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21.お茶会
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ブレアには沢山迷惑かけちゃったから、僕と仲良くなりたいと思ってくれてるんなら僕からも歩み寄らなくちゃ。逃げてばかりじゃダメだもんね。
そう思ってお義父さまの申し出を受けたのだが、1週間ほど逃げ回って勝手に肥大した恐怖心は払拭されるはずが無く、どんだけ意識を込めて頑張っても尻尾の先がくるんと丸まってしまっていた。
「お、お招き頂きありがとうございます。」
大丈夫、ブレアが着いてくれている。
この時の僕の心の支えは隣に居るブレアの存在だけだった。
テーブルの上には様々な種類の小さく切り分けられたケーキ、フルーツが並べてられていた。
わぁ、どれも美味しそう!
見た事ないケーキや本の中だけで見てきた光景に少し心が浮上してくる。
「キーリー君はこういうの好きかしら?」
オリヴィアさんに声を掛けられて、緊張しながらも素直に答えた。
「あの、えと、僕、こういうの初めてで、でも、凄く美味しそうで、綺麗で、素敵だと、思いますっ。」
「ふふ、気に入ってくれたら嬉しいわ。早く食べましょ。」
「っ、はい。」
オリヴィアさんが優しそうでホッとする。
実は母以外に歳上の女性とはあまり関わった経験が無くて、物凄く緊張していた。
今までは小さい子や逆に歳をとったお婆さんばっかりだったから。
大丈夫、母とは違う。僕は自分の母親以外にいきなり怒ったり、物を投げてくる人なんて知らない聞いた事ない、大丈夫。
自分で自分に言い聞かせながら席に着いた。
直ぐにそばに仕えていた人が紅茶を煎れてくれる。その紅茶からはリンゴのような爽やかな香りが香ってくる。
「リンゴの紅茶ですか?」
「そうなの!鼻が利くのね、キーリー君は!ケーキは何食べる?どれとどれとどれがいいかしら?」
え、一度に3つも?
オリヴィアさんの勢いに戸惑うながらも言われた通りに3つ選ぶ。
フルーツタルトとショートケーキとクリームをサンドした丸い可愛い色の焼き菓子。
「この丸いのは何ですか?」
「それはね、マカロンと言うのよ。ピンク色のがイチゴ味で、薄い茶色がマロン、濃いのがチョコレートね。さ、食べてみて。」
「あ、軽い。んん!サクサク!美味しい!溶けるように無くなっちゃった!」
オリヴィアさんとキャッキャとお菓子について盛り上がる。
「息子らの嫁が可愛いのぅ。」
僕は正直、お義父様のこの発言までその存在をすっかり忘れていた。目を細めて僕たちを微笑ましく眺める姿はついさっきまで抱いていた恐怖の塊とは似ても似つかない。それはただの好々爺のように見えた。
僕が勝手に怖がってただけで、実際はそうでも無いのかも知れない。
「あ、あの、お義父さま、その、ずっと避けててごめんなさい。」
「あー、あれなぁ。キーリー君は儂と鉢合わせしないように逃げるのが上手で参ったわい。余程、耳の聞こえが良いのと感が鋭いのじゃろうなぁ。」
これは嫌味を言われてるの!?それとも純粋に褒められたの!?どっち!?
判断が付かなくてちらっとブレアに視線を送る。
「あー、父上。それは褒めてるのか何なのか分かりません。」
ブレア!ありがとう!
僕の視線だけで聞きたいことを聞いてくれるブレアには感謝しかない。
「うむ?鬼ごっこが上手で、耳が欠けてても聞こえが良くて安心した、という意味じゃろうが!」
そういう事なの?申し訳ないけどそういう意味には全く受け取れなかった。
「そうならそう言って下さい。回りくどくて何が言いたいのか分かりません。」
僕もブレアに完全同意。
オリヴィアさんもうんうんと頷いている。
「んむぅ。キーリー君、あれは本当に申し訳無かったと思ってるんじゃ。ちょっとした冗談のつもりでな、食事の後に冗談だったと言うつもりじゃったんじゃ。だがそのぅ、ブレアが早々とキーリー君を連れて行ってしまってのぅ、タイミングが無かったというか、なんと言うか。儂はキーリー君と仲良くして貰いたいのだよ。」
僕、頑張って毎回食事には出てたからタイミングは沢山あったと思うんだけど、とは思ったが口には出さずにいた。
口は災いの元という言葉が頭を過ぎったから。
「キーリー君、私もお嫁に来た時に似たような事を言われたのよ。色仕掛け女豹かーって。」
「色仕掛け女豹!?」
僕が口を開かずにいると、オリヴィアさんが私もだったのよと言われた内容を教えてくれたが、もうそれ暴言じゃない!?
「むぅ、2人ともすまんかった。」
僕たち2人に頭を下げるお義父さま。
多分、僕が勝手に怖がっていたお義父さまとは違う人。きっとただの口下手で、人との距離を測るのが難しくて、でも仲間に入りたくてどうしたらいいかわからない人なのかもしれない。
そう考えたら少しだけ心が軽くなった。
仲良くなりたいと思ってくれてるんだから避けないでこれから理解していけばいいんだ。
「あ、大丈夫、です。」
「いや許さなくていいんだぞ。傷つけられたのはキーリーなんだから。」
「私もあの時言われた事は許せませんわ!」
ブレアがいつも僕の味方なのが純粋に嬉しいし、オリヴィアさんも許さないとブレアに追随して僕の味方をしてくれている。
なんだか心がぽかぽか温かい。
「ふふ、嫌な話はそれくらいにして、せっかくのお茶なんですから沢山食べましょ。キーリー君、フルーツタルトはどうだった?紅茶も色んなフレーバーを準備しているのよ 。」
「フルーツたっぷりでとても美味しいです!」
オリヴィアさんの一言で、それからみんなでケーキとお茶を楽しんだ。
そう思ってお義父さまの申し出を受けたのだが、1週間ほど逃げ回って勝手に肥大した恐怖心は払拭されるはずが無く、どんだけ意識を込めて頑張っても尻尾の先がくるんと丸まってしまっていた。
「お、お招き頂きありがとうございます。」
大丈夫、ブレアが着いてくれている。
この時の僕の心の支えは隣に居るブレアの存在だけだった。
テーブルの上には様々な種類の小さく切り分けられたケーキ、フルーツが並べてられていた。
わぁ、どれも美味しそう!
見た事ないケーキや本の中だけで見てきた光景に少し心が浮上してくる。
「キーリー君はこういうの好きかしら?」
オリヴィアさんに声を掛けられて、緊張しながらも素直に答えた。
「あの、えと、僕、こういうの初めてで、でも、凄く美味しそうで、綺麗で、素敵だと、思いますっ。」
「ふふ、気に入ってくれたら嬉しいわ。早く食べましょ。」
「っ、はい。」
オリヴィアさんが優しそうでホッとする。
実は母以外に歳上の女性とはあまり関わった経験が無くて、物凄く緊張していた。
今までは小さい子や逆に歳をとったお婆さんばっかりだったから。
大丈夫、母とは違う。僕は自分の母親以外にいきなり怒ったり、物を投げてくる人なんて知らない聞いた事ない、大丈夫。
自分で自分に言い聞かせながら席に着いた。
直ぐにそばに仕えていた人が紅茶を煎れてくれる。その紅茶からはリンゴのような爽やかな香りが香ってくる。
「リンゴの紅茶ですか?」
「そうなの!鼻が利くのね、キーリー君は!ケーキは何食べる?どれとどれとどれがいいかしら?」
え、一度に3つも?
オリヴィアさんの勢いに戸惑うながらも言われた通りに3つ選ぶ。
フルーツタルトとショートケーキとクリームをサンドした丸い可愛い色の焼き菓子。
「この丸いのは何ですか?」
「それはね、マカロンと言うのよ。ピンク色のがイチゴ味で、薄い茶色がマロン、濃いのがチョコレートね。さ、食べてみて。」
「あ、軽い。んん!サクサク!美味しい!溶けるように無くなっちゃった!」
オリヴィアさんとキャッキャとお菓子について盛り上がる。
「息子らの嫁が可愛いのぅ。」
僕は正直、お義父様のこの発言までその存在をすっかり忘れていた。目を細めて僕たちを微笑ましく眺める姿はついさっきまで抱いていた恐怖の塊とは似ても似つかない。それはただの好々爺のように見えた。
僕が勝手に怖がってただけで、実際はそうでも無いのかも知れない。
「あ、あの、お義父さま、その、ずっと避けててごめんなさい。」
「あー、あれなぁ。キーリー君は儂と鉢合わせしないように逃げるのが上手で参ったわい。余程、耳の聞こえが良いのと感が鋭いのじゃろうなぁ。」
これは嫌味を言われてるの!?それとも純粋に褒められたの!?どっち!?
判断が付かなくてちらっとブレアに視線を送る。
「あー、父上。それは褒めてるのか何なのか分かりません。」
ブレア!ありがとう!
僕の視線だけで聞きたいことを聞いてくれるブレアには感謝しかない。
「うむ?鬼ごっこが上手で、耳が欠けてても聞こえが良くて安心した、という意味じゃろうが!」
そういう事なの?申し訳ないけどそういう意味には全く受け取れなかった。
「そうならそう言って下さい。回りくどくて何が言いたいのか分かりません。」
僕もブレアに完全同意。
オリヴィアさんもうんうんと頷いている。
「んむぅ。キーリー君、あれは本当に申し訳無かったと思ってるんじゃ。ちょっとした冗談のつもりでな、食事の後に冗談だったと言うつもりじゃったんじゃ。だがそのぅ、ブレアが早々とキーリー君を連れて行ってしまってのぅ、タイミングが無かったというか、なんと言うか。儂はキーリー君と仲良くして貰いたいのだよ。」
僕、頑張って毎回食事には出てたからタイミングは沢山あったと思うんだけど、とは思ったが口には出さずにいた。
口は災いの元という言葉が頭を過ぎったから。
「キーリー君、私もお嫁に来た時に似たような事を言われたのよ。色仕掛け女豹かーって。」
「色仕掛け女豹!?」
僕が口を開かずにいると、オリヴィアさんが私もだったのよと言われた内容を教えてくれたが、もうそれ暴言じゃない!?
「むぅ、2人ともすまんかった。」
僕たち2人に頭を下げるお義父さま。
多分、僕が勝手に怖がっていたお義父さまとは違う人。きっとただの口下手で、人との距離を測るのが難しくて、でも仲間に入りたくてどうしたらいいかわからない人なのかもしれない。
そう考えたら少しだけ心が軽くなった。
仲良くなりたいと思ってくれてるんだから避けないでこれから理解していけばいいんだ。
「あ、大丈夫、です。」
「いや許さなくていいんだぞ。傷つけられたのはキーリーなんだから。」
「私もあの時言われた事は許せませんわ!」
ブレアがいつも僕の味方なのが純粋に嬉しいし、オリヴィアさんも許さないとブレアに追随して僕の味方をしてくれている。
なんだか心がぽかぽか温かい。
「ふふ、嫌な話はそれくらいにして、せっかくのお茶なんですから沢山食べましょ。キーリー君、フルーツタルトはどうだった?紅茶も色んなフレーバーを準備しているのよ 。」
「フルーツたっぷりでとても美味しいです!」
オリヴィアさんの一言で、それからみんなでケーキとお茶を楽しんだ。
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