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『男性妊娠』

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「あんたがこの制度の影の支配者・・・源川みなもとがわスバル?」

「おいおい、桜雅おうが・・・そんな言い方失礼だろ。」

お客様だぞ、とさとしながら客人にコーヒーを出すりつは、私以上に我が家の嫁的役割を見事に担っている。

「すんません、シノブが生まれたのはスバルさんのおかげだと思ったらテンション上がっちゃって。」

桜雅はすっかり子煩悩パパの顔だ。


「スバルさんがいなかったら俺たちはまゆと結婚できなかったわけだし、ほんとすごいんだから、この人の頭の中!!」

あいはスバルとすっかり意気投合し、彼を我が家に招くことになった。
男性妊娠の技術を開発した彼は、私たち家族のキューピット的存在だ。

「いやいや、それほどでも・・・ハル君やシノブ君を見ていると、私も感慨深いものがあるよ。」

スバルは不思議な魅力を持つ男だった。
派手な青色をしたアシンメトリーなヘアスタイルは彼の個性を強調しとてもよく馴染んでいるし、舞台役者のように演技がかった口調も独特な世界観にぴったりだ。

「スバル先生・・僕、どうしてもすぐに妊娠したいんですけど、良い方法ありませんか?」

「君は・・確からん君だったね。今新しく開発している薬があるんだが、治験を受けてみるかい?」

スバルはこの制度に参加している全員のデータを把握しているのだと、愛から聞いた時は驚いた。

彼と目が合うたびに、全て見透かされているような気がしてドギマギする。
私の生体データはもちろん、夫たちの受精から出産までの過程全てを彼は記憶しているらしい。


「繭さん、君の能力は驚異的だと聞いているよ。妊娠予定じゃない夫まで、妊娠させたそうだね。」

「あ、それ俺な。あん時はマジでビビったわ。」

桜雅が妊娠に関するエピソードを赤裸々に語るのを、私は複雑な気持ちで聞き流した。

この制度において妊娠出産による人類の存続が最終目的であることは理解しているが、話の内容が濃厚すぎる。
性生活の詳細をほぼ初対面の男性に知られるのは、やはり恥ずかしい。

「私は、薬が効きやすい体質なのかもしれません。」

妊娠のために飲んでいる薬や、定期的に受けている治療の数々。
その全てを目の前にいる彼が生み出したなんて、信じられなかった。


「君の身体に興味がある。私に、君の身体を預けてくれないかい。」

スバルが突然真剣な表情で、私に向き直る。
そんな口説き文句、生まれて初めて聞いた。

じっと熱い視線で私を見つめる彼の迫力に、飲み込まれそうになる。

(ちょっと・・・スバルさんって・・・実はカッコよくない・・・?!我が家にはいないタイプのイケメンかも・・・・)
ぐいと迫る彼が意外にも整った綺麗な顔立ちをしていて、イケメンに弱い私の心は簡単に絆されてしまった。


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