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第三章 村

一節 拘束

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一節

 あの後、枷をはめられ拘束された。逃げようと思えば魔法を使って逃げ出せたかもしれないが、わざわざ村人からさらに怪しまれるようなことはしたくないのでしなかった。結局そのあと一軒の家の地下に連れられ、牢屋のようなところに入れられた。それから何時間たったかわからないが、流石に尻が痛くなってきた。ランタンが灯してあるため、そこまで暗くはないのだが、長時間歩き続けたのもあって流石に腹が減った。渇きはどうにかなるものの空腹はどうしようもない。痺れを切らして枷を壊そうとしたその時、一人の女の子が入ってきた。手には簡単な料理を持っている。
「大丈夫ですか・・・?」
声も細く、華奢な感じの子だった。
「いや~・・・、大丈夫っちゃ大丈夫ですけど・・・・腹が減って・・・。あと体痛いです・・・。」
「・・・す、すいません。あの、よければこれ、食べてもらえませんか・・・?」
そう言って少女は牢屋の鍵を開け、中に入って枷を外してくれた。
「・・・いいんですか・・・?ありがとう・・・。い、いただきますっ。」
パンとスープだけだったが、もともと小食なのもあって十分満足だった。
「・・・ふぅ。ありがとう、ご馳走様でした。・・・そういえばなんでご飯を?」
少女は少々躊躇いながら口を開くと、
「・・・あの、こんなこと言うと笑われるかもしれないんですが、あんな風にお礼を言える人に悪意はないんじゃないかな、って。思ったんです。」
「いや、なんというか、ありがとう。でも、自分で言うのもなんだけど、あれだけの人が敵対してるって人によく近づこうと思ったね。」
「それは・・・。あの、あなたが作ってきた料理私一口食べたんです。そしたら、今までに食べたことないくらいに美味しくて。なので、そのお礼もしようと思ってこれ持ってきたんです。」
そう、食べ終わった食器を見て言った。いや、これくらい誰でも作れると思うんだけど・・・。日本の料理ってすげぇ。
「いやいや、そのくらいならいくらでも作れるよ。」
と、その時急に彼女の顔が怪訝になった。
「・・・そういえば、逆にあなたはどうしてさっきからそんなに余裕なんですか?」
「え?」
「出ようと思えば、すぐにでも私を殺して出れたでしょう・・・?」
俺は驚いた。さっきまで料理をふるまってニコニコしていたのに、急にそういう話題になったからだ。いや、それよりもっと驚いたのがこんな少女から「殺す」というワードが出たことだ。今頃の小学生とかでも口にしている言葉ではあっても、その言葉は冗談だ。ただ、この子の発した「殺す」という言葉は、殺気のこもった、本当に殺しかねない。そんな声だった。
「・・・いや、そんなに簡単に人を殺したりなんてしないよ。当たり前じゃないか。」
「・・・本当ですか?」
「ああ、というか殺せないよ。普通。」
その言葉で安堵したらしく、またもとの朗らかな表情に戻った。なんというかこっちの世界では言葉の一つ一つに込められる意味が重いような気がする。そう考えると、リムが昨日本当か?といった後、嬉しそうにしていたのも納得・・・って、それだとまた俺が自信過剰な感じになるのでは!?
「私、お父さんに話してみます。貴方に悪意がないこと。」
「う、うん。それは有難いんだけど・・・。それって怒られたりしないの?たぶんさっきの感じからして俺に近づくなみたいなこと言われてるんじゃない?それに、悪意がないと思うってだけじゃ納得しないんじゃ・・・。」
少女にそう言うと、しまった、みたいな顔をして軽く俯いた。
「確かに・・・。なにか無実だってことが証明できるような物があればいいんですが・・・。」
「うーん、・・・あ、じゃあせめて一回話させてもらえないかな?もう一回手枷つけるからさ。その、君のお父さん呼んできてもらえる?頑張って話しつけてみるよ。」
ちょっと間が空き、少女が口を開いた。
「・・・。わかりました。それならできるかもしれまん。」
そういうともう一度手枷を付け直し、牢の鍵をかけ、牢屋を出る階段を上がっていった。

 確かにいくらでも出る方法はあると思うが、自分は何もしてないし、なぜこうなったのかという理由も知りたい。
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