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10.自分自身がわからない

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その後はここで作ってる麦の種類や領内で作ってるもの等聞いたり見たりしながらリリーちゃんや他の子供たちと仲良くしてもらって、午後は収穫に興味があるって言ったら体験までさせて貰えた。

うん、僕は皆の前に出てチヤホヤされるよりも、こうやって誰かの下で働いていた方が気が楽だなぁ、としみじみ思う。根っからの庶民なんだよね、きっと。

久しぶりに体を動かしたからか、馬車の中でうとうとしてしまうのはしょうが無いよね。

「キーリー、疲れたか?」

「はい、久しぶりに体を動かしたので。でも楽しかったし、集落の人たちも良い人ばっかでしたし、連れてきてくれて嬉しいです。」

「ふむ、そうか。それは良かった。では、邸に着くまでに少し練習でもしようか。」

「練習?何のですか?」

練習なんてする事あったっけ?
まぁ、子爵家出身といっても貴族としての教育はこれっぽっちも受けてないから、きっとブレア様から見たら足りない所が沢山あるのだろうけれど、ここ馬車の中だよ?こんなところで出来る練習ってなんだろう?

コテンっとブレア様の顔を見て首を傾げる。

「キーリー、こっちおいで。」

向かい合うように座っていたブレア様は自分の隣をぽんぽんと叩いて隣に来るように促した。

隣同士で練習する事?と思いながら移動するために腰をあげる。

ガタンッ

「うわわっ!?」

腰を上げた直後に馬車が揺れて体制を崩してしまった。
そのままブレア様の方に頭を突っ込む勢いだったが、ガシッと掴まれてブレア様の肉厚な胸筋に顔面を突っ込まずに済んだ。
突っ込んでたら怪我をしたのはきっと僕の方だ。首を痛めるか、鼻を痛めるか、はたまた違うところか、突っ込まずに済んでほっとする。

「す、すみません。」

「そうか、キーリーはこっちの方がいいのだな!」

「えっ?」

ブレア様は僕の脇の下に手を突っ込んでササッと持ち上げて、僕はブレア様の膝の上に座らされる形になった。

え?こっちの方が良いなんて言ってないし、馬車が揺れたタイミングが悪かっただけだし、2人きりだけどこれは凄く恥ずかしいんですけど!

でも、ブレア様の顔が凄く嬉しそうなので何も言えない。
まだお邸までは時間がかかるからきっと慣れる、きっと時間がこの恥ずかしい問題を解決してくれるはず。

「キーリー。」

「ひゃいっ!」

い、いきなり名前呼ばれたから思わず変な声が出てしまった。ブレア様の膝の上だし、隠れるところもないし、いや場所があっても隠れないけど、僕は何で返事もまともに出来ないんだ。か、顔に熱が集まってる気がする。

「私の名前は?」

「え、ブレア様。」

流石にそれは間違えないよ?とまだ熱を感じる顔でキョトンとブレア様を見返す。

「違うだろう?」

え、違うの?違うわけないよね?

ブレア様が何を言ってるのか理解出来なくて首を傾げてキョトンとした。

「ブ、レ、ア、だろう?ほら、言ってごらん?」

「ぁ、ぁ、えと、ブ、ブレ、」

練習ってフランクに話す練習の事!?
あの後結局、みんなの前だし恥ずかしいしって事でフランクに話すことは出来なかった。少し不満そうな顔はしてたけど、直ぐにいつものブレア様に戻ったから気にしてなかったけど、そんなにフランクに接して欲しかったの!?

「私の名前忘れてしまったか?これはお仕置が必要かな?」

中々言えない僕にお仕置を提案したブレア様はセリフに伴わずとても嬉しそうな顔で僕の頭に顔を近づけてきた。

「ふに゙ゃっ!」

今まで感じた事のない感覚に悲鳴に近い声が出た。

ブレア様は僕の欠けた耳を甘噛みしてきたのだ。耳が欠けた所為なのか、感覚の鈍いはずのそこに、しっかりとハミハミとブレア様が甘噛みをする感触がする。

初めての生暖かい感覚に背中がゾワゾワするような、お腹の中がじんわりするようなよく分からない感覚にブレア様の体にしがみついてしまう。

「ひぁぅ、ダメですっ、それ、ブレア様止めて~。」

「んー?」

僕のお願いにとぼけた返事をするブレア様。

「ブ、ブレアっ、やめて、くだひゃあっ。」

最後にペロッとひと舐めしてブレア様の口が離れていった。

「そこまで感覚が鈍い訳では無さそうだな?」

耳を甘噛みされただけなのに、何故か息が上がってはぁはぁとブレア様に凭れかかっている僕に満足気にブレア様は言う。

「ふむ、息が上がるほどの葛藤の上に名前を呼んでくれたのか。少し悲しいな。」

「ち、違います!そういう訳では無いです!」

「ます?です?」

変な勘違いをしたブレアに咄嗟に否定したら語尾を指摘される。

あ、これ邸に着くまでにフランクな喋り方に矯正させられるやつだ。
僕の直感がそう告げた。

「に゙ゃあっ」

僕が言い直すのを待たずに、ブレア様の手がシャツの下に潜り込んで来た。腰と脇腹の中間辺りをさわさわと撫でてくるのにまた変な声が出てしまう。

「そんな声を出して、私に触られるのは嫌か?」

「違います、いや、違うの!ブレアに触られるのが嫌なんじゃなくて、触られると、ゾワゾワってしちゃったりするからで、嫌って訳じゃ、無いんです、っ嫌じゃないの!」

「そうか、それなら触り続けてたら慣れるかもしれないな?」

そう言ったブレア様は嬉しそうな顔で、馬車が邸に着くまで僕の体を触りまくった。

一方僕は、触られたところはムズムズするし、じんじんするし、ぞわぞわしたりしちゃうし、感覚が鈍いはずの耳だってなぜだか鮮明に何されてるか分かっちゃうし、何故か息は上がっちゃうし、体くったりして力が抜けちゃうし、自分でも何でこうなるのかが分からない。

僕の体一体どうしちゃったの~??
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