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44.謝罪
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「じゃあ会うのは1回だけで、それ以降は邸に近付かない、もう会わないっていう制約をかければいいよ。」
ウィリアムさんはあっけからんとそう言った。
「⋯⋯そういう事も出来るんですね。」
「まあね。」
僕には全く思いつかなかった。そっか、向こうに委ねる必要は無いんだね。
ただ、迷惑をかけてるのには申し訳ないけど、会うのには時間が欲しい。僕は何をどうしたらいいのか全く分からない。
「1人で会うのが嫌ならブレアに同席してもらえば?」
「⋯⋯ブレアに同席⋯⋯。」
「そうそう。だってあの日街に連れていったのはブレアなんだし、キーリーがこうなったのはブレアの所為でもあるんだから道連れにしちゃいなよ。」
道連れって、ウィリアムさんの思考ってどうなってるのかな。僕では思いつかない事が沢山思いつく。頭の回転が早いって言うやつなのかな。
でも、僕の実父なんだから僕が1人で会うのが当たり前だと思ってたからブレアと一緒になんて思いもしなかった。
ブレアが居てくれると安心するから後で聞いてみようかな。いや、ウィリアムさんの言う通り道連れにしちゃおう。
そんなこんなで、実父に会う日がやってきた。
僕の心の準備にあれから2週間位時間を貰った。でも、散々悩んだ末のブレアの「別にこっちから話すことないならないでそれでいいじゃないか」という一言で落ち着いた。
まぁ、考えたらそうだよね。向こうが一方的に会いたいって言ってるだけで、僕がお話しすることは何も無いもの。
コンコン
実父が待っているという応接室のドアを叩いて静かに開けた。僕の心臓が緊張で鼓動が早くなって手が震えてしまったから、ドアは静かに開く形になったのだ。
「キーリー!!」
初めて見る小汚い痩せ細ったおじちゃんが、僕の顔を見るなり立ち上がって僕の名を呼んだ。
「⋯⋯⋯。」
小汚な!っていうか思ったより小さい。
と言うのをほぼ初対面の相手に言っちゃダメな事くらい分かっている。でも、何となく朧気に肩車とか抱っことかしてもらっていたような記憶があるから、想像していたよりも小さくて吃驚した。
僕、あの街で暮らしてた時ってこんなに小汚かったのかな?いやいや定期的に兵士の兄ちゃん達に川で水浴びさせられてたからそんな事は無い、はず。
「あ、えと、すみません。僕の中ではほぼ初対面なので⋯。え、えと、とりあえず、お座り下さい。」
初対面のようなものだけど、血の繋がりなのか何なのか、不思議とこの人が実父なんだと、ストンと心に落ちてきた。
だからと言って何かがどう変わるとかは無いんだけれど、とりあえずどういう対応をしたら良いのか悩みつつ吃りながらソファを進めた。
ソファに座る僕の右隣にブレア。ローテーブルを挟んだ反対側のソファに僕の実父が座っている。
僕の実父はまず、ブレアに向き直って深々と頭を下げた。
「ブレア・モラレス様。この度は我が息子のキーリーを伴侶にお選び頂けたこと、誠に幸甚の至りで御座います。」
「ああ。なんてことは無い。今日はキーリーに話があるのだろう?」
「はい。」
それからこちらに向き直って口を開いた。
「キーリー、久しぶり。この前街で元気そうにしていたのを見かけて、パパは凄く嬉しかったんだ。」
「あっ、⋯⋯はい。」
僕、実父の事『パパ』呼びしてたの!?もうなんて呼んだらいいかも分からないし、どんな反応したら良いのかも分かんないよ⋯⋯。
困惑して目が泳ぐ僕を実父は悲しそうに微笑んでから「申し訳なかった」とローテーブルに手を着いて頭を下げて来た。
「あの時お前を守れなくて耳に大怪我を負わせてしまった事、その後帰らなくなってしまった事、あの母親の所に置いて行ってしまった事。全部、今更だけど、すまなかった。」
早口で一気に謝罪内容は、想像通りの内容だった。これは予想が出来ていた、というか実父が僕に謝る事なんてこれしか無いのだ。
「あ、えと、あの、大丈夫なので顔を上げてください。謝られたところで、無かったことには出来ませんから。」
顔を上げた実父の表情は、一瞬ホッとしたような気がしたが、直ぐに苦虫を噛み潰したような表情になった。
「ええとね、町のみんなが優しかったので、実母に育ててもらったというより、町に育ててもらったと言った方が多分近いし、僕より酷い状況の子も沢山見てきた。あと、えと、耳ね、上無いけど、ほら、少し鈍いけどちゃんと動くしちゃんと聞こえる、不便な事は一つもない。今は、えと、ブレアも一緒に居てくれるしね。」
予め応えを用意しておいたから、すんなりとは言えないけど、ちゃんと言えたと思う。ブレアをちらっと見たら優しい笑みが返って来たので、嬉しくて僕もにまにまと顔がにやける。
「そうか。キーリーの今が幸せそうでパパは安心した。」
「うん、僕今が1番幸せ。」
その後は特に何か話し合うわけでもなく、実父はもう一度ブレアにお礼を言って帰って行った。
会うのは今回限りという約束を実父は守り、それ以降実父に会うことは無かった。
ウィリアムさんはあっけからんとそう言った。
「⋯⋯そういう事も出来るんですね。」
「まあね。」
僕には全く思いつかなかった。そっか、向こうに委ねる必要は無いんだね。
ただ、迷惑をかけてるのには申し訳ないけど、会うのには時間が欲しい。僕は何をどうしたらいいのか全く分からない。
「1人で会うのが嫌ならブレアに同席してもらえば?」
「⋯⋯ブレアに同席⋯⋯。」
「そうそう。だってあの日街に連れていったのはブレアなんだし、キーリーがこうなったのはブレアの所為でもあるんだから道連れにしちゃいなよ。」
道連れって、ウィリアムさんの思考ってどうなってるのかな。僕では思いつかない事が沢山思いつく。頭の回転が早いって言うやつなのかな。
でも、僕の実父なんだから僕が1人で会うのが当たり前だと思ってたからブレアと一緒になんて思いもしなかった。
ブレアが居てくれると安心するから後で聞いてみようかな。いや、ウィリアムさんの言う通り道連れにしちゃおう。
そんなこんなで、実父に会う日がやってきた。
僕の心の準備にあれから2週間位時間を貰った。でも、散々悩んだ末のブレアの「別にこっちから話すことないならないでそれでいいじゃないか」という一言で落ち着いた。
まぁ、考えたらそうだよね。向こうが一方的に会いたいって言ってるだけで、僕がお話しすることは何も無いもの。
コンコン
実父が待っているという応接室のドアを叩いて静かに開けた。僕の心臓が緊張で鼓動が早くなって手が震えてしまったから、ドアは静かに開く形になったのだ。
「キーリー!!」
初めて見る小汚い痩せ細ったおじちゃんが、僕の顔を見るなり立ち上がって僕の名を呼んだ。
「⋯⋯⋯。」
小汚な!っていうか思ったより小さい。
と言うのをほぼ初対面の相手に言っちゃダメな事くらい分かっている。でも、何となく朧気に肩車とか抱っことかしてもらっていたような記憶があるから、想像していたよりも小さくて吃驚した。
僕、あの街で暮らしてた時ってこんなに小汚かったのかな?いやいや定期的に兵士の兄ちゃん達に川で水浴びさせられてたからそんな事は無い、はず。
「あ、えと、すみません。僕の中ではほぼ初対面なので⋯。え、えと、とりあえず、お座り下さい。」
初対面のようなものだけど、血の繋がりなのか何なのか、不思議とこの人が実父なんだと、ストンと心に落ちてきた。
だからと言って何かがどう変わるとかは無いんだけれど、とりあえずどういう対応をしたら良いのか悩みつつ吃りながらソファを進めた。
ソファに座る僕の右隣にブレア。ローテーブルを挟んだ反対側のソファに僕の実父が座っている。
僕の実父はまず、ブレアに向き直って深々と頭を下げた。
「ブレア・モラレス様。この度は我が息子のキーリーを伴侶にお選び頂けたこと、誠に幸甚の至りで御座います。」
「ああ。なんてことは無い。今日はキーリーに話があるのだろう?」
「はい。」
それからこちらに向き直って口を開いた。
「キーリー、久しぶり。この前街で元気そうにしていたのを見かけて、パパは凄く嬉しかったんだ。」
「あっ、⋯⋯はい。」
僕、実父の事『パパ』呼びしてたの!?もうなんて呼んだらいいかも分からないし、どんな反応したら良いのかも分かんないよ⋯⋯。
困惑して目が泳ぐ僕を実父は悲しそうに微笑んでから「申し訳なかった」とローテーブルに手を着いて頭を下げて来た。
「あの時お前を守れなくて耳に大怪我を負わせてしまった事、その後帰らなくなってしまった事、あの母親の所に置いて行ってしまった事。全部、今更だけど、すまなかった。」
早口で一気に謝罪内容は、想像通りの内容だった。これは予想が出来ていた、というか実父が僕に謝る事なんてこれしか無いのだ。
「あ、えと、あの、大丈夫なので顔を上げてください。謝られたところで、無かったことには出来ませんから。」
顔を上げた実父の表情は、一瞬ホッとしたような気がしたが、直ぐに苦虫を噛み潰したような表情になった。
「ええとね、町のみんなが優しかったので、実母に育ててもらったというより、町に育ててもらったと言った方が多分近いし、僕より酷い状況の子も沢山見てきた。あと、えと、耳ね、上無いけど、ほら、少し鈍いけどちゃんと動くしちゃんと聞こえる、不便な事は一つもない。今は、えと、ブレアも一緒に居てくれるしね。」
予め応えを用意しておいたから、すんなりとは言えないけど、ちゃんと言えたと思う。ブレアをちらっと見たら優しい笑みが返って来たので、嬉しくて僕もにまにまと顔がにやける。
「そうか。キーリーの今が幸せそうでパパは安心した。」
「うん、僕今が1番幸せ。」
その後は特に何か話し合うわけでもなく、実父はもう一度ブレアにお礼を言って帰って行った。
会うのは今回限りという約束を実父は守り、それ以降実父に会うことは無かった。
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