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恋人の条件
しおりを挟む純夏による公開プロポーズから一夜明け、悪の組織はプロポーズの大流行期を迎えていた。
「俺・・年下だし頼りないかもしれねぇけど・・許嫁として・・ユミさんのこと、真剣に考えてる。俺の人生のパートナーになって欲しい。」
たどたどしい口調だが、穂高の目は真剣だ。
強い意志が瞳の奥に感じられて、彼の真っ直ぐな想いにぐっときてしまう。
幼さの残る彼の顔がいつもと違い、大人の男性の強さを纏っていてドキドキした。
「穂高君・・・嬉しいです。ありがとうございます。」
思わず敬語になる。
まだ子どもだからと油断していたら、痛い目に合う。この年頃の男性は、気付けばあっという間に大人びてしまい、ある日突然置いてけぼりを食らったような気持ちになるのだ。
「親秋に交渉して、もしユミさんさえOKしてくれれば、俺の部屋で一緒に暮らせるようにしたいんだけど・・・どう思う?」
穂高に甘々なボスとはいえ、さすがに監禁中の女を野放しにはしないだろう。
まして穂高は、ボスの秘蔵っ子だ。
彼の気持ちは嬉しいけれど、はいそうですかと素直に頷くわけにもいかない。
「穂高、悪いんだけど、そう簡単にその女を渡すわけにはいかないよ。」
様子を見守っていた宗が、口を挟む。
今、監禁部屋には組織のメンバーたちが集合し、プロポーズ順番待ちの列を成している。
「宗、人の話には口出ししないルールなんだから、黙ってろ。」
ルールまで決められているらしい。
千畝が戒めるように低い声で言うと、宗はあからさまに嫌悪感を示し、舌打ちした。
「千畝、お前はここに何の用があるんだ?お前も、この女にプロポーズするつもりじゃあないよな。」
嘲るように横目で彼を見た宗は、人を小馬鹿にするという特技をふんだんに生かした笑みを浮かべている。
「だったら何だ。お前には関係ないだろう。」
壁にもたれかかるように腕を組んで立っている千畝は、いつもとは少し雰囲気が違った。
(もしかして千畝さんも、プロポーズしてくれたりするのかなぁ・・・♡)
以前、彼にされたキス。
いつまでも忘れられず、心の中に引っかかっている。
宗には指でイカされた経験があるし、大我とは一緒にお風呂に入った仲だ。
この組織に監禁されてからというもの、私の男性経験レベルは格段に上がっていた。
複数のイケメンたちに求愛される、夢のような生活。
男性とは縁がなかった今までの惨めな人生が、劇的に変わってしまった。
(たくさんのイケメンと関係を持つなんて・・・私って、悪女・・・?)
私はこのオイシイ状況に、心底酔いしれている。
「ユミさん・・・っ、よそ見すんなよ。俺のことだけ、見て欲しい。」
千畝と宗のやりとりをチラチラ見ていた私に、穂高が迫る。
突然ぎゅっと両手を握られて、驚いた。
「俺・・っ・・・ユミさんのこと、ちゃんと満足させるから・・・っ。ユミさんが淫乱でも・・っ、宗さんの身体に夢中でも構わない。今はまだ・・・未経験だけど・・・っ・・俺だけを見てくれるように、絶対巧くなってみせるから・・!!」
(え・・?えぇ・・・?!淫乱で、宗の身体に夢中・・・・?)
顔を真っ赤にして叫ぶ穂高に、その場にいた全員が注目した。
「宗さん、穂高にナニ言ったんだよ?」
大我が眉間に皺を寄せ、肘で宗を小突く。
「あいつは純粋なんだ。変なこと吹き込むのはやめろ。」
千畝も呆れ顔で、深いため息を吐き出した。
「ユミが俺の身体に夢中、っていうのは、事実なんだから、仕方ないでしょ。」
(確かに宗さんのテクニックはすごいけど・・・♡)
歪んだ性格はさておき、彼のテクニックは本物だ。
私は身をもって、実感していた。
「確かに、恋人にするなら身体の相性って大事だよね。」
面白いことになってきたと、ソファーに座って成り行きを見守っていた美波が口を開く。
「全員と寝て、ユミを一番悦ばせることができた男が、恋人になるっていうのはどう?」
宗はしれっとした顔で、そう言ってのけた。
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