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29.ブラッシング担当員
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僕は今外でデリアのブラッシングをしている。
目の前では優雅に馬に乗るブレア。僕は少し拗ねながらデリアの鬣を台に乗って上からブラッシングをしているのだ。
僕も乗りたかった。初めての練習ってそもそも乗るのかどうかも分からなかったけれど、何となく今日から乗れるものだと思ってた。
「馬って乗るのにも準備がいるんだね⋯。」
朝の浮かれた勢いはどこへやら。朝食の席で皆に乗るって言っちゃったんだよなぁ。皆に頑張れって応援され挙句にこれか。今日はデリアのブラッシングで終わりだ。意気消沈してデリアにもたれ掛かる。僕の体重がかかってもビクともしない筋肉を撫でた。
「っはー、すごい筋肉。立派だなぁ。」
⋯⋯乗りたかったなぁ。乗るだけでもしたかった。
馬に乗るには様々な道具や準備がいる事を知った。デリアに装着する鞍とハミ。鞍は僕が座るところでハミはデリアの口に付けて手綱と連結させて操縦するやつね。厩舎に既に色々用意されていて、デリアのサイズにあったものがすぐ用意出来るからデリアの方は直ぐに準備が整った。
けれども僕はそうじゃなかった。何代目かは知らないけれど、ここは代々続くワイルドキャット一族のお邸だ。ワイルドキャットとただの野良ネコじゃサイズが全く違うんだよ。骨身の太さがまず違うし、筋肉の付き方も違うし。要するに僕に合う練習着が無かった。練習用のブーツとピッタリパンツの事ね。僕のサイズのものはあったけどどれもぶかぶかだったのだ。恐るべしワイルドキャット一族め。
仕方なく今日の乗馬は諦めたのだが、ヤニックが「見るのも勉強ですよ」なんて余計な一言を言うものだから、僕は残念な気持ちを抱えたままデリアをブラッシングしながらブレアの乗馬を見る羽目になった。
デリアはまぁ仲を深める為を思えば嫌でもない、むしろもっと仲良くなりたい。ブラッシングで仲良くなれるならどんどんやってあげるよ。まだ2日目だけど。でも、乗れない僕を差し置いて視界の端で優雅にジャンプを決めるブレアを見る必要があるのだろうか。しかも何故か障害物コースを周回している。ずるい、僕も跨るだけでも乗りたかった。悔しくて僕はデリアのブラッシングに忙しい振りをした。
「って言うかさぁ、練習着が必要なら事前に準備くらいして欲しいよ~。」
デリアには悪いが飽きて来た。なんだかんだここの環境に慣れて図々しいことも言えるようになってきたなぁと思いながら愚痴を零す。本人目の前にしては絶対無理だけどね。結局僕の練習着はこの後採寸して作ってもらう予定だ。
「デリアの毛並みはさらさらで艶々で立派だねぇ。」
よしよしと褒めると心做しか胸を張ったように見えた。うん、絶対言葉通じてるよね。今のはさながら どやぁ って感じがしたもの。でも言った言葉に反応が帰ってくるのは素直に嬉しい。どんどん話しかけたくなってくる。
「僕、乗馬初めてだからお手柔らかにお願いね。たくさん練習してお外行こうね。ここの領地、自然豊かだからきっと走ったら気持ちいいよね。」
僕の言葉に今度はぶるるっと鼻を鳴らす。
これは 精々頑張りなって言われてるみたいだ。
うん、僕頑張るよ。
「明日も来るね。またね。」
ブレアが馬から降りて来たので挨拶をしてその場を離れる。
「もう仲良くなったのか、流石だな。」とブレアは言うけど、僕今日はただのお世話係だったんだけどね。それもブラッシング専用員。
「ねぇ、明日は乗れる?」
これから採寸なのに練習着が直ぐに出来ないことくらいは分かっているが、もしかしたらがあるかもしれないと思って聞いてみたが返ってきた答えは「いやさすがに明日は無理だなぁ」だった。
ですよね、うん、分かって聞いたんだよ僕は。
「じゃあ明日は俺の馬と相乗りするか?」
「僕はデリアに乗りたいの。」
乗れるようになったらどこへ行こうかな。
遠出はもちろんだけど、ピクニックとか、山にも行きたいな。海はないけど湖とかあるかな?僕お魚好きだから釣りしたいな!ワイルドにその場で焼いて食べるの!すごく楽しそう!
次々と行きたいところ、やりたい事が浮かんでくる。
「ブレア、僕早く乗れるようになりたいから練習にしっかり付き合ってよね!」
明日も多分乗れないけど、デリアと親交を深めるために来る予定だ。ブレアにしっかり指導をお願いして今日は邸へ帰った。
目の前では優雅に馬に乗るブレア。僕は少し拗ねながらデリアの鬣を台に乗って上からブラッシングをしているのだ。
僕も乗りたかった。初めての練習ってそもそも乗るのかどうかも分からなかったけれど、何となく今日から乗れるものだと思ってた。
「馬って乗るのにも準備がいるんだね⋯。」
朝の浮かれた勢いはどこへやら。朝食の席で皆に乗るって言っちゃったんだよなぁ。皆に頑張れって応援され挙句にこれか。今日はデリアのブラッシングで終わりだ。意気消沈してデリアにもたれ掛かる。僕の体重がかかってもビクともしない筋肉を撫でた。
「っはー、すごい筋肉。立派だなぁ。」
⋯⋯乗りたかったなぁ。乗るだけでもしたかった。
馬に乗るには様々な道具や準備がいる事を知った。デリアに装着する鞍とハミ。鞍は僕が座るところでハミはデリアの口に付けて手綱と連結させて操縦するやつね。厩舎に既に色々用意されていて、デリアのサイズにあったものがすぐ用意出来るからデリアの方は直ぐに準備が整った。
けれども僕はそうじゃなかった。何代目かは知らないけれど、ここは代々続くワイルドキャット一族のお邸だ。ワイルドキャットとただの野良ネコじゃサイズが全く違うんだよ。骨身の太さがまず違うし、筋肉の付き方も違うし。要するに僕に合う練習着が無かった。練習用のブーツとピッタリパンツの事ね。僕のサイズのものはあったけどどれもぶかぶかだったのだ。恐るべしワイルドキャット一族め。
仕方なく今日の乗馬は諦めたのだが、ヤニックが「見るのも勉強ですよ」なんて余計な一言を言うものだから、僕は残念な気持ちを抱えたままデリアをブラッシングしながらブレアの乗馬を見る羽目になった。
デリアはまぁ仲を深める為を思えば嫌でもない、むしろもっと仲良くなりたい。ブラッシングで仲良くなれるならどんどんやってあげるよ。まだ2日目だけど。でも、乗れない僕を差し置いて視界の端で優雅にジャンプを決めるブレアを見る必要があるのだろうか。しかも何故か障害物コースを周回している。ずるい、僕も跨るだけでも乗りたかった。悔しくて僕はデリアのブラッシングに忙しい振りをした。
「って言うかさぁ、練習着が必要なら事前に準備くらいして欲しいよ~。」
デリアには悪いが飽きて来た。なんだかんだここの環境に慣れて図々しいことも言えるようになってきたなぁと思いながら愚痴を零す。本人目の前にしては絶対無理だけどね。結局僕の練習着はこの後採寸して作ってもらう予定だ。
「デリアの毛並みはさらさらで艶々で立派だねぇ。」
よしよしと褒めると心做しか胸を張ったように見えた。うん、絶対言葉通じてるよね。今のはさながら どやぁ って感じがしたもの。でも言った言葉に反応が帰ってくるのは素直に嬉しい。どんどん話しかけたくなってくる。
「僕、乗馬初めてだからお手柔らかにお願いね。たくさん練習してお外行こうね。ここの領地、自然豊かだからきっと走ったら気持ちいいよね。」
僕の言葉に今度はぶるるっと鼻を鳴らす。
これは 精々頑張りなって言われてるみたいだ。
うん、僕頑張るよ。
「明日も来るね。またね。」
ブレアが馬から降りて来たので挨拶をしてその場を離れる。
「もう仲良くなったのか、流石だな。」とブレアは言うけど、僕今日はただのお世話係だったんだけどね。それもブラッシング専用員。
「ねぇ、明日は乗れる?」
これから採寸なのに練習着が直ぐに出来ないことくらいは分かっているが、もしかしたらがあるかもしれないと思って聞いてみたが返ってきた答えは「いやさすがに明日は無理だなぁ」だった。
ですよね、うん、分かって聞いたんだよ僕は。
「じゃあ明日は俺の馬と相乗りするか?」
「僕はデリアに乗りたいの。」
乗れるようになったらどこへ行こうかな。
遠出はもちろんだけど、ピクニックとか、山にも行きたいな。海はないけど湖とかあるかな?僕お魚好きだから釣りしたいな!ワイルドにその場で焼いて食べるの!すごく楽しそう!
次々と行きたいところ、やりたい事が浮かんでくる。
「ブレア、僕早く乗れるようになりたいから練習にしっかり付き合ってよね!」
明日も多分乗れないけど、デリアと親交を深めるために来る予定だ。ブレアにしっかり指導をお願いして今日は邸へ帰った。
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