上 下
82 / 167

今日からまた通常運転です

しおりを挟む
気が付いたらベッドに中でスリスリスリスリとイルに匂い付けされていた。

あれ、いつの間にお風呂出たんだろう?
最初は謎だったこのスリスリ行為も気がつけば普通に気持ちよく感じるようになったなぁ。

イルの頭から石鹸のいい香りがする。

香り、香り、なんだっけ何か忘れてる。香り、・・・匂い?

「あっ、俺匂い落ちた??」
「今俺の匂いで上書きしてる。」

な、なるほど。匂いの上にさらに匂いで誤魔化すって単に臭くならないかな?大丈夫?

「はぁ。もう俺以外の匂い付けてこないでね?」
「うん、ごめんなさい。とりあえず王子殿下からは逃げる事にする。マシュー義兄様はええと、無理かもしれない。。。」
「まぁ、マシュー様はね。ガイの義兄だし難しい事はあるかも知れないけど。王子殿下は本当に辞めてね?ガイは俺のなの。俺のガイ。俺だけのガイ。」

そう言って確かめるように俺にキスを降らせた。

い、今のうちに全部謝っておこう。

「い、イルっ。あのね、勝手に居なくなってごめんなさい。あと、手を叩いちゃったことも。そもそも俺何もイルに言ってないのにイルばっかりに、その、不満をぶつけてて、あ、手腫れたりしなかった?大丈夫?」

なんか言いたいことがしっちゃかめっちゃかになった気がするけど・・・。

「ん。手は大丈夫。俺もガイの事信じてあげられなくてごめんね?」
「でも、俺、イルに何も伝えずに帰らなかったから・・・。」
「うん。それは正直悲しかったよ。でも、ガイも正直、いきなり沢山やらなくちゃいけない事が増えて疲れてたでしょ?」
「え?いや全然元気でしたけど?」
「・・・うん?いや、正直このままどこか行っちゃいたいとか思ってなかった?」
「え!?少しだけだけど、思ったけど。え?別に疲れると関係ないよね?」

イルは俺にスリスリするのを止めて、俺グイッと引き上げて目線を同じ高さにした。

「あのね、ガイ。俺はガイの事責任感が強くて真面目で、自分の仕事を投げ出すような人なんかじゃないって思ってるよ。」
「うん?ありがと?」
「ガイは団長を辞めたら俺とどこか遠くへって話はするけど、仕事を投げ出して遠くへ行きたいなんて普段思わないでしょう?」
「そりゃあね?一応これでも団長ですからね?」
「だからね、少しでもどこか行きたいって思っちゃう事が普通じゃないんだよ。自覚がなくてもどこかしら疲れちゃってるって事。」
「なる、ほど??」
「疲れるのは体だけじゃないからね?」

そう言ってちゅっちゅっと頭にキスが降ってくる。

・・・疲れるのは体でしょ??

「俺も、ガイが疲れてるのに気づいてたけど、あと少しで終わるからって何もしてなくてごめんね。」
「え、イルは何も悪くないよ!確かに休みたいとは思ってたけど、でもどうせやらなくちゃいけないんだし、だったら早く終わらせちゃいたいし。」
「そう、それだよ。そういうガイの思ってる事俺に教えて?別に嫌な思いだけじゃなくて、これして楽しかったとか、こういうのが嬉しいとか、何でも。ね?」
「ん、うん。わかった。」

イルは俺の返事に満足したのか、にっこり笑ってまた俺にスリスリし始めた。

「俺まだ匂い落ちない?」
「ん?だいぶ落ちたよ。ガイが俺の匂いを纏ってるのが好きだから、沢山付けてる。」
「えへへ、もっといっぱいスリスリしていいよ?」

なんでか俺がイルの匂いを纏ってるっていう言葉に嬉しくなった。
俺には分からない匂いだけど、んふふふ。

「ガイ、まだ時間あるから寝な?明日も仕事でしょ?」
「うん、寝るね。おやすみ、イル。」
「ん、おやすみ、ガイ。」

ちゅっとお互いに唇を合わせて目を瞑る。
イルの体温は暖かくてすぐに寝入ってしまった。


翌朝、いつもの様にイルに起こされる。

「ガイ、ガイ。朝だよ起きて。」
「ん~。」

窓から入る朝日が眩しい。
ベッドの中が暖かいから出ると寒いし。いや、まだ春になってないからか。

何より、眠い!眠い眠い眠い!
でも起きなくちゃ。うぅ、でも眠くて目が開かないよう!

「ほら、早く起きないと遅刻しちゃうよ?」
「・・・うん。起きる。」

のたのたと顔を洗ってイルが準備してくれた朝ごはんをもそもそと食べる。

手のひらサイズの丸パンとトロトロに具材が煮込まれた具沢山の野菜スープ。うん美味しい。

その時パタパタとハトが俺目掛けて飛んできた。
ハトは俺の目の前で手紙に変わる。

「ガイ、仕事の?」
「んー、多分違う。ぁ、やっぱり。」

それは、剣を直してもらってるハルトの町の猛禽類の彼からだった。急いで出てきちゃったから挨拶が出来てなくて、鍛冶屋の扉に、俺宛のハトと急遽帰らなくちゃ行けなくなった旨を書いて隙間にスっと入れてきたのだ。

きちんと彼の手に渡って良かった。

じっくり読みたいけど、今は時間が無い!読んでお返事も書きたいんだけど、時間が無さすぎる!

「ガイ、読んでたら時間無くなっちゃうよ?」
「知ってる分かってる、タイミングが悪すぎるのぉ~。」

とりあえず、ポッケに突っ込んで、のたのた着替えてる俺をイルに一瞬で着替えさせられて、見送られる。

はぁー。春も近いって言うのに寒いな!
はぁ、と息を吐いてみる。息は全く白くならない。

うん!
ただの寝不足!今日は集中して早く終わらせて、終わるか?違うな、1枚でも多く捌いて、さっさと帰ってさっさと寝よう!そうしよう!

休憩時間にハトも読んで返事も書いて、うんうん。

今日一日のスケジュールをざっくり考えながら出勤する。

俺は気合いを入れて執務室のドアを潜った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王様は触手に襲われ助けてくれた騎士団長にも犯される!?

ミクリ21
BL
王様が触手に襲われて、騎士団長が助けてくれたけど王様は騎士団長にも犯されてしまう話。

俺は北国の王子の失脚を狙う悪の側近に転生したらしいが、寒いのは苦手なのでトンズラします

椿谷あずる
BL
ここはとある北の国。綺麗な金髪碧眼のイケメン王子様の側近に転生した俺は、どうやら彼を失脚させようと陰謀を張り巡らせていたらしい……。いやいや一切興味がないし!寒いところ嫌いだし!よし、やめよう! こうして俺は逃亡することに決めた。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

モフモフになった魔術師はエリート騎士の愛に困惑中

risashy
BL
魔術師団の落ちこぼれ魔術師、ローランド。 任務中にひょんなことからモフモフに変幻し、人間に戻れなくなってしまう。そんなところを騎士団の有望株アルヴィンに拾われ、命拾いしていた。 快適なペット生活を満喫する中、実はアルヴィンが自分を好きだと知る。 アルヴィンから語られる自分への愛に、ローランドは戸惑うものの——? 24000字程度の短編です。 ※BL(ボーイズラブ)作品です。 この作品は小説家になろうさんでも公開します。

俺の可愛い皇帝陛下〜けしからんモフらせろ!〜

えの
BL
獣人そして男しか居ない世界。「人」に近いほど美しく、「獣」に近いほど恐れられる。そんな中、「ほぼ人」な俺はハーデ帝国の皇帝陛下に嫁ぐことに。二足歩行の獣が多く住むハーデ帝国。えっ、モフり放題なんでしょ?行くいく!全然嫁ぎに行くよ?えっ?怖くないよ?もふもふは正義でしょ!愛でるもんでしょ!待っててね!愛しのもふもふちゃん!※本編完結済。番外編完結済。番外編のタグ確認してください! *この作品はムーンライトノベルズにも投稿しています。

【完結】うちの子は可愛い弱虫

cyan
BL
エリオットは公爵家に産まれ魔法騎士団では副団長を務めているが、幼い頃のトラウマにより自分に自信が持てず弱気な性格の持ち主だった。 そして、自分はダメな人間だと膝を抱える日々を送っている。 そんなエリオットの将来を心配した母が見つけてきたのは、ノアという魔法薬を研究する友人候補だった。 友人として親睦を深める2人がほのぼのと愛を育む。 R-18の内容が含まれる話のタイトルには※をつけています。 表紙はAIで作成しています。

魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子
BL
これは魔法とバース性のある異世界でのおはなし――。 15歳の魔力&バース判定で、神官から「魔力のほとんどないオメガ」と言い渡されたエリス・ラムズデール。 その途端、それまで可愛がってくれた両親や兄弟から「無能」「家の恥」と罵られて使用人のように扱われ、虐げられる生活を送ることに。 そんな中、エリスが21歳を迎える年に隣国の軍事大国ベリンガム帝国のヴァンダービルト公爵家の令息とアイルズベリー王国のラムズデール家の婚姻の話が持ち上がる。 だがヴァンダービルト公爵家の令息レヴィはベリンガム帝国の軍事のトップにしてその冷酷さと恐ろしいほどの頭脳から常勝の氷の狼と恐れられる騎士団長。しかもレヴィは戦場や公的な場でも常に顔をマスクで覆っているため、「傷で顔が崩れている」「二目と見ることができないほど醜い」という恐ろしい噂の持ち主だった。 そんな恐ろしい相手に子どもを嫁がせるわけにはいかない。ラムズデール公爵夫妻は無能のオメガであるエリスを差し出すことに決める。 「自分の使い道があるなら嬉しい」と考え、婚姻を大人しく受け入れたエリスだが、ベリンガム帝国へ嫁ぐ1週間前に階段から転げ落ち、前世――23年前に大陸の大戦で命を落とした帝国の第五王子、アラン・ベリンガムとしての記憶――を取り戻す。 前世では戦いに明け暮れ、今世では虐げられて生きてきたエリスは前世の祖国で平和でのんびりした幸せな人生を手に入れることを目標にする。 だが結婚相手のレヴィには驚きの秘密があった――!? 「きみとの結婚は数年で解消する。俺には心に決めた人がいるから」 初めて顔を合わせた日にレヴィにそう言い渡されたエリスは彼の「心に決めた人」を知り、自分の正体を知られてはいけないと誓うのだが……!? 銀髪×碧眼(33歳)の超絶美形の執着騎士団長に気が強いけど鈍感なピンク髪×蜂蜜色の目(20歳)が執着されて溺愛されるお話です。

童顔商人は聖騎士に見初められる

彩月野生
BL
美形騎士に捕まったお調子者の商人は誤って媚薬を飲んでしまい、騎士の巨根に翻弄される。

処理中です...