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『過保護』

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数日前から腹部の痛みを訴えていた耀亮ようすけと、一緒に病院へ来た。
異常は無いという医師の診断結果に安心して診察室を出る。

緊張が解けたせいか、涙が溢れ出すのを制御出来なかった。

まゆ、大丈夫だ。心配かけて悪かった。」



耀亮は、車高が高くてゴツイ車に乗っている。

「俺が運転する。」

彼はそう言うと、私の手から車のキーを取った。
万が一に備えて病院までは私が運転してきたのだが、私の慣れない運転では安心できないのかもしれない。
彼の検査結果が異常なしだったので、素直に従うことにした。

「繭、来いよ。」

助手席のドアを開けてくれる彼の優しさに、ドキッとする。

強面で、機嫌が悪そうに眉間に皺を寄せている耀亮。実際は誰よりも優しい。
男らしい彼が私を女性扱いするたびに、私の心臓はドキドキと高鳴った。

「えっ・・わ・・・耀亮くんっ・・・?!」

キスされるのかと思った。
ドアップの男らしい顔を直視できず目を逸らすと、彼は私の身体をひょいと持ち上げ、助手席に座らせる。

(いくら車高が高いからって・・・抱き上げて乗せてくれるとか・・・・色男すぎない・・・?!)


「なぁ、繭。」

運転席についた彼が、真剣な顔で私を見た。

「お前に泣かれると、たまらねぇ気持ちになる。」

「耀亮くん・・・ごめんなさい。」

病院で泣かれては、さぞかし彼も困っただろう。
自分の感情優先で、周りのことを考えられない私は、人間として未熟だ。

「俺はお前の夫だ。お前を泣かせたくねぇし、お前のことは俺が命をかけて絶対ぇ守る。」

「耀亮・・・くん・・」

「だから、お前はどっしり構えてろ。俺は何があっても絶対元気な子どもを産むし、お前より先に死んだりしねぇ。約束だ。」

「うん・・うん・・・っ」

力強い夫の言葉に、私は涙を必死に堪えながら頷いた。


♢♢♢


家の敷地に車を停めると、そのまま待ってろと言い捨てた耀亮は、助手席のドアを開け私を抱き抱える。

「わ、耀亮くん、私自分で降りられるから・・・!」

こうも軽々と持ち上げられると、痩せたのでは?と変な期待をしてしまう。

「二人きりの時くらい、お前を甘やかしたって良いだろ。俺がやりたくてやってんだから。」

(耀亮君・・・♡カッコ良すぎて辛い・・・・♡)


「おいおい、いくらなんでも過保護なんじゃねぇの?うっわ、今の見た?しずくさん。」

「ラブラブだね。耀亮君、お腹大丈夫だったんだ。良かった。」

声に振り返ると、ちょうど帰宅した様子の桜雅おうがしずくが玄関の前に立っている。


「腹は異常なかったっす。・・桜雅、テメェは黙ってろ。」

雫に対してと、桜雅に対しての態度がまるで違う耀亮を見て、ホッとする。

(いつもの耀亮君だ・・・・♡ガン飛ばしてる姿も、男前だなぁ・・・♡)


「はぁ?耀亮、てめぇ本当いちいちムカつく野郎だな。まじウゼェわ。」

妊娠を機に二人の仲は丸くおさまるかと思った時期もあったけれど、言い合いしている二人を見ると、妙に安心する自分がいた。

「あ?自分の嫁相手に過保護にして、何が悪いんだよ。」

「俺の繭とイチャつくんじゃねぇよ。失せろ。」

「俺の繭だろ。」

「2人とも、とりあえず家の中に入ろうね?」

睨み合う桜雅と耀亮の間に、雫が割って入る。
我が家の、いつもの光景。


(私たちの赤ちゃんが、無事に産まれてきますように・・・・♡)

私は夫たちの平和な光景を眺めながら、心の中でそっと祈った。

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