廃園

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後編*ヴィルヴィとラントラファス*1

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後編*ヴィルヴィとラントラファス*


<1>

 ツアグの治世(ちせい)が終わって何代も後、エウデアトではヴィルヴィという名の女王が即位した。ヴィルヴィはエウデアト史上最強の、そして最後の王(女王)となった。


<2>

 記憶にないほど幼い頃から、ヴィルヴィは「混沌」の気配を知っていた。混沌は常にそばに在(あ)り、ヴィルヴィを見守り、時にあやした。ごく早い時期に、ヴィルヴィは、混沌の力を使い遊ぶようになった。彼女にとってそのことは、空気のように自然なことだった。しかし他の者にとってはありえないことらしい。いつの間にか、ヴィルヴィはそう悟った。だからヴィルヴィは混沌の力で遊んでいることを、誰にも言わなかった。

 しかし唯一、ヴィルヴィが混沌の力で遊べることの意味を知り、驚愕(きょうがく)した者がいた。ラントラファスである。


<3>

 ラントラファスの計画通り、エウデアトは衰退の道をたどっていた。エウデアト達は少しずつ、現実世界に興味を失っていくようだった。変化が緩(ゆる)やかだったので、気付く者は少なかっただろうが、幾代にも渡れば明らかだった。

 他者との心理的距離が離れていった。恋や睦(むつ)まじい家族関係も薄れてしまった。生殖への関心は低く、祭りは行われていたものの、過去の、むせ返るような熱気が感じられなかった。

 ラントラファスの手際(てぎわ)は非常に良く、完璧と言えた。だが一方、ラントラファスの心には大きな穴が穿(うが)たれていた。それまでも設計者と時の命令で多くの時代を終わらせる下準備(したじゅんび)をしてきた。仕事を終えた後、ラントラファスは充実感や疲労はあれ、後悔や辛さなど感じてこなかった。

 だがエウデアトは違った。サーフィラの最期が心に食い込んでいた。普段穏やかなツアグの、凄(すさ)まじい怒りの形相(ぎょうそう)と非難の声が、繰り返し鮮明に蘇った。

 ラントラファスは時に乳白色の世界でまどろみ、またあらゆる時代と世界を巡(めぐ)ったが、エウデアトが心から離れることはなかった。次第にラントラファスは、設計者と時の命令で動くことができなくなっていった。


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