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僕の母様と父様

18.ベビーシッター ソラ

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マシュー様と殿下は僕とエディスにリオン様とリカルド様を預け、温泉を堪能しに行ってしまった。

恐らく生まれて初めてだろうここぞとばかりに拗ねたルナは、お祖父様に抱っこされたまま皆と一緒に行ってしまった。
と言うのも拗ねたルナが「じぃじと一緒に居る。」と宣言したからだ。僕が何も言わなかったお陰か少し悲しい顔をしたけれど、敢えて知らんぷりした。

わがままばかりで迷惑かけていないだろうか、不安だけが残るけれど、あまり僕と離れ離れにした事が無かったから少しでも成長すればいいと思ったのだが、それも無さそうだ。僕が居ないと言っても所詮一番年下。しかも子供はルナだけ。甘えさせられちゃうか。

僕たちは温泉施設の宿泊施設がある建物の小さい子向けの広めの室内遊戯場に居る。
ここに居るのは、リオン様とリカルド様とエディスと僕。それに、子息様達のお世話係に2名、護衛が全部で6名。殿下のお子様だから1人につき2名護衛と、母様が用意した2名の護衛だ。うん、凄い人数。

ここには布で作った大きめのボールや噛み噛み出来るように木で作った人形、床がなだらかに丘みたいになってるところもある。

手洗い場や小さな浴場もあって小さい子が居る人にとっては便利な空間だと母様が自慢げに語っていた 。あと、カミカミ人形のお陰で噛まれて怪我しないって豪語してたけど、そもそも噛む子って歯が生え始めてムズムズしてる子だよね?そんなちっちゃい子に噛まれて怪我するのかな?皮膚の方が強いと思うんだよね。

そういえば殿下が母様にリカルド様を押し付けてたけど頑なに抱っこしようとはしなかったな。

もしかしてヒト族って肌が繊細なのかな?

「みぃー、みぃー。」

「リオン様どうしました?」

突然腕の中ですやすや眠っていたリオン様が起きて何かを訴えて来た。

「みぃー、みぃー。」

「んー?何だろう?鳴き声可愛いけど何を訴えられてるのか、全くわかんない。」

必死に僕に向かって訴えてきてくれるんだけど、何を訴えられてるか分からない。
困惑してお世話係さんの方を見るとカバンから何かを出して準備をしてる。

哺乳瓶とミルク?そっか、リオン様はお腹が空いたー!って訴えてたんだ!

「みゃあ!みゃあ!」

リカルド様もミルクの準備を見てお世話係さんの方へと駆け出して行った。

双子なのに鳴き方は全然違うんだなぁ、と感心しつつ、リオン様も床に降ろす。
ところが、リカルド様と違ってお世話係さんの方へは行かず、ずっと僕に向かって「みぃー!みぃー!」と先程より強く訴えてくる。

「ふふ、どうやらリオン様はソラ様からミルクを貰いたいようですね。」

お世話係さんがリオン様の様子を見て僕に哺乳瓶を差し出した。
受け取ったそれはほんのり暖かくてなんだか甘い香りがする。

「え、でも僕ミルクを誰かにあげたこと無いんですけど。」

「乳首を下に向けたら直ぐ吸い付いて来るので、あとは飲みやすいように角度を調整してあげれば大丈夫ですよ。」

哺乳瓶の吸うところって乳首って言うんだ、と知らなかった知識に吃驚しつつ、言われた通りにしてみると、リオン様はかぷっと勢いよく咥えてちゅうちゅう吸い始める。

飲みやすい角度はここかな?とちょっと角度を変えてみると、ミルクの減るスピードがぐんっと早くなった。

「けぷっ。」

あっという間に飲み干して可愛いゲップを披露された。よく見るとさっきよりもお腹がぽっこりして丸いフォルムになっている。

これはこれで可愛いなぁ、と思って見てたら今度は地面をクンクン嗅いで、辺りを歩き回り始めた。

「こ、これはどういう事!?」

「それはおしっこの合図です。きちんと連れて行ってあげればご自身でなさいますよ。」

言われた通りにお手洗いに連れていくと、見るな!と言わんばかりに「み゙ー!」と強く鳴かれて「う、後ろ向いてるね。」と少し視線を外した間に、本当に自分でしたらしい。
少し待ってたら終わったよと言わんばかりに「みゃっ!」と声をかけられた。

ネコ種が凄いのか、王族の躾が凄いのか。
ルナがこれくらいの頃は何でもかんでも世話焼いていたと思う。トイレも上手に出来なくて、母さんが忙しい時とかよく手伝ってたなぁ。

リオン様のお腹は出してしまったからか、ぽっこりお腹が戻ってしまって少し残念。

その後は、リカルド様も混じってかけっこが始まったり、みんなでお昼寝したり、子猫にとってこの室内遊戯場はとても楽しいみたいだ。

母様が豪語してたカミカミ人形も2匹揃って噛み噛みしてた。歯が生え揃っても暫くはムズムズするんだよね。ルナも良く机の脚齧ってたっけ。

見ていて面白かったのが、双子だけれども2人は全然違うこと!先ずは体の大きさもリカルド様の方が大きくてガッシリしてる。と言ってもイヌとは違ってやっぱりふにゃふにゃなんだけれど。そしてリカルド様の方が活発だ。この室内遊戯場に来た時もクンクンしながら部屋を探索し、走り回り、コテコテ転がってた。リオン様は逆に僕にベッタリ。懐いてくれるのはとても嬉しいのだけれど、招待した側としてはリカルド様みたいにお部屋探索して欲しいという気持ちもあったけれど仕方ない。

僕も尻尾で遊んであげたり、ボール転がしてあげたりしてたら、気を使っていた事もあってか、殿下たちが迎えに来る頃には皆でぐっすり眠ってしまっていた。
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