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侵入者

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「やっぱり、君でしたか。」

カナンの声に振り返ると、昼間マーケットで出会った紫色の瞳の男と目が合った。
私とカナン、二人きりの夜の宮殿。

これから愛し合う予定のベッドの上に、侵入者が寝転んでいた。


「よお、久しぶりだな。相変わらず薄気味悪い顔してやがる。」

「君は相変わらず、気品に欠けますねぇ。」

憎まれ口をたたきあい、ふっと馬鹿にするように笑い合った二人。


(ワンちゃんみたいな、エロイケメン・・・・?!どうしてここに・・・?)

カナンと彼は、どうやら知り合いのようだ。
クルクルとカールしたグレーの髪をなびかせて、彼はベッドから上半身を起こす。

(野生的なイケメンのベッドシーン・・・♡絵になるなぁ・・・・♡)
イケメンを見るとすぐに、妄想のスイッチが入ってしまう。

宮殿の中に侵入されたというのに、カナンは特別驚いた様子を見せず、男に対峙していた。
まるで彼がここに来ることを、想定していたような顔で、会話を続ける。


「なぜ君が、ここに居るんです?」

「なぜって?お前まだそんなことも、把握してないのかよ。」

二人の色男がお互いの本心を探り合うように、視線を交わす。
状況が飲み込めない私は、ぽかんと気の抜けた顔で、イケメン二人を見守るしかなかった。

「君は、いつもそうですね。突然現れて、私の人生の邪魔をする。」

「人聞き悪ぃよなぁ。でもまぁ、確かにそうだ。俺はお前のモノを横取りするのが、たまらなく好きなんだ。」

カナンの笑顔は相変わらず、仮面のように冷たく、作り物めいていた。
しかし、明らかにいつもとは違う緊張が漂っている。

「真美様、奥の部屋に行っていてください。」

イラついたような、カナンの声。
紫の瞳の男は、私の目をじっと見つめて、いやらしく笑った。

素肌に短いベストを羽織っただけの上半身は、惜しげもなく褐色の美しい肌をさらけ出しており、妙になまめかしい。
見事に鍛えられた筋肉が、露出している。
引き締まった腕、六つに割れた腹、ゴツゴツした大きな手。
ベッドから降りて、ゆっくりとこちらへ近づいてくる。

野生的な身体とはギャップがある、甘ったるい垂れ目はフェロモンを放ち、目が合うだけでドクンと心音が高鳴った。

「無防備なお嬢さん。アンタが、俺たちの姫か。」

「口をつつしめ、無礼者が。お前のような卑劣ひれつな男が、近づいて良いお方じゃない。」

カナンは腕を差し出して、私を背後に隠す。


「お前がそんなに必死になるのは、初めて見たぜ。」

男は、嘲笑あざわらうように鼻を鳴らして、ねっとりとした視線をカナンに向ける。
その目は好物を狙う獣のように研ぎ澄まされ、快楽を求める欲情した雄の熱を含んでいた。


「何が目的だ?真美様を、さらおうなんて馬鹿なこと考えているわけじゃないだろう?」

(この野生的なイケメンにさらわれる・・・・!?それもまた美味しい展開だけど・・・♡)

イケメン二人が睨み合う中、不謹慎な悦びに胸をおどらせる私は、まるで緊張感がない。


「随分とお楽しみのようだな。この狐男が、姫のお気に入りか?」

「・・黙れ。」

挑発をやめない男に苛立ったカナンが、うなり声のような低い声を絞り出す。


「お前ら同じ匂いがプンプンするぜ?発情期のおすめすってわけかよ。」

「下がれ・・・!!」

カナンが大きく手のひらを前に突き出すと、衝撃波が男の顔を掠めた。


「おっと。危ねぇ。」

男は、ひらりと身をひるがえして避ける。
今度は彼が手のひらを、カナンへ向けた。


「ぐッ・・・あ・・・・・」

男がささっと手を軽くひねると、カナンがうめき声を上げ、床に膝をついた。
腕が、後ろで縛られているように、固まっている。

(何・・・?魔法・・・・?!魔法使えるの・・・・!?エロすぎ・・・・・♡)

痛めつけられて顔を歪めているカナンを見て、エロイという感想が一番に出てきた私は、流石に不謹慎すぎると反省した。


「随分荒々しくなったな、お前。・・・姫を抱いて、男になったか?」

「お前は、まだその悦びを知らないだろう。哀れな男だ。」

カナンの言葉とは思えない、その荒々しい言い方に、私は心底ときめいてしまう。


(荒々しいカナンの口調・・・♡男っぽくて、興奮してきちゃう・・・・・っ♡なになに?このエロイベント・・・・♡)


「痛っ・・・・・やめろ・・・っ・・・う・・・」

男が再び手のひらをかざすと、カナンは床に顔を押し付けるように倒れ込んだ。


「俺は今から姫を抱く。お前はそこで無様ぶざま見物けんぶつしてろ。」

手を触れることなくカナンを床に平伏へいふくさせた男は、官能的な笑みを浮かべながら、その姿を堪能している。


「やめろ・・・っ・・・真美様に、触れたらお前を殺す・・・っ・・・」

(感情むき出しのカナン・・男同士の争い・・♡エロすぎる・・・・っ♡)


一歩、また一歩とこちらへ近づいてくる男と、怒りをむき出しに叫んでいるカナンを交互に見つめながら、私はこれから始まる官能的な夜への期待に、胸を膨らませていた。





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