上 下
36 / 62

恋人の条件

しおりを挟む

純夏すみかによる公開プロポーズから一夜明け、悪の組織はプロポーズの大流行期を迎えていた。


「俺・・年下だし頼りないかもしれねぇけど・・許嫁いいなずけとして・・ユミさんのこと、真剣に考えてる。俺の人生のパートナーになって欲しい。」

たどたどしい口調だが、穂高ほだかの目は真剣だ。
強い意志が瞳の奥に感じられて、彼の真っ直ぐな想いにぐっときてしまう。

幼さの残る彼の顔がいつもと違い、大人の男性の強さをまとっていてドキドキした。

「穂高君・・・嬉しいです。ありがとうございます。」

思わず敬語になる。
まだ子どもだからと油断していたら、痛い目に合う。この年頃の男性は、気付けばあっという間に大人びてしまい、ある日突然置いてけぼりを食らったような気持ちになるのだ。

親秋ちかあきに交渉して、もしユミさんさえOKしてくれれば、俺の部屋で一緒に暮らせるようにしたいんだけど・・・どう思う?」

穂高に甘々なボスとはいえ、さすがに監禁中の女を野放しにはしないだろう。
まして穂高は、ボスの秘蔵っ子だ。

彼の気持ちは嬉しいけれど、はいそうですかと素直にうなずくわけにもいかない。


「穂高、悪いんだけど、そう簡単にその女を渡すわけにはいかないよ。」

様子を見守っていたそうが、口を挟む。
今、監禁部屋には組織のメンバーたちが集合し、プロポーズ順番待ちの列を成している。

「宗、人の話には口出ししないルールなんだから、黙ってろ。」

ルールまで決められているらしい。
千畝ちうねいましめるように低い声で言うと、宗はあからさまに嫌悪感を示し、舌打ちした。

「千畝、お前はここに何の用があるんだ?お前も、この女にプロポーズするつもりじゃあないよな。」

あざけるように横目で彼を見た宗は、人を小馬鹿にするという特技をふんだんに生かした笑みを浮かべている。

「だったら何だ。お前には関係ないだろう。」

壁にもたれかかるように腕を組んで立っている千畝は、いつもとは少し雰囲気が違った。


(もしかして千畝さんも、プロポーズしてくれたりするのかなぁ・・・♡)

以前、彼にされたキス。
いつまでも忘れられず、心の中に引っかかっている。

宗には指でイカされた経験があるし、大我たいがとは一緒にお風呂に入った仲だ。
この組織に監禁されてからというもの、私の男性経験レベルは格段に上がっていた。

複数のイケメンたちに求愛される、夢のような生活。
男性とは縁がなかった今までの惨めな人生が、劇的に変わってしまった。

(たくさんのイケメンと関係を持つなんて・・・私って、悪女・・・?)

私はこのオイシイ状況に、心底酔いしれている。


「ユミさん・・・っ、よそ見すんなよ。俺のことだけ、見て欲しい。」

千畝と宗のやりとりをチラチラ見ていた私に、穂高が迫る。
突然ぎゅっと両手を握られて、驚いた。

「俺・・っ・・・ユミさんのこと、ちゃんと満足させるから・・・っ。ユミさんが淫乱でも・・っ、宗さんの身体に夢中でも構わない。今はまだ・・・未経験だけど・・・っ・・俺だけを見てくれるように、絶対巧くなってみせるから・・!!」

(え・・?えぇ・・・?!淫乱で、宗の身体に夢中・・・・?)

顔を真っ赤にして叫ぶ穂高に、その場にいた全員が注目した。


「宗さん、穂高にナニ言ったんだよ?」
大我が眉間に皺を寄せ、肘で宗を小突く。

「あいつは純粋なんだ。変なこと吹き込むのはやめろ。」
千畝も呆れ顔で、深いため息を吐き出した。


「ユミが俺の身体に夢中、っていうのは、事実なんだから、仕方ないでしょ。」

(確かに宗さんのテクニックはすごいけど・・・♡)

歪んだ性格はさておき、彼のテクニックは本物だ。
私は身をもって、実感していた。

「確かに、恋人にするなら身体の相性って大事だよね。」

面白いことになってきたと、ソファーに座って成り行きを見守っていた美波みなみが口を開く。


「全員と寝て、ユミを一番よろこばせることができた男が、恋人になるっていうのはどう?」

宗はしれっとした顔で、そう言ってのけた。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

溺愛三公爵と氷の騎士 異世界で目覚めたらマッパでした

あこや(亜胡夜カイ)
恋愛
旧題:泣き寝入りして目覚めたらマッパでした~溺愛三公爵と氷の騎士~ 恋愛下手な「私」がやっと好きになった人に誤解され、手酷く抱かれて、泣きながら眠り、起きたら知らない部屋の寝台の上。知らない男、知らない世界。確かに私、リセットしたいと思いながら寝たんだっけ。この夢、いつ覚めるんだろう?と思いつつ、結局また元いた世界と同じ職業=軍人になって、イケメンだけれどちょっとへんな三人の公爵様と、氷の美貌の騎士様とで恋したり愛したり戦ったり、というお話。プロローグはシリアスですが、ご都合主義満載、コメディシリアス行ったり来り。R18は予告なく。(初っ端からヤってますので)

【※R-18】異世界のゲートをくぐり抜けたら、イケメン達に取り合いされる最強のチートキャラ人生が待っていた。

aika
恋愛
穂花は、彼氏とテーマパークでデート中、大喧嘩になり振られてしまう。 ショックで動けず閉園時間まで一人過ごしていると、テーマパークのシンボルとなっているお城のゲートが開いているのが見えた。 長身のイケメンがゲートをくぐり抜けていくのを目撃し、一目惚れした彼女は後に続いてゲートをくぐる。 そこにはテーマパークの動物達が獣人として暮らす、メルヘンな世界が広がっていた。 穂花は異世界に来てしまったことに気付く。そこは獣人と人間が共存する世界。 平和そのものに見える彼らの世界では、謎の熱病が流行り、「世界の終わり」が始まっていた。 熱病に罹ったものは、人格を失い、自らの能力が暴走してしまうらしい。 穂花は、彼らと交わることによって「暴走した力を無力化できる」というチート能力を持っていて・・・・ 男だらけの異世界で、イケメン達から求められまくるオイシイ物語が、穂花を待っていた。 (※R-18描写あり)

今日も殿下に貞操を狙われている【R18】

毛蟹葵葉
恋愛
私は『ぬるぬるイヤンえっちち学園』の世界に転生している事に気が付いた。 タイトルの通り18禁ゲームの世界だ。 私の役回りは悪役令嬢。 しかも、時々ハードプレイまでしちゃう令嬢なの! 絶対にそんな事嫌だ!真っ先にしようと思ったのはナルシストの殿下との婚約破棄。 だけど、あれ? なんでお前ナルシストとドMまで併発してるんだよ!

【R18】転生先のハレンチな世界で閨授業を受けて性感帯を増やしていかなければいけなくなった件

yori
恋愛
【番外編も随時公開していきます】 性感帯の開発箇所が多ければ多いほど、結婚に有利になるハレンチな世界へ転生してしまった侯爵家令嬢メリア。 メイドや執事、高級娼館の講師から閨授業を受けることになって……。 ◇予告無しにえちえちしますのでご注意ください ◇恋愛に発展するまで時間がかかります ◇初めはGL表現がありますが、基本はNL、一応女性向け ◇不特定多数の人と関係を持つことになります ◇キーワードに苦手なものがあればご注意ください ガールズラブ 残酷な描写あり 異世界転生 女主人公 西洋 逆ハーレム ギャグ スパンキング 拘束 調教 処女 無理やり 不特定多数 玩具 快楽堕ち 言葉責め ソフトSM ふたなり ◇ムーンライトノベルズへ先行公開しています

春画を売ったら王子たちに食べられた

四季
恋愛
 どこにでもいる普通のOLの里奈は、山の中でスケッチをしていたら異世界に迷い込んだ。魔力のない里奈は『非人』として国に保護されて、洗濯の下女の仕事をしている。将来のためにお金を貯めようと、こっそりエロ画を描いて売っていた。どうも里奈の描いたエロ画はこの国では刺激が強かったらしい。「これを描いたのはおまえか?」と、俺様王子に食べられた。恋い焦がれていた人の兄と関係を持った。  里奈が王子の子どもを妊娠したことによって、長い歴史の中でねじ曲げられた非人と王族との真実が明かされようとした。そして命を狙われはじめた。二人の王子の間で揺れ動く恋心。生き残るために日本で育った常識を捨てた。  R18 *性的描写や残酷描写を想像させる描写あります。誤字脱字多で不快感を覚える方はお控えください。執筆に集中したいので感想欄を閉じさせていただきます。お読みくださり、ありがとうございます。  すみません、クライマックスですが、更新ペース下がります。

異世界チートで世界を救った後、待っていたのは逆ハーレムでした。

異文
恋愛
これは交通事故にてテンプレ異世界転移を果たし、手に入れたチート能力を駆使して仲間たちとともに魔王的脅威から世界を救った私の物語…が完結した後の、イケメンの仲間たちから惚れられ求婚されすったもんだするお話である。 2章まで完結致しました! 3章スタートまでもう少しお待ちください。 R18に相当しそうなお話には※印つけていますが、その他にも性表現はあります。ご注意下さい。

【R18】義弟ディルドで処女喪失したらブチギレた義弟に襲われました

春瀬湖子
恋愛
伯爵令嬢でありながら魔法研究室の研究員として日々魔道具を作っていたフラヴィの集大成。 大きく反り返り、凶悪なサイズと浮き出る血管。全てが想像以上だったその魔道具、名付けて『大好き義弟パトリスの魔道ディルド』を作り上げたフラヴィは、早速その魔道具でうきうきと処女を散らした。 ――ことがディルドの大元、義弟のパトリスにバレちゃった!? 「その男のどこがいいんですか」 「どこって……おちんちん、かしら」 (だって貴方のモノだもの) そんな会話をした晩、フラヴィの寝室へパトリスが夜這いにやってきて――!? 拗らせ義弟と魔道具で義弟のディルドを作って楽しんでいた義姉の両片想いラブコメです。 ※他サイト様でも公開しております。

5人の旦那様と365日の蜜日【完結】

Lynx🐈‍⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる! そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。 ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。 対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。 ※♡が付く話はHシーンです

処理中です...