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それはきっと俺の方

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目を覚ましたら、太陽がもう暮れる時間だった。

あれ、おかしいな。寝たのって夜明け前だよね??
時間が、飛んだ・・・??
って言うかエディスも居ないんだけど。

・・・・・・。

窓の外を見ると、だんだんと太陽が沈んでいく。
あっと言う間に外の景色は黒に染まってしまった。

太陽が完全に落ちたな。
よし、まだ寝足りないからもう1回寝るか。

俺はもそもそと布団を被ろうとした。

ガチャッ。

「ええっ!?何寝ようとしてるんですか。起きたなら起きて下さい、団長~。」
「ちっ。いやぁ、起きたらまだ夜だったから寝ようかなって思いまして。」
「待って下さい今、今っ舌打ちしましたよね!聞こえましたよ!今日の太陽は登ってたった今沈んだんです。少しは起きてて下さい、ご飯貰ってきましたのでっ。」

エディスは机の上に夕飯の乗ったお盆を置いて、また寝ようとしてる俺をベッドから引きずり出した。

「エディスまで強硬手段を取るようになってしまった・・・何故ですか・・・。」
「ええと、団長の行動が原因ですかね?」
「・・・俺の行動が原因ですか・・・。」
「とにかく持ってきたご飯をを食べてください!食べれるだけでいいんで。あとお水も!」

そこまで言われたら仕方がないので、机について水を飲む。
何も口にしていなかったから喉は乾いていた。
食欲は感じないけど、もそもそと食べ始める。

沢山動いたし、魔力も結構使ったし、食べずに寝たしお腹が空いてるはずなんだけどなぁ。

丸パン1個とスープ、お肉を2口食べたらもういらない。

「エディス、残り、」
「いやもう少し食べましょ。はい、あーん。」

またエディスにお肉を何口か食べさせられて、果物も半分食べさせられた。

もちろん残りはエディスが綺麗に平らげてくれた。











「剣もどうにかなりそうだし、盗賊狼も討伐したし、明日にでも帰りますか。」
「ええええ!?帰るんですか!?」
「エディスは帰りたくないんですか?早めに帰らないと仕事は溜まるし、リックにも怒られちゃいますよ?」
「いえ!帰りましょう!・・・僕、てっきり公爵家での勉強とか、団長のお仕事とか、実質のお休みが無いこととかで全部が嫌になって逃避行してるかと思っちゃいました。」
「・・・やっぱり、そう思いますよね。」
「でも団長ってなんだかんだ言いながらやるべき事はきちんとやってるし、僕は責任感のある人だと思ってますよ。」
「・・・そう?」

でもきっと、このまま俺がどっか行っちゃうんじゃないかって思われてるからノア様も俺の様子見に来たんだろうしなぁ。んまぁ、正直このままどっか行ってしまいたいけれど。でも俺、そんな全て投げて来る程無責任じゃないし、一応仕事は溜めずに来たし、多分レスト副団長もこうなる事を見越してかは知らないけど、まだ余裕のある仕事もさせられてた訳だし。

ぁぁー、レスト副団長に放牧とか言われそう。
あながち間違ってはいないけど。ちょっとスッキリしたし。うん、非日常ってたまにはいいね。

「あれ、前書いたハトに剣が直ったら帰りますって書きませんでしたっけ?」
「・・・・・・あ。」

ぁ、そーいえば書いた気がする。
俺、やっぱり心のどこかで逃避行を願ってた!?
いやでもだって疲れちゃったんだもん!たまには息抜きしたかったんだもん!もう帰るからいいよね!?

「・・・早く帰る分には大丈夫ですよ!」
「じゃぁレスト副団長に、明日帰りますってハト飛ばしますね。」

エディスがすぐに書いて飛ばしたハトを眺めた。
目的地はハッキリしてるのに、翼を広げて飛んでいく姿がとても自由に思えて羨ましい。

「あーあ、日常に戻るのかぁ、って言ってもここでやる事ももう無いし。帰って書類捌かないとね。」
「僕は団長の討伐が間近で見れて感動でした。団長はやっぱり凄いなって改めて思いました。」
「あはは、感動?しかも凄い?本当に?ふふふ。」

ふふふ、褒められるってやっぱり素直に嬉しい。
最近「やらなくちゃ」っていう事が多くて疲れる。うん、俺疲れてる。

俺も自由に、どこかに羽ばたいて行きたいなぁ。
・・・行かないけどね。高いところ苦手だし。

「はい!僕は今回役得です!団長の剣術、魔術の速さと正確さ、どれをとっても凄いです!今まで間近で見たことって無かったから本当に感激でした!」
「エディス!君はなんていい子なんだ!」

俺は嬉しさのあまりぎゅーっとエディスに抱きついた。

「待って下さいっこれはバレたら僕殺されちゃう!」
「バレないバレない、やましい気持ちはこれっぽっちも無いし!わぁ、エディス見た目より筋肉あるぅ!」
「団長、匂いつきやすいんですから、本当に勘弁してくださいぃ!」

コンコンッ

その時、扉をノックする音が響いた。

「ほら、きっと女将さんですよ。僕対応するんで離して貰えますかっ。」
「どうせだから仲良しアピールしておきましょうか!」
「絶対いらないアピールです~。」

コンコンッ

扉がすぐに開かなかったからか催促のノックが響く。
短気な人だなぁ。


「はぁい、今開けます~っ」

エディスは俺を無理やり剥がして扉に向かい、カチャっと鍵を解錠する。

すると扉は部屋を訪ねてきた人によって勢いよく開けられ、俺はその人を見て固まってしまった。

「・・・ガイ、こんな所で何してるの?」

今まで見た事ないくらいのにこやかな笑顔で、今まで聞いた事無いような低い声で、ここに居るはずのないイルは、エディスの後ろに居る俺に問いかけた。

エディスが小さく「ぁ、僕死んだかも。」という呟きを俺の耳は聞き逃さなかった。
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