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♢『事後』(SIDE 幸田 創生)
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♢幸田 創生(さきた そうせい)45歳
45歳には見えない年齢不詳の男。
出生の謎がある、どこかの国のハーフらしく、そのせいなのか、体質なのか髪は子供の頃から白髪。
綿飴のような髪型。ふわりとした前髪のボブヘア。
童顔でいまだに学生に間違われることもあるほど。
航空会社の制服を手がける。
眠そうにぼんやりしていることが多い。ふわーっとゆっくり喋る。スローペース。
デザイナーだが、自分の着る服にはあまり興味がなく、オーバーサイズのニットばかり着ている。
美容師の美那と一線を声たばかり。
♢美那 弥一(みな やいち) 45歳
ヘアサロンを30店舗経営している美容師。同級生組からは「みな」と呼ばれている。
がっしりとした筋肉質な体に、ウェーブのかかった長い黒髪を一本にまとめている。
プロレスラーみたい、と創生にいつも胸を揉まれている。セクシーなガテン系。
面倒見が良い。男気があり、面倒見がよく、社員、後輩にも慕われている。
弟の子供の面倒を見ることが多い。自分が甘えられるのは唯一創生だけ。
~~~~~~~~~~~
♢『事後』(SIDE 幸田 創生)
美那と一線を超えてしまった。
仕事で沖縄へ行くことが決まって美那もついて行くと言った時、そんなことになるんじゃないかという予感があった。
元就と亜弥も一緒だと聞いて、そう思った。
彼らは恋人同士になったばかりでラブラブだし、美那はああ見えて影響を受けやすい。
特にあの二人は小学生の頃から一緒で、俺たちと境遇が似ているから尚更だ。
俺と美那はほとんど一緒に暮らしているようなものだし、来月からは仕事場にしている俺のマンションを引き払って美那の家に引っ越すことが決まっている。
沖縄1日目に美那とそういうことになって、そのあとの数日は恥ずかしくてほとんど目も合わせられなかった。
同じ部屋なのに、ツインのベッドルームの端っこで眠ったのは流石に美那が傷つくかなと思ったけれど、どんな態度を取ったらいいのかわからない。
彼と寝てしまったという事実が消化しきれず、戸惑っていた。
30年以上もお互いに好きという気持ちがあって、若くて一番そういうことに熱意がある時期をスルーしてここまできてしまったから、今更俺たちの生活にセックスが加わるということに、どう適応するべきなのか。
一回してしまえば2回も3回も同じ、みたいなことを亜弥が冗談で言っていたけれど、そんなの全然違う、と思った。
美那と目が合うだけで心臓が破けるみたいな衝撃があるし、彼の手を見たら自分に触れてきた感覚が蘇って身体が熱くなる。
高校生男子じゃあるまいし。
大人になってからの関係は、俺たちが思っている以上に難しくてややこしい。
美那と一緒にいると誰よりも居心地がよくて安心して眠くなる。
そういう俺の幸せな生活は、彼と寝たことによって一変してしまった。
彼が隣にいるとドキドキして苦しくて居心地が悪くて、目がギラギラに覚めてしまう。
彼にじっと見られると心拍数が上がって、俺を見ないで!って叫び出したい気持ちになる。
苦しい。
美那の俺を見る目が変わったような気がして不安だ。
美那の前ですべてさらけ出して、身体中で彼を感じてしまった。
俺のいやらしい欲望を全て見られてしまったことが、恥ずかしくてたまらない。
射精なんて最も個人的で、恥ずかしい行為を、彼に促されてしてしまった。
いつもと全然違う動物みたいな声をあげて達した俺を見て、美那はどう思ったんだろう。
「創生、ご飯出来たぞ。」
いつものように巨大なビーズクッションの上に身体を預けてぼんやりしていたら、
食事の支度を終えた美那が、俺を呼びにやってきた。
彼の声に、身体がびくりと震える。
コントロール出来ない。
自分の心も、身体も。
落ち着かない。
この家にいると、いつ彼に声をかけられるかわからないから。
「今、行く・・・」
俺は疲れ切ってしまっていた。
♢♢♢♢♢♢
「マンションに戻る?・・・創生、ちょっと待ってくれ。」
ご飯を食べ終わってから、美那に切り出した。
仕事が残っているし引越しの準備も終わってないからマンションに戻ると言うと、彼は目に見えて動揺した。
沖縄でのセックスが嫌だったから、俺がこんな態度をとっていると彼は誤解するだろう。
そう思うとうんざりした。
彼の傷つく顔や困る顔を見たくなかったから。
それでも俺には時間が必要だった。
彼と寝てしまったことを自分の中できちんと消化して、受け入れる時間が。
「一週間だけ、マンションに帰ってもいい?」
きちんと受け入れて前に進まないと、美那と一緒に暮らすなんてことは到底不可能に思えた。
「創生、悪かった。この前は強引だった。自分の気持ちが抑えられなくて、お前の気持ちを最優先するべきなのに、」
「そうじゃない。そうじゃなくて・・・・」
遮るように言い切った。
きつい言い方になってしまって、気まずい。
美那と寝るのが嫌だったわけじゃない。
俺だってそうしたいと本気で思ったし、嫌だという気持ちは全くなかった。
それでも、
自分が予想していたよりずっと気持ちが良くて、恥ずかしくて、
彼との関係に変化が起きたことに動揺している自分がいる。
「創生、待ってくれ。」
美那は俺の手首を握って引き留めようとした。
彼に触られること自体が、今の僕には受け入れられない。
「やだ・・・っ」
手を振り払うと、美那はひどく傷ついた顔をした。
こんな風になりたくないのに。
美那を傷つけたくないし、今まで通り仲良くしたい。
彼が好きなのに、どうして・・・・
自分の頭が混乱しているのがわかるけど、どうやって落ち着けたらいいのか全く良い案が浮かばない。
美那に触られると、自分が自分じゃなくなったみたいに、身体が熱くなって、顔が赤くなって、恥ずかしくて逃げ出したくなる。
「ごめん、ちょっと一人になりたい。美那、ごめん。」
ただ謝ることしかできなかった。
俺と美那が出会ってから、こんなことは初めてだった。
彼とは喧嘩したこともないし、一緒に居て疲れることなんて一度もなかった。
大人なんだからもっと上手く言葉で説明して時間をもらうようにできたはずなのに、
俺は自分のコントロールさえできないほど混乱していた。
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