸:(遮り)助ける?何時?誰が?誰を?
助けるなんて僕は言ってないよ
樺涅:私も言ってない
竜二:……は?
なめてんのか?なぁ!?おい!!!!
骸:五月蠅いよ
竜二:ウッ…また…そ…れか…
じゃあ…てめぇが……死ね
骸の目を見、苦しむ中、それは
男の怒号に似た銃声が響き渡る――――。
骸:……褒めてあげるよ
僕に視られながら引き金を引けたことは
竜二:ヒ……ヒヒッ……
やっぱり、俺は……ヒヒヒ
樺涅:………
銃弾は樺涅に当たり、頭を撃たれ倒れている
骸:あぁ、それか
いいタイミングで変わったんだね
竜二:ヒヒ、次はお前だよ
骸:じゃあ、話をしようか
大事な話を
竜二:あぁ?……っ!?
う、動け……ねぇ……
骸:今は僕とキミだけだ
ゆっくり話をしよう
竜二:…んだ…これ…
骸:キミは幽霊と妖怪の違いが解るかい?
解らないだろうから教えてあげるよ
大体の場合、幽霊は実体が無いものを指し、妖怪は実体が有るものを指す
竜二:何の…話だ…
骸:この言葉通り、人に霊が害をなす時と、妖怪が害をなす時では違いがある
幽霊は基本透けているって表現されるように
実体が無いから人に触れられない
じゃあ、どうするか
そう、精神的な霊障を起こす
竜二:あぁ!?じゃあ俺のこれは霊の仕業じゃねぇか
骸:まぁ、聞きなよ
逆に妖怪の場合は実体があるから、物理的なことがある
ただ、そうじゃない場合がある
ゲームをしたことはあるかい?RPGとか
竜二:ゲームだと?ふざけてんのか?
骸:今話したのは低レベルの幽霊や妖怪の話だよ
ゲームはレベルが上がると強くなるよね
彼らも同じ
レベルの高い奴らは、色んな特殊能力を得るんだ
それこそ触れることができる幽霊とか、見るだけで呪い殺す力とか
精神的に取り憑く妖怪とか、遠距離攻撃とか……ね
竜二:何が言いてぇんだよ
じゃあ妖怪か!?俺は何に取り憑かれてんだ!
骸:僕は最初、取り憑かれた様子もないキミを観察した
近くに居れば、僕に視えないわけがないからね
だから、遠くからキミを操っているのかとも思った
そういう能力がある霊か、妖怪か
竜二:レベルの高い奴ってのか?
骸:だけど、違った
そういうモノも視えなかった
だから次は、キミを調べた
竜二:俺を……調べた?
骸:キミは3人殺しておかしくなったと言った
だけど、違うよね?昔にもっと殺してる
7人、だったかい?
竜二:なんで……知って
骸:キミに取り憑いているのはね
業、だよ
竜二:業…?
骸:人の罪、みたいなモノだ
人は悪いことをすると業を背負う
それはキミだけじゃない、生きているモノ全部だ
じゃあ、他にも殺しをした人が同じような苦しみを持っているか
答えは、持っていない
竜二:じゃあ、何で俺だけこんな事になってんだ?
偶々とか、偶然とか
そんなクソみてぇなことじゃねぇよな!?
骸:人は悪いことをすると業を背負う
だけど、良いことをすれば徳を積むんだ
それで業を徳で相殺していくんだよ
だけど、キミは違うね?
キミは、徳を積んで無い
竜二:……は?
骸:キミは生まれてから今まで
人に有難うと感謝されたことはあるかい?
竜二:……………
骸:徳を積むには色んな方法がある
一番簡単な方法が、感謝だよ
竜二:俺……は…
……たしかに…殺しをした後、オヤジにも……
骸:ありがとう、よく頑張った、よくやってくれた、助かった
……労いの言葉すら無かったかい?
竜二:……あぁ……
骸:殺しだけじゃ無い
キミが今まで犯した罪が相殺されずに、塊になってキミを狂わせている
ハハ!それに追加だ
キミは樺涅も殺した
竜二:ッ……俺は!
樺涅:死んでない
竜二:うわぁぁぁ!?なんだ!?
樺涅:ん…ちょっと待って……
撃たれた頭の傷が塞がっていく
竜二:バ…バケモノ……
樺涅:そう、私は死なないの
ううん、死ねないの
竜二:なんなんだよ……お前らは…
骸:と、まぁカバネは生きてるんだけど
殺した事実は消えないから業は残るよ
竜二:俺はどうしたらいいんだ…
樺涅:アナタの業は深い
それこそ、一人二人に感謝されても
取り除かれることはない
骸:見えるかい?その黒い塊が
竜二:あぁ……お前と話してからずっと…
俺を……見てやがる……
けど、分からねぇ
なんでそんなモノに憑かれてんのに、俺は気分が良くなってたんだ?
骸:あれは、キミの意識を変えるため
今はまだ、変な感覚だ、おかしいと
そう思える段階なだけだよ
けど、それが常になればどうなる?
実は俺は最強で、何をやっても上手くいく
そう勘違いして、それが自分の中で本当になって
やがてキミは、現実の境界が壊れる
竜二:現実の境界…?
樺涅:何をしても上手くいく感覚なんでしょ?
何をしても大丈夫と思うんでしょ?
ねぇ、本当にそれ、大丈夫と思う?
竜二:大丈夫じゃねぇことも、大丈夫に思ってしまう…?
骸:そうだよ
その日をソレは待っているんだ
竜二:クソが!何ですぐに殺さねぇ!
そんなに俺が憎いならさっさと殺せよ!
骸:キミは怪異が、アヤカシが何なのか解ってない
いいかい?人の怨みはそう簡単に取れない
それが怪異になったんだ
虎視眈々とキミが弱って、おかしくなって
自業自得で死ぬのを待っているんだよ
そう簡単に死んで楽になれない
ゆっくり、じっくり、キミを視てるんだ
竜二:……俺は…俺の人生は……何だったんだ……
骸:本人が業を自覚しないと視えないから、勉強になったよ
そういう場合もあるんだね
ま、キミは特殊だけど
樺涅:業はその人、そのものだから
先生の目がよくても視えない
骸:これは特殊な例だよ
普通は視えるし…
徳を積んだことがない人間なんているんだね
樺涅:よく聞いて、本来は業を消せなかった時は、死後に精算される
閻魔の話はソレのこと
このまま死んだらアナタはどうなるか解らない
竜二:どういうことだ…?
樺涅:解るように話すと、地獄に落ちる
なんてことが生温いことになる
アナタの魂の穢れは地獄でも落としきれない
だから、どうなるか解らない
竜二:な、なぁ!なんとかならねぇのか!?
俺は死んでもおかしくなるのか?なぁ!
骸:一つだけ方法はあるよ
生まれ変わるしかない
竜二:死ねってことか?
骸:違う
今までの人生のリセットだよ
竜二:どうすれば良い!?それはどうやってできる?
骸:寺に修行に入る
ちゃんと名のある宗派のね
そして、自分を見つめ、後悔を無くし
人として悟りを開いて業を見つめ直す
多分、今からやれば死ぬまでには、なんとかなるんじゃないかな?
竜二:……そうか
樺涅:意外
もっと反抗するかと思ったのに
骸:コッチの人はこういうの信じてるからね
元々を辿れば関係あるし
僕の知り合いの所を紹介してもいいよ
その代わり、足はちゃんと洗ってね
猶予は2日……それ以上は、その業は抑えられないよ
竜二:あぁ……分かってる
骸:カバネ
樺涅:何?
骸:頼める?
樺涅:いいの?私で
骸:業は蒐集できないから
体験として記録しておくよ
樺涅:本当に修行するだけで大丈夫なの?
骸:大元をカバネが取れば、残った残穢くらいだったら
成功は8割、ってところかな
それに僕の知り合いの所なら、手出しできないだろうし
あとは本人次第だね
樺涅:そっか
……じゃあ、貰うね
樺涅:いただきます
【間】
そして、数日後ーーー。
骸:身体の調子はどう?
樺涅:問題なし
骸:あぁ、そうだ、ちゃんと寺に入ったみたいだよ
樺涅:そうなんだ
珍しいこともあるんだね、徳の無い人間か
骸:人間も怪異も色々ってことだね
さて僕たちにはどれくらいの徳があるんだろうね
樺涅:ありがとう
骸:何?
樺涅:徳をあげる
骸:心の篭ってない感謝に徳は無いよ
樺涅:知ってる
意外、徳を積みたいの?
骸:徳を積むくらいなら
怪異を積み上げた方が僕らしい
樺涅:やっぱり先生がしっくりくる
骸:仕方がないからそれでいいよ
僕に教えられることはないんだけどね
キミは限りなく怪異なんだから
樺涅:じゃあ、先生
ちゃんと最後は蒐集してね
私のこと
骸:うん、いつか必ず
キミの肉を僕の蒐集に加えるよ
業 終
竜二:な、何なんだ!!てめぇらは!!
骸:怪異を蒐め、怪異を識る者…
だよね?カバネ
樺涅:なんで私に聞くの?解らないよ、先生
骸:先生じゃないよ
樺涅:じゃあ、師匠?
骸:それも違うなァ
竜二:なに言ってやがんだ!!ふざけるな!!
話が違うだろ!?お前らは俺を助けるために…
骸:(遮り)助ける?何時?誰が?誰を?
助けるなんて僕は言ってないよ
樺涅:私も言ってない
竜二:……は?
なめてんのか?なぁ!?おい!!!!
骸:五月蠅いよ
竜二:ウッ…また…そ…れか…
じゃあ…てめぇが……死ね
男の怒号に似た銃声が響き渡る――――。
【間】
時は遡り、ある昔の話ーー。
骸:……動けるかい?
樺涅:…………
骸:死んでいるのかい?
樺涅:……
骸:それは、おかしい
僕は視えるんだ
樺涅:アッ…ダ…
骸:うん、ゆっくりでいいよ
樺涅:ダ…レ…?
ナニカに陰惨な姿にされた少女が横たわっていた。
それは、死んでいてもおかしくない状態であった。
しかし、少女の身体はゆっくりと元のカタチを取り戻そうとしていた。
骸:僕は、骸
これは偽名だったり、ハンドルネームだったり、通り名だったり
…まぁ、そんなとこだよ
君は…誰だい?
樺涅:ワタ…シ…は、誰?
骸:名を与えてもいいのかい?
樺涅:解からない…けど、私が解らないの……
名が無いと…私は……
骸:樺涅
樺涅:……え?
骸:キミの名前だよ
樺涅:か……ばね……?
骸:あぁ、今日からそう名乗るといいよ
おいで、とりあえず僕の家に
【間】
現在ーー。
樺涅:お客さん来たよ、先生
骸:先生じゃないよ
骸で良いって言ってるでしょ?
樺涅:あんまり、その名前、呼びたくない
骸:……入って良いよ
竜二:あぁん?なんだ此処ァ…陰気臭ぇな
骸:珍しい人種が来たね
ははっ、興味深いよ
竜二:あ?なんだその言い方は?
骸:常に喧嘩腰じゃないと言葉を使えないのかな?
竜二:テメェ、喧嘩売ってんのか!
樺涅:??
ねぇ、この人は馬鹿なの?
骸:うーん……
カバネ、キミもそう言うこと言うんじゃ無いよ
竜二:お…お前ら……ッッ!!!
もう我慢ならねぇ!コラァ!表出ろや!
骸:ほら、こうなるから
樺涅:……ころす?私を……ころす?
竜二:死ぬほうがいいくらい、ぶん殴ってやるよガキが!
樺涅:あっは…あはは
あははははははは
竜二:な、何笑ってやがんだ……
骸:君みたいな人、別に嫌いじゃないんだけどさ
自己紹介を兼ねて…ね?
竜二:あぁ!?何だって……えっ、アッ…
骸:僕の名前は骸
これはあだ名であり、ハンドルネームであり、二つ名だったり、通り名だったり、異名と
まぁ、そんなもんだよ
竜二:な…んだ、お前の……目ぇ…は…ッッ
骸:凄いね、胆力というか何と言うか
違うか、そういうの根性があるって言うんだっけ?
竜二:グッ……あっ…やめ…ろ!
骸:はい、おしまい
竜二:ゼェ…ゼェ……
樺涅:目を視せたの?
骸:挨拶、みたいなものだよ
竜二:……いい、確信した
お前らなら、預けられる
樺涅:上から目線、依頼したのはそっち
竜二:クソガキが……
いや、筋を通してねぇのは俺か…
骸:立ち話もなんだから、座ろうか
あぁ、棚には触らないでくれ
危険なモノも有るからね
【間】
竜二:俺は、島根 竜二だ
オヤジから話があって
ある組の事務所にタマを取りに行ったんだ
骸:今は聞かない話だけど、何年前の話だい?
竜二:いや、昔って訳じゃねぇ
確かに暴対法が出来ちゃいるが、無い話でもねぇんだ
樺涅:難しい話、わたし解らない
骸:カバネは聞いてるだけでいいよ
竜二:それで、言われたとこ行ったんだが
ただ、その頭が居なくてな
見られた組員3人を殺した
骸:人殺しの相談なら警察をお薦めするよ
竜二:ちげぇ!この後だ
俺は鉄砲玉だと自分のことを思ってたが、オヤジからしたら使えると判断したんだろうな
下っ端の奴を代わりにムショに入れた
俺ァ、自分がムショに行っても、別によかったんだが
……その下っ端の奴がムショに入ってから、おかしなことが起こり始めた
樺涅:おかしなこと?
竜二:あぁ、身体が重く感じたのが最初だ
殺しをした後だったし、疲れかと思った
ただ、逆に……これは冗談とかじゃねーから
喧嘩売ってくんなよ?
樺涅:最初から喧嘩なんて売ってない
あなたがそう感じてるだけ
竜二:…続けるぞ
逆に、絶好調になることがあるんだ
マジで冗談じゃなくて俺、最強だと
そう思うくれぇ、強くなれた気分になるんだ
骸:それは、精神科の受診をお薦めするけど?
竜二:だから!そんなんじゃねぇんだよ!
骸:……カバネ、視えてる?
樺涅:全然、何も
竜二:な、なぁ!お前ら知ってるんだろ?
そういうやつのこと
骸:知ってる
ただ、この場所は結界みたいなもので
幽霊なんかは入ってこれないんだけど……
正直に言うのと、遠回しに言うの
どっちがいい?
竜二:そりゃ、正直に話せよ
樺涅:あなたから全く、霊の感じがしない
それは先生も一緒だと思う
視えないし、匂いもない
骸:骸だよ、カバネ
けど、同意見
確かに霊は入ってこれないけど
君に取り憑いた形跡すら無いんだよ
だから、取り憑かれすらしてない
竜二:じゃあ!俺のこれは精神病だと言いてぇのか!?
骸:普通は
そうだね……ちょっと待ってて
そういうと、どこかに電話をかける骸
骸:あ、織紙?
最近、誰かに売ったかい?
例えば…裏側の方に…うん、そう
いや、少し厄介な件でね
うん、また
樺涅:どう?ダメだった?
骸:霊でも呪いでもないなら、妖怪…かな
樺涅:妖怪……
骸:あぁ、カバネは無理しなくてもいいよ
樺涅:大丈夫
竜二:なぁ!何か分かったのか!?
骸:少し調べたいから、普通に生活しててくれる?
命の危険は無いからさ
竜二:何で言い切れる?
骸:そういうものだよ
僕を頼るなら、僕のやり方に文句は言わないで信頼してくれると助かるんだけど
竜二:分かった……
テメェらを信じる
樺涅:またこちらから連絡する
その言葉に不満を覚えつつ、竜二は退店するーー。
骸:視えるかい?
樺涅:ううん、やっぱり視えない
骸:ハハッ、ちょっと面白そうな話だね
【間】
暫くしてーー
竜二:あー、クソ
事務所来んなってオヤジも何考えてんだ
今動かねぇと、俺がした意味ねぇだろうが
……ヒヒッ、ヒヒヒ
あー……何でも出来そうだなァ……
竜二の様子を遠くから観察している二人
樺涅:あ、雰囲気変わった
骸:あれが俺最強モードかな?
樺涅:一瞬だった
けど取り憑かれてないよ
骸:近くに気配もないね
僕の目に視えないはずはないし
樺涅:近くにいない?
別の場所から何かしてる?
骸:……あぁ、そっか
その手があるか
樺涅:何か解ったの?
骸:ま、見方を変えれば分かる話、か
カバネ、このまま観察続けてて
僕は準備してくるよ
【間】
竜二:よぉ、遅ぇんじゃねぇか?
樺涅:何か変わったことは?
竜二:あぁ、特になかったが
言ってた…あれ、だ…あれ
二回くらいか?
樺涅:そう
竜二:んだよ、聞いといてその反応
樺涅:別に
竜二:それより、アイツは?
あの白髪の……骸、だったか?
骸:覚えててくれて、ありがとう
さ、準備は終わったよ
竜二:なんだ、居たのかよ
骸:ここでは無理そうだ
少し人気の無いところに行こうか
【間】
ある森の中を三人は歩く
竜二:……
樺涅:何も言わないの?
竜二:……あ?その言葉が出るってことは
テメェらは此処が何処か知ってんのか?
骸:どういうこと、かな?
竜二:俺はテメェらを信じるって決めた
だから、やることに一々文句はねぇ
だから黙ってた
樺涅:それが筋を通すってこと?
竜二:あぁ、そうだ
だがな、冗談とかふざけてやってんなら、俺はお前らを殺す
骸:殺す……ね
僕たちを殺してどうするの?
また別の、僕たちみたいなのに頼むの?
竜二:いや、もう頼らねぇ
どうせお前らみたいに、全員頭が逝ってんだろ?
樺涅:あはは、頭が逝ってるのはどっちかな?
竜二:吐け
隠し持っていた拳銃を取り出す竜二
竜二:なんで俺を此処に連れてきた
骸:……此処は君達が、よく隠し場所にする山みたいだね
竜二:なんでそれを知ってる?
骸:仕事柄、かな
竜二:とぼけんな!!
組員じゃねぇお前がなんで分かるんだ!
骸:調べたからだよ
キミたちは結構過激派だね
竜二:ハッ!今までに殺った奴から聞いたとかぬかすか?
幽霊とか見えるもんなお前らは
骸:あながち間違いじゃ無いよ
樺涅:殺された人が全員、霊として残るわけじゃ無い
だけど、残る霊もいるよ
ソレと対話できるのは特別な人だけ
竜二:ふざけんな!だとしても、何で此処だ!
樺涅:そんなモノ持ってるからでしょ?
人気のある場所でも出すの?ソレ
竜二:ッッ
骸:ハハハ!殺した後、処理し易くていいでしょ?
竜二:何言ってやがんだ
死ぬ気か?
骸:いや、全く
そうだね、君に取り憑いているモノのせいかな
竜二:あ?俺には何も取り憑いてないって
テメェが言ったんだろ?
骸:あぁ、霊や呪いをかけられてるわけでもない
妖怪の仕業ってわけでもなさそうだ
竜二:じゃあ、何でこんな場所に
骸:(遮って)懺悔だよ、島根 竜二
此処はオマエの懺悔室だ
凄く面白い話だ
霊でも呪いでも妖怪でも無い
何に懺悔するのか解るかい?
樺涅:どうせ気づかない、気づけない
気づこうともしない
だから、アナタは解らない
骸:時間は無いよ
気づけるかい?キミを狂わせている原因が何か
樺涅:答えてみてよ、ねぇ、ほら
竜二:な、何なんだ!!てめぇらは!!
骸:怪異を蒐め、怪異を識る者…
骸:だよね?カバネ
樺涅:なんで私に聞くの?解らないよ、先生
骸:先生じゃないよ
樺涅:じゃあ、師匠?
骸:それも違うなァ
竜二:なに言ってやがんだ!!ふざけるな!!
話が違うだろ!?お前らは俺を助けるために…
骸:(遮り)助ける?何時?誰が?誰を?
助けるなんて僕は言ってないよ
樺涅:私も言ってない
竜二:……は?
なめてんのか?なぁ!?おい!!!!
骸:五月蠅いよ
竜二:ウッ…また…そ…れか…
じゃあ…てめぇが……死ね
骸の目を見、苦しむ中、それは
男の怒号に似た銃声が響き渡る――――。
骸:……褒めてあげるよ
僕に視られながら引き金を引けたことは
竜二:ヒ……ヒヒッ……
やっぱり、俺は……ヒヒヒ
樺涅:………
銃弾は樺涅に当たり、頭を撃たれ倒れている
骸:あぁ、それか
いいタイミングで変わったんだね
竜二:ヒヒ、次はお前だよ
骸:じゃあ、話をしようか
大事な話を
竜二:あぁ?……っ!?
う、動け……ねぇ……
骸:今は僕とキミだけだ
ゆっくり話をしよう
竜二:…んだ…これ…
骸:キミは幽霊と妖怪の違いが解るかい?
解らないだろうから教えてあげるよ
大体の場合、幽霊は実体が無いものを指し、妖怪は実体が有るものを指す
竜二:何の…話だ…
骸:この言葉通り、人に霊が害をなす時と、妖怪が害をなす時では違いがある
幽霊は基本透けているって表現されるように
実体が無いから人に触れられない
じゃあ、どうするか
そう、精神的な霊障を起こす
竜二:あぁ!?じゃあ俺のこれは霊の仕業じゃねぇか
骸:まぁ、聞きなよ
逆に妖怪の場合は実体があるから、物理的なことがある
ただ、そうじゃない場合がある
ゲームをしたことはあるかい?RPGとか
竜二:ゲームだと?ふざけてんのか?
骸:今話したのは低レベルの幽霊や妖怪の話だよ
ゲームはレベルが上がると強くなるよね
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じゃあ妖怪か!?俺は何に取り憑かれてんだ!
骸:僕は最初、取り憑かれた様子もないキミを観察した
近くに居れば、僕に視えないわけがないからね
だから、遠くからキミを操っているのかとも思った
そういう能力がある霊か、妖怪か
竜二:レベルの高い奴ってのか?
骸:だけど、違った
そういうモノも視えなかった
だから次は、キミを調べた
竜二:俺を……調べた?
骸:キミは3人殺しておかしくなったと言った
だけど、違うよね?昔にもっと殺してる
7人、だったかい?
竜二:なんで……知って
骸:キミに取り憑いているのはね
業、だよ
竜二:業…?
骸:人の罪、みたいなモノだ
人は悪いことをすると業を背負う
それはキミだけじゃない、生きているモノ全部だ
じゃあ、他にも殺しをした人が同じような苦しみを持っているか
答えは、持っていない
竜二:じゃあ、何で俺だけこんな事になってんだ?
偶々とか、偶然とか
そんなクソみてぇなことじゃねぇよな!?
骸:人は悪いことをすると業を背負う
だけど、良いことをすれば徳を積むんだ
それで業を徳で相殺していくんだよ
だけど、キミは違うね?
キミは、徳を積んで無い
竜二:……は?
骸:キミは生まれてから今まで
人に有難うと感謝されたことはあるかい?
竜二:……………
骸:徳を積むには色んな方法がある
一番簡単な方法が、感謝だよ
竜二:俺……は…
……たしかに…殺しをした後、オヤジにも……
骸:ありがとう、よく頑張った、よくやってくれた、助かった
……労いの言葉すら無かったかい?
竜二:……あぁ……
骸:殺しだけじゃ無い
キミが今まで犯した罪が相殺されずに、塊になってキミを狂わせている
ハハ!それに追加だ
キミは樺涅も殺した
竜二:ッ……俺は!
樺涅:死んでない
竜二:うわぁぁぁ!?なんだ!?
樺涅:ん…ちょっと待って……
撃たれた頭の傷が塞がっていく
竜二:バ…バケモノ……
樺涅:そう、私は死なないの
ううん、死ねないの
竜二:なんなんだよ……お前らは…
骸:と、まぁカバネは生きてるんだけど
殺した事実は消えないから業は残るよ
竜二:俺はどうしたらいいんだ…
樺涅:アナタの業は深い
それこそ、一人二人に感謝されても
取り除かれることはない
骸:見えるかい?その黒い塊が
竜二:あぁ……お前と話してからずっと…
俺を……見てやがる……
けど、分からねぇ
なんでそんなモノに憑かれてんのに、俺は気分が良くなってたんだ?
骸:あれは、キミの意識を変えるため
今はまだ、変な感覚だ、おかしいと
そう思える段階なだけだよ
けど、それが常になればどうなる?
実は俺は最強で、何をやっても上手くいく
そう勘違いして、それが自分の中で本当になって
やがてキミは、現実の境界が壊れる
竜二:現実の境界…?
樺涅:何をしても上手くいく感覚なんでしょ?
何をしても大丈夫と思うんでしょ?
ねぇ、本当にそれ、大丈夫と思う?
竜二:大丈夫じゃねぇことも、大丈夫に思ってしまう…?
骸:そうだよ
その日をソレは待っているんだ
竜二:クソが!何ですぐに殺さねぇ!
そんなに俺が憎いならさっさと殺せよ!
骸:キミは怪異が、アヤカシが何なのか解ってない
いいかい?人の怨みはそう簡単に取れない
それが怪異になったんだ
虎視眈々とキミが弱って、おかしくなって
自業自得で死ぬのを待っているんだよ
そう簡単に死んで楽になれない
ゆっくり、じっくり、キミを視てるんだ
竜二:……俺は…俺の人生は……何だったんだ……
骸:本人が業を自覚しないと視えないから、勉強になったよ
そういう場合もあるんだね
ま、キミは特殊だけど
樺涅:業はその人、そのものだから
先生の目がよくても視えない
骸:これは特殊な例だよ
普通は視えるし…
徳を積んだことがない人間なんているんだね
樺涅:よく聞いて、本来は業を消せなかった時は、死後に精算される
閻魔の話はソレのこと
このまま死んだらアナタはどうなるか解らない
竜二:どういうことだ…?
樺涅:解るように話すと、地獄に落ちる
なんてことが生温いことになる
アナタの魂の穢れは地獄でも落としきれない
だから、どうなるか解らない
竜二:な、なぁ!なんとかならねぇのか!?
俺は死んでもおかしくなるのか?なぁ!
骸:一つだけ方法はあるよ
生まれ変わるしかない
竜二:死ねってことか?
骸:違う
今までの人生のリセットだよ
竜二:どうすれば良い!?それはどうやってできる?
骸:寺に修行に入る
ちゃんと名のある宗派のね
そして、自分を見つめ、後悔を無くし
人として悟りを開いて業を見つめ直す
多分、今からやれば死ぬまでには、なんとかなるんじゃないかな?
竜二:……そうか
樺涅:意外
もっと反抗するかと思ったのに
骸:コッチの人はこういうの信じてるからね
元々を辿れば関係あるし
僕の知り合いの所を紹介してもいいよ
その代わり、足はちゃんと洗ってね
猶予は2日……それ以上は、その業は抑えられないよ
竜二:あぁ……分かってる
骸:カバネ
樺涅:何?
骸:頼める?
樺涅:いいの?私で
骸:業は蒐集できないから
体験として記録しておくよ
樺涅:本当に修行するだけで大丈夫なの?
骸:大元をカバネが取れば、残った残穢くらいだったら
成功は8割、ってところかな
それに僕の知り合いの所なら、手出しできないだろうし
あとは本人次第だね
樺涅:そっか
……じゃあ、貰うね
樺涅:いただきます
【間】
そして、数日後ーーー。
骸:身体の調子はどう?
樺涅:問題なし
骸:あぁ、そうだ、ちゃんと寺に入ったみたいだよ
樺涅:そうなんだ
珍しいこともあるんだね、徳の無い人間か
骸:人間も怪異も色々ってことだね
さて僕たちにはどれくらいの徳があるんだろうね
樺涅:ありがとう
骸:何?
樺涅:徳をあげる
骸:心の篭ってない感謝に徳は無いよ
樺涅:知ってる
意外、徳を積みたいの?
骸:徳を積むくらいなら
怪異を積み上げた方が僕らしい
樺涅:やっぱり先生がしっくりくる
骸:仕方がないからそれでいいよ
僕に教えられることはないんだけどね
キミは限りなく怪異なんだから
樺涅:じゃあ、先生
ちゃんと最後は蒐集してね
私のこと
骸:うん、いつか必ず
キミの肉を僕の蒐集に加えるよ
業 終
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